第11話 復興と金儲けと慈善と・②
「まあ!王都でも持て囃されているあれらの便利な道具は全てこのオールー公爵領で生まれていたのですね!」
自慢そうなドミニク、いたたまれない俺、エレーナ嬢は輝くような笑顔である。
何て言うんだろう、純粋な好意だけの笑顔。
そんな笑顔を向けられたら、つい勘違いしたくなっちゃうじゃん。
俺みたいな『地味豚公爵』が、こんなにも美しい人と手を繋いでみたいなんて、罰当たりなことを考えるだけで、どうかしているのに。
「その、ええ、はい。そのおかげもあって、工事も一通り完了して、みんなの生活も落ち着いてきて。まだ今はオールー公爵領とその近隣くらいですが、魔族への偏見も薄れてきて」
犠牲者や被害者、その家族もいる訳だから完全に解消できる訳じゃないけれど、『もう魔族は敵じゃない』と思って貰えれば、それでいい。
「そうだ!俺様達はな、今や最高の商売相手だ!」
魔物から魔石を取り出し、加工できるのは魔族だけだ。
でも【生活魔法】を上手に組み合わせられるのは現時点では俺だけ。
自慢じゃないけれど、3才から駆使してどうにか生き残ってきたから、自信はある。
【生活魔法】しか使えない貴族も、恐らく俺だけだけど……。
貴族と言えば花形の回復魔法か破壊魔法って決まっているから。
ドミニク達と何度も話し合って、あちこちに売り払う【魔道器】の利益はきっちり5:5にした。
本当はドミニクと俺達で7:3でも投資に見合う収益が見込めるんだけれど、ドミニクが半分だと言い張って引かなかったんだ。
見た目がおっかなくて言動が乱暴だけれど、ドミニクは義理堅い。
俺は甘えることにした。
その代わりに魔道器の売り上げの一部は、魔族の襲撃で被害を受けた人達の生活保障に充てたり、襲撃で傷ついて農夫として働けなくなった人を魔道器の作成や修理、安全な廃棄のための職人として育成するための支援に使ったり、彼らを雇う魔道器の工房を作ったりした。
魔石の扱いは魔族しか出来ないけれど、例えば水の破壊魔法と【お洗濯】を掛け合わせて作った【自動洗濯機】の洗濯槽とか、パイプとかの部品の修理は出来るから。
壊れた魔道器から安全に魔石だけ取り出す廃品回収の技術も必要になったし。
「まあ……新たな仕事と雇用まで生み出すなんて……!」
エレーナ嬢から尊敬の眼差しで見られるから、俺は本当に居たたまれなかった。
……魔道器を売り出すまでは、オールー公爵家はイヤン商会だけじゃなくてありとあらゆる商人から大借金を重ねていた。
ドミニクの好意に甘えて破産を免れたようなものだ。
毎年のように洪水があるからみんな飢えていて、治安最悪で、衛生状態も悪くなるから疫病も流行っていて、おまけに魔族の襲撃まであったから……。
幸い王家からは王国で一番貧しくて可哀想な所だと思われていたようで、免税が許されていたけれど、もしあそこで課税されていたら、全人間がオールー公爵領から逃亡していたに違いない。
「一か八かで売り出したら、面白いようにあちこちで売れて……」
俺も、まさか3ヶ月と少しで破産寸前の大借金が利息も含めて全部返せるとは思わなかった。
潤沢な資金が入ってきたので、まずはテテ河系の工事をドミニク達に頼みながら、迷惑をかけた謝罪もかねて、借金していた商人を通して食料を先払いで買って領民のみんなに届け、来年の分まで食料を買ったと宣言したらみんなも安心したのか、少しずつ治安や衛生状態が良くなって……。
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