第11話 聖女様とお出かけ
「うーん、こうかな? いやもうちょっとこっちに流してーー」
俺は鏡の前で髪を整え、入念にチェックした。
なんと言っても今日は人生初の女の子とのお出かけであり、しかもその相手が黒髪清楚な聖女様なのだから彼女に恥をかかさないためにも俺はいつも以上にセットに時間をかけた。
「よし、これでいいかな。」
今日のために俺は色々なことをしてきた。
ワックスを買ったり、スキンケアをいつもより柔軟にやったり、エスコートのやらかだって詳しく調べ尽くした。
それも全ては今日この日のために。
俺の準備はもう万端だった。
だがそんな万端の準備をしていてもなお緊張するものはする。
俺はいつもより高鳴る心臓に手を当てる。
緊張するなぁ……ちゃんとこなせるだろうか……
その時家のインターホンがピンポーンとなった。
「行くか。」
俺は財布とケータイをポケットにしまい玄関へ向かった。
扉を開けるとそこには黒髪が美しい超絶美少女、瀬戸真奈がいた。
「おはようございます、月城君。」
俺は彼女の姿を見て思わず見惚れた。
今日の彼女は白のニットとベージュのロングスカートというシンプルなものだったがその全てが彼女の魅力を最大限に上げていた。
ロングスカートは彼女が少し動くたびにひらひらと揺れてとても清楚感を感じさせる。
白いニットは彼女の抜群のスタイルがしっかりと現れていてとても目のやり場に困る。
「月城君、どうかしましたか?」
「あ、ああごめん、おはよう瀬戸さん。」
「はい! おはようございます!」
「今日の服装とっても可愛いよ。」
昔父から言われたデートの時はまず相手の服装を必ず褒めろという言葉を俺は初実戦する。
女性はデートの時に服装や、髪型など他にも男が気付かないようなところにまで気を遣っている。それを褒めないのは男として失格だろう。
俺の言葉に彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。
「ふふ、ありがとうございます。月城君もすごくかっこいいですよ」
「ありがとう、嬉しいよ」
今日の俺の格好は前に父さんに買ってもらったものだったがどうやらやる目立ちはしてないようで安心した。
彼女にかっこいいと言われ嬉しくて頬が自然と緩む。慣れてきたつもりだったがまだまだだったようだ。
「では、いきましょうか。」
「あ、ちょっと待って!」
流石にその格好で外に出るのは……
俺は急いで部屋の中に戻るとクローゼットからデニムジャケットを取り出しそれを瀬戸さんに渡した。
「え、えっと……これは?」
瀬戸さんは困ったように渡されたジャケットを見つめる。
まぁそれはそうだよな瀬戸さんのファッションに横槍を入れるような真似だもんな。
だがそれでもこの格好は少しまずい。
「ちょ、ちょっとその服は世の中の野郎共の視線を集めてしまうかなと思って……」
この服は彼女のスタイルをそのまま映し出したようなものなので恐らく外に出れば視線の的になるだろう。俺はそれが少しだけ嫌だった。
彼氏でもないのにこんなこと思うなんてキモイ気もするがこのままでは外に出すことはできない。
すると最初はポカンとしていた彼女も俺の真意を読み取ったのかクスクスと嬉しそうに微笑んだ。
「ふふ、月城君は私の胸や腰を他人に見られるのが嫌なんですね、ふふふ。」
「ご、ごめん嫌だったらきなくてもいいから」
「いえ、せっかくですし着させてもらいます。」
そういうと彼女は俺が渡したデニムジャケットを着てくれた。
男物のため少し大きめのジャケットはベージュのスカートとよくあっていてさっきまでとはまた違うコーデになった。
ここまで様になって見えるのはやはり彼女の美貌と立ち振る舞いゆえだろう。
「どうですか?」
「うん、その方がいいと思う。」
「すんすん……このジャケット月城くんの匂いがします。」
「そ、そりゃあ俺のジャケットだからね……」
黒髪清楚の聖女様が俺のジャケットを羽織り、その匂いを嗅いでいるという状況にドキドキしつつ俺は彼女に手を差し出した。
確か女の人の手を引くのは男の役目だったはず。
「さ、行こう。」
「はい行きましょう、独占欲強めな月城君。」
「そ、そうやってすぐ揶揄う」
「だってすごく可愛かったんですから仕方ないです。」
そんな雑談をしながら俺たちはマンションを後にした。
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