第21話 貴女がいれば全てが敵になっても構わない・③

 ……そう言えば、理不尽……じゃなくて不自然だ。

俺は遠音機を置いて、考え込む。

どうして彼女は一度も会ったことのない『地味豚公爵』相手に、好感度がいやに高いんだろう。

彼女がオールー公爵領に来てから2週間。

とにかく俺と一緒にいたがるし、話をしたがるのだ。

イヤン商会に頼んで王都でも流行しているドレスや宝飾品、化粧品やお菓子等々を買って貰おうとしたけれども、王国歴史大典全巻とか博物辞典とかの分厚い本を買いたい、の一点張り。

活版印刷の打ち合わせの時とかキラキラした目で見られて、うっかり勘違いしそうになってしまう。

もしかしたら俺の掌握する魔道器の利権が欲しいのかな?と何度か思ったけれど、そもそも贅沢なものに対してあまり興味が無いらしい。

活版印刷にかかるであろう開発費用に対してはとても現実的な意見をくれるのに……。


 ……そういや、5年前から俺と結婚したいって言っていたとパルベッヘル公爵は言っていたっけ。


 何をやらかしたのか全く分からないが、確実に俺は何かをやらかしたらしい。


 こうなったら、本人に聞いてみるしかない。

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