第49話 過去
「「「じゃんけんぽん」」」
幼い子供の真奈、美来、香織の三人がそれぞれ手を出す。
結果は真奈の一人負けだった。
「まけちゃった……」
「ふふ、私たちのかちね。じゃあ真奈が鬼よ」
「にげろー」
二人は無邪気に隠れ場所を探しに駆けていった。
そんな二人を微笑ましく見送り真奈は振り返り秒数を数える。
「1……2……3……4……5」
しばらく秒数を数え1ぷんだったところで後ろに声をかける。
「もういいー?」
返答はなく真奈の声がただ響く。
この沈黙を真奈はもう準備ができたと受け取り振り返る。
辺りを見渡してみるが二人の姿はどこにもない。真奈は本格的に二人を探すため歩き始めた。
「美来ちゃんは暗いところが嫌いだから明るいところにいそうかな。美来ちゃんはすごいところにかくれてそう」
二人の性格や思考を読みながら描かれていそうな場所を探る。
木の上、茂み、遊具の中などを探してみるがなかなか見つからない。
「やっぱり美来ちゃんと香織ちゃん隠れるの上手い」
これだけ探しても見つからないのは二人はかなり見つけにくい所に隠れているということだろう。
「まだ見てない所見に行こうっと」
そう思い探しに行こうとした時背後にだれかが近づく足跡がした。
(あれ? もしかしてもう二人とも降参?)
真奈はそう思いつつ振り向いた。
「どうしたの二人とも———」
しかし振り向いた先にいたのは美来と香織ではなく、全く知らない三人の男達だった。
獲物を見つけた肉食獣のような目でこちらをみる男達に真奈は心の底から恐怖した。
「ようやく一人になったな。手間かけさせやがって」
リーダー格らしき男がひどく冷たい声でそう言った。
その風貌はどう見ても常人ではない。
「あ、あの……あなたたちは誰ですか?」
「そうだな……お前を迎えに来た」
「あなたのような人は使用人にはいません!」
「流石にバレるか……まぁいいどちらにしろお前は連れてく」
男の目は本気だった。
(この人達私を攫う気だ……!)
真奈はそう確信し、男達の元から逃げるように駆け出した。
「ふっ……追いかけっこに付き合ってやってもいいが時間がないんでな。おい、やれ。」
リーダー格の男がそう告げると側に控えていた二人の男が真奈に向かって走り出した。
真奈は捕まらないように必死に逃げる。だが大人の足の速さには敵わずあっという間に追いつかれ両手をガッチリと掴まれた。
「誰かっ! 誰かっ! お願い! 助けて!」
真奈は最後の抵抗で精一杯叫ぶ。
誰かに気づいてもらえるように。
「静かにしろっ!」
だがすぐに片方の男によって口を塞がれてしまった。
それでも助けを求めて叫ぶがその声は誰にも届かない。
真奈の目からは絶望で涙が流れていた。
(お父さん……お母さん……助けて……!)
そう強く願うが目の前にいるのは依然として悪そうな笑みを浮かべるリーダーの男だった。
「まぁ安心しろ、すぐに殺すわけじゃねぇ。お前には親から金を引き出す役が残ってるからな。それまで残りの短い人生を精々楽しめ……。お前らそいつを車に乗せろ。」
真奈は片方の男にかつがれ車へと連れて行かれる。
車に乗せられる直前、涙を流しながらその様子をかの影から見つめる美玖、香織と真奈の目があった。
(よかった……二人は無事なんだ……)
二人の無事に心から安心した真奈は誘拐犯達に気づかれないように口パクで伝えた。
今までありがとう。
その瞬間二人の涙がさらに溢れた。
「よし乗せたな、出せ。」
真奈を乗せた車が出たと同時に二人は駆け出した。このことを一刻も早く大人に伝えるために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます