第12話 聖女様と猫カフェ

「それで今日はどこへ行くの?」


「ふふふ、それはですね〜……ここです」


 彼女は自身満々な表情で鞄からスマホを取り出すとその画面を俺に見せた。


 彼女が見せてきたスマホには様々な模様をした可愛らし猫たちが写っていた。


 どの猫もとびきりに可愛く写っていてまるで猫達がどう映れば可愛く映るかを完全に把握しているようなそのくらい写りが良かった。


「可愛い猫達だね。」


「ほんと癒しですよね……」


「……もしかして」


 彼女はあそこに行くつもりなのだろうか……猫好きなら一度は行ってみたいと思う聖地……


「はい、これからこの子達に会いに行きます」


「……猫カフェか」


「正解です、昨日ネットを見てたらこの子達が写っててそれで行きたくなったんです。」


 猫カフェ、多くの猫と戯れながら癒しのひとときを堪能できる楽園。


 猫を飼わない人達も猫が側にいる感覚を気軽に味わえ、最近老若男女問わず人気が出ている。


 犬派か猫派か聞かれてどちらかというと猫派の俺は少しワクワクしていた。


「月城君も楽しみですか?」


「うん、俺も猫は大好きだからね。すごく楽しみだよ。」


「私も猫ちゃんは大好きです。あの顔をすりすりさせてくるところが可愛いんですよね〜」


「わかる、俺もよく猫動画とか見るし」


 俺は帰宅部て基本的に昔は暇だったのでよく猫動画を見たものだ。


 中でもよく気に入っていたのが猫が数匹でまとまって気持ちよさそうに寝ている動画だ。


 あれはいくらでも見ていられる。


「月城くんも猫動画見るんですか?」


 まさか瀬戸さんも猫動画を見ているとは……まぁここまで好きなんだし当然か。


「うん、見るよ。特にこのチャンネルがお気に入りかな」


「私もそれ見てます! 親猫と子猫のお昼寝がたまりません」


 真剣に語る瀬戸さんはまさにガチ勢だった。


 まさか見ているチャンネルまで被るとは……好きなタイプの猫が同じなんだろうか。


「わかる、猫って作業の邪魔してくるところも愛くるしくて作業放って構っちゃうんだよね」


 実家にいた時は愛猫によく宿題を破かれたり、作業の邪魔をされたものだ。


 あいつもツンデレ猫だったなぁ。何故か俺だけツンが強かったけど。

 

「月城君はもしかして猫ちゃんを飼ってるんですか?」


「うん、実家でね。名前はネオって言ってとっても可愛いんだよ」


 俺が瀬戸さんにネオの話をしてあげると彼女は目をキラキラ輝かせながら俺の手を掴んだ。


「ぜ、是非! 今度その猫ちゃんに会いに行かせてください!」


「え? ああ、うん。わかったよ。」


「ふふ、約束ですよ。」


 彼女は嬉しそうに微笑んだ。



 ◇



「わ、わぁすごいですよ! 月城君! 猫ちゃんがいっぱい!」


「瀬戸さん、猫達が驚いてるよ。落ち着く落ち着く。」


「そ、そうでしたね、驚かせてごめんなさい。」


 猫カフェの中は木造のオシャレなデザインできちんとカフェとしてもかなりいい店なのだろう。そして周りのどこを見ても必ず猫が視界に入ってくること。

 

 横を見れば椅子に座る猫が、前を見れば昼寝している猫が、上を見ればキャットタワーに登っている猫が、下を見ればズボンを登ろうとしている猫がいた。


 俺は自分のズボンを登ろうとした猫を抱き上げると猫は抵抗することなくだらりと力を抜いてリラックスしている。


 本当に人懐っこいんだな。うちの猫とは大違いだ。


 喉元を撫でてやればゴロゴロと気持ちよさそうな顔をした。


 そんなふうに猫を堪能していると後ろから声が聞こえた。


「月城君もお気に入りの子を見つけられましたか?」


 振り向くととそこにはたくさんの猫に囲まれた瀬戸さんがいた。


 これ一体何匹いるんだろ……


「せ、瀬戸さんすごいね……こんな数の猫達を……」


「みんな何故か私の元にできてくれるんです。何故でしょう?」


「……」


 よく見ると全員がオスだった。つまりこいつらは可愛い子の元にいって可愛がられようとしただけかなのだ。


 く、! こいつら! 猫だからって撫でられたい放題撫でられやがって!


 しかし本当に慈愛に満ちた顔で猫と戯れる彼女は驚くほど絵になっていて美少女×猫。可愛い×かわいい=は正義ということか。


 猫を撫でる瀬戸さんは表情が完全にニヤけていてとても楽しそうだ。猫の方も瀬戸さんの撫でテクニックに気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らしながらゴロン寝ている。


 あのオス共欲望に忠実すぎないか?


「ほら、月城君もこっちきて撫でてあげてください。」


「うん、今行く。」


 俺が彼女のもとへ行くと何故か半分くらいの猫が俺から逃げていった。







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