第10話 聖女様のご褒美

「ようやく終わった……」


 期末テストが終わり家に帰ってきた俺はテストからの開放感で全身脱力するようにソファにもたれかかった。


 テストの三日間はまさに地獄だった。


 朝から夜遅くまでずっと勉強。正直もうしばらくは勉強道具に一切触れたくもないし、見たくもない。


 だがそのおかげでテストの方の出来はかなり良かった。苦手な数学も今回はできたので俺はようやくテストから解放された。


「お疲れ様です、テスト大変でしたね。」


「瀬戸さんもお疲れ様。いつもすごいよね」


「勉学は学生の基本ですからね」


 テスト期間中は俺からの提案で来てもらう回数をかなり減らしてもらっていた。その方が瀬戸さんも勉強に集中できると思ったからだ。


 だから今日はかなり久々の彼女の手料理が食べられるので俺はとてもワクワクしていた。


「月城君は今回のテストどうでした?」


「うん、まぁ30位くらいかなー瀬戸さんは?」


「私はいつも通りです」


「さすが入学してからずっとの学年一位。」


 瀬戸さんは毎回のテストで全教科95点以上を叩き出しいまだにその合計点や教科の点数を超える生徒はでできていない。


 ちなみに前回のテストは一位が瀬戸さん、二位が清華さん、三位が水瀬さんという順位だった。学年の美少女たちは成績も完璧なのだ。


「でも月城君だってすごいですよ、うちの学校上位の点差はあまり少ないと思うので30位以内に入れるのはとてもすごいことです。」


「あ、ありがとう……」

  

 まさか褒めてもらえるとは……順位を褒められるなんて親以来だな。


 久しぶりに褒められたけどやっぱり嬉しいものだな。


「今日は頑張った月城へのご褒美として夕飯は月城君の大好物にしますね。」


「え! 本当に!?」


「はい、月城君の大好きな半熟卵のオムライスです。」


「やったー!」


 またあのオムライスを食べられると思うと俺は子供のように無邪気に喜んだ。


 瀬戸さんのオムライスは本当に美味しい。どうやったらあんなふうに卵がトロッとなるんだろうか? 俺もオムライスはよく作ってみるのだがあそこまで素晴らしいオムライスはなかなかない。


 にしてもまさかテスト終わりにこんなご褒美があったとは……テスト頑張ってよかった!


「ふふ、本当に月城君はオムライスが好きですね。」


「もちろん、瀬戸さんのオムライスが一番美味しいからね」


「ふふ、嬉しいですすぐに用意しますので待っていてください」


 そう微笑みかけ彼女は台所へ向かっていった。



 ◇



「いやー美味しかった!」


「月城君は毎回本当に美味しそうに食べてくれますね。こちらも作り甲斐があります」


 久しぶりに食べたオムライスはやはり最高の味で俺は再び感動を覚えていた。


 だがしかし俺だけこんなにもご褒美をもらってしまっていいのだろうか……


 彼女は今回も恐らく学年一位だろう。そんな彼女にこそご褒美を与えるべきなのではないだろうか?


 俺は台所で洗い物をしている瀬戸さんに声をかけた。


「瀬戸さんはご褒美何がいい?」


「え? 私は大丈夫ですよその気持ちだけでーー」


「俺にできる範囲ならなんでもやらせてもらうつもりだけどどうだろう?」


 その瞬間瀬戸さんの目つきが変わった。


 まるで獲物をかる捕食者のような目つきに。


 あまりに強い視線だったので体をびくりと震わせてしまった。


「なんでも……ですか?」


「う、うん……俺にできる範囲ならね」


 急に雰囲気が変わった彼女に俺は頭をフル回転させながら考える。


 まさか……俺なんかに何もされたくないということか?


 一瞬そう思ったが瀬戸さんの表情が思ったより嬉しそうだったのでその考えは一瞬で切り捨てた。


「言いましたからね? なんでもするって……」


「う、うん。確かに言ったよ、男に二言はない。」


 俺はどんな要望が来るのかドキドキしながら彼女の言葉を待つ。


 そして彼女が口を開いていったのはーー


「で、では……わ、私とお出かけしてください!」


 彼女は顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに答えた。


 デート? デートってあのデートか?


 まさかの要望だったが一度言ったことを取り下げるつもりはない。

「それでいいの?」


「はい、それが良いんです!」


 こんな冴えない男とデートしても楽しくないと思うが……命令は命令だ。それに従おう。


「わかった、俺でよければ行かせて貰うよ。今度の休日にいこうか。」


「ありがとうございます! とっても楽しみにしてます」


 こうして彼女とのお出かけが決まった。









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