第50話 誘拐
「おい、起きろ」
冷酷な男の声で真奈が目を覚ました。
(あ……そっか私誘拐されたんだ……)
真奈は自分の状況を思い出し、辺りを見渡す。
真奈は両手両足を縛られ椅子に固定されている。おそらく誘拐犯達のアジトと思われるこの部屋には真奈を誘拐した三人の一人リーダーの男がいた。
「お目覚めか?」
「ここはどこですか?」
「ここは俺たちのアジトだ。警察にもわからねぇだろうよ」
「あなた達の目的は……お金ですか?」
真奈が男に問うと男は劣悪な笑みを浮かべた。
「そうだ、お前の両親は金をたんまり持っているからな。しかも娘のお前を溺愛している。これ以上ないほどの標的だろ」
「……あなたは私が出会った人の中で一番嫌いです」
「ふっ、お前まだ立場がわかっていないようだな」
男が椅子から立ち上がり真奈の元へと近づく。
そして目の前まで近づくと真奈が固定されている椅子を思い切り蹴飛ばした。
真奈は椅子ごと壁に激しくぶつかりそのまま横に倒れた。
(……痛い……痛い……)
体のあちこちがズキンズキンと痛む。
初めて感じる強い痛みに意識が朦朧した。
「あんまり調子にのるな。今、お前の命は俺に生かされているんだ。いつでも殺せるんだぞ。」
男の冷酷な瞳が真奈を睨みつける。
その瞳は過去に人を殺めてきたようなそんな恐ろしい目だった。
だが負けじと真奈も男の目を強く睨み返す。
「チッ、まだわからねぇのか!」
キレた男が倒れた真奈の顔に向かって足を踏み出そうとした時部屋の扉が開いた。
入ってきたのは真奈を誘拐したもう二人。彼らは楽しそうな表情を浮かべリーダーの男に話す。
「こいつの親に電話しときました。母親めっちゃ取り乱していて滑稽でしたよ」
「ふっ、お前の母親もお前なんか産まなきゃこんな面倒なことにはならなかったのにな」
「私が……」
「そうさ、お前がいなければ俺たちはお前の親から金を取ろうなんて考えなかったし、お前の親が悲しむこともなかった。全部お前のせいなんだよ。」
私のせいで……お父さんとお母さんが……
存在意義真奈の中で自分の存在がどんどん悪いものへと変わっていく。
(なんで私は……生まれてきてしまったんだろう……)
「さて、あとは金を受け取るだけだがそれだけじゃ面白くねぇ、生きて返せばいいんだ。せっかくだし少し遊ぶか……」
そういうと男は目隠しとナイフを取り出し真奈に見せた。
訳がわからず呆然としていると男が目隠しで真奈の視界を塞いだ。
男達達の姿は見えず、声だけが耳に届く。
「その状態でどこかにナイフを刺したらお前はどんな表情をみせてくれる?」
その瞬間先程まで呆然としていた意識が一気に目覚め、男がやろうとしていることにゾッとした。
「やめてっ! お願いっ! やめて……!」
激しく懇願するが帰ってくるのは嘲笑だけだった。
「最高だな、その表情。俺の好きな表情だ……さぁ始めようか、長い時間をかけてゆっくりとやってやるからたっぷり楽しんでくれ」
「いやっ! いやぁぁぁっ!」
その時、扉が大きく開け放たれる音が真奈の耳に入った
先程までの彼らの笑い声も聞こえずしんとした沈黙が流れる。
(一体何が……)
そしてその沈黙を解くかのように扉の向こうの人物が口を開いた。
「ここかな、私の最も大事なものを奪った愚か者どもの巣窟は。」
そこに立っていたのは真奈の父親、瀬戸和馬だった。
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