第3話 地味豚公爵の人望・②

 オールー公爵領には雨季がある。年によって多少の前後はあるが、あと半月ほどで始まるはずだ。

雨季はとにかく雨が降る。

これまでは毎年のように領地を流れるテテ河が氾濫し、農地だけでなく人家にも酷い損害を与えてきた。

俺の代になってからテテ河の本流にダムを4つも作って、テテ河の支流も含めて河川工事を何度もやって、それでも間に合わない時のために避難施設をあちこちに作って、どうにか実害を抑えてきたのに。

「はげ山をテテ河の上流に作るとか、正気の沙汰じゃねえよ……」

根を張って、山の地盤や土砂を抑えてくれていた木を根こそぎ切り倒したのだ。

豪雨に耐えきれずにはげ山から土砂が流れ出たら?

土砂の行き先が大量の水を貯めるために空けていたダムの中だったら?

はげ山の地盤が長雨で緩んで斜面から崩壊したら?

その土砂の行き先が麓にあるワードルス村だったら?


 もしかしたら今年は運良く無事かも知れない。

だが、来年も無事という保証はどこにも無いのだ。

今までは無駄な贅沢や馬鹿な行動で金を浪費するだけだったから見逃してきたが、実害が出かけた。

もう見逃す訳には行かない。

領民の命が危うくなったのだから。


 「そろそろアイツらも、どうにかすべきだな」

俺が呟くと、

「我々は閣下の味方です」

「少なくとも閣下の方が今後の収益を見込めます」

グレイグとマオンは即答しやがった。

アイツらは、本当に恨まれているからなあ……。

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