第35話 聖女様の振袖姿

「……くん……月城くん起きてくださいもう朝ですよ」


 俺を呼びかける声で目を覚ますとベッドの脇に腰掛けた瀬戸さんがこちらを見て微笑んでいた。


 パジャマ姿の彼女は昨日も見たが改めて見るとやはり可愛い。


 こんな可愛い清楚可憐な聖女様が起こしにに来てくれるとは今年はいい歳になりそうだ。


「瀬戸さん、おはよう」


「おはようございます月城くん。よく眠れましたか?」


「お陰様でいつもより快眠できたよ」


 このベットはやはり高いだけあって寝心地も最高だった。やはり睡眠を取るためのベットの質は大事だということが今回よくわかった。


 こんないいベッドに瀬戸さんは毎日寝ているんだろう羨ましいな。


「それはよかったです。それと月城くん、今日は特に予定はありませんか?」


「うん、特にないけど……どうしたの?」


「実はお母様が月城くんも連れて初詣に行きたいと言ってまして」


「ああ、なるほど」


 そういえばここ何年かは初詣に行ってなかった。理由は一人で行くのもどうなんだという点と、あとは普通に面倒くさかったからである。


 だが今回は瀬戸さんのお母さんのご好意によるお誘いだ。これを無下に断るわけにはいかないだろう。


 それに今年は元から瀬戸さんを誘っていくつもりだったので問題はない。


「わかった。すぐに準備するよ。」


「すみません、お母様の我儘に付き合わせてしまって」


「いや、そんなことはないよ。むしろ少し楽しみだ。」


 神社の周りやその道中には確かいろんな屋台が並んでいたはずだ。


 俺は屋台が結構好きなのでそう言った面でも少しワクワクしていた。


「ありがとうございます、服の方は速水さんが

用意してくださっているので後ほど受け取ってください。」


「わかったよ」


「では、私は少し準備があるのでこれで。」


「うん、ありがとう。」


 彼女がドアの取ってに手をかけたところで何かを思い出したかようにハッとするとこちらに振り返った。


「月城くん、リビングで楽しみにまっていてくださね!」


 彼女は少しいたずらっぽい顔でそういうと部屋の扉を閉めた。


 楽しみに? 一体なんのことだろうか?


 彼女の発言の意味に検討もつかない俺は少し悩んだがあまり深く考えるのはやめて自身も準備に入った。

 


 ◇



 それから30分後リビングに向かうとそこにはすでに和馬さんの姿があった。


 いつものスーツ姿とは違い本日はおしゃれな私服に身を包んでいる。


「和馬さん、おはようございます。」


「おお、悠馬くんおはよう。昨日はよく眠れたかい?」


「はい、お陰様でバッチリと」


「それはよかった」


「ところで瀬戸さんと由紀さんはどちらでしょうか?」


 見たところリビングには二人の姿は未だ見えない。


 準備があるとは言っていたが女の子だから結構かかるのかもしれない。


 すると和馬さんが少し微笑んで言った。


「そういえば君はまだ知らないんだったね。まぁ、彼女たちが来ればその理由もわかるよ。とりあえずは彼女たちを待っていてくれ」


「わかりました。」


 いまいち理由がわからないがとりあえずは二人を待つことにした。


 それから待つこと10分後、リビングへと続く扉が開かれた。


「ごめんね、ちょっと時間が掛かっちゃって」


 先に入ってきたのは由紀さんおしゃれな私服を身につけた姿はやはり美人だった。


 流石は瀬戸さんのお母さんだ。


「由紀さん、その服とてもお似合いですね。」


「ありがとう、でもその言葉は今から来る子に掛けてあげてほしいわね。真奈、いらっしゃい」


 由紀さんが扉の方へ呼びかけると少し恥ずかしそうな瀬戸さんが姿を現した。


 ただし、いつもの彼女ではない。白をベースにした華やかな花々がうつくしい振袖を着用していた。


 その姿はあまりにも美しく背後に神々しい光が見える気がする。


「ど、どうですか? 月城くん。」


「……」


 あまりの美しさに見惚れていたらしかようやく思考が追いついてきた。


 とりあえず何か返さないと。


「すごく、ものすごく綺麗だよ。瀬戸さん」


「あ、ありがとうございます」


 そう言って彼女は少し恥ずかしそうな顔で下を向く。

 

 そんな彼女も本当に美しく、可愛い。


「ふふ、よかったわね真奈。褒めてもらえて」


「私もすごく綺麗だと思うよ」


「ありがとうございます、お父様、お母様。」


 彼女は二人に軽くお辞儀をする。それだけでも本当に美しい。本当に美人とは罪な存在だということを初めて実感した。


「月城くん、本当に可愛いでしょ? うちの娘は」


「全くだ。こんなに可愛い娘がいて私は本当に幸せだよ」


 ここで二人の溺愛モードが発動。この二人本当に優秀なんだけど瀬戸さんの件になると色々とおかしくなるな。


 だがまぁ確かに彼女が綺麗なのは確かだ。


「ふふ、月城くん。私に見惚れちゃいましたか?」


「……正直に言うとかなり見惚れた。そのくらい綺麗だよ、瀬戸さん。」


「ありがとうございます、月城くん。」


 彼女は柔らかく微笑んだ。


 









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