第33話 大浴場
「いやー、まさかこんなことになってしまうとは……」
俺は広い大浴場に一人で浸かりながら呟いた。
ちなみに瀬戸さん宅のお風呂は男女で分かれていて女湯の方もこの広さだというのだから驚きだ。
「はぁ〜……最高……。」
自宅の風呂もいいがやはり、俺はこういう広い風呂でのんびり、ゆったりと入るのが好きだ。
そんなふうに楽しみながら湯に浸かっていると浴室の扉がガラガラと音を立てて開き、和馬さんが入ってきた。
「失礼するよ、悠真くん。」
「あ、いえ! お構いなく」
俺がそう答えると和馬さんは満足げに微笑み、シャワーで軽く体をながして俺の隣に座った。
ジムでは服を着ていてあまり目立っていなかったが全身引き締まってるな。細マッチョてこういうのを言うんだな。
「今日はどうだった?」
「すごく楽しかったです、大勢で食事を取るなんて久々で」
「そういえば一人暮らしなんだったね、親と離れて寂しくないのかい?」
「まぁ、寂しくないと言うと嘘になりますがこれも自分が自立するために必要なことだと
割り切っています」
俺が地元から出て何故ここへきたかというとそれは親に一人暮らしを経験しておいた方がいいと言われたからだ。
それに、いろんな人と触れ合えるようにということだったのだがこちらの方は見ての通り失敗だった。
「そうか、君は逞しいね」
「そうですか?」
「ああ、そうだとも。」
やはり、この人と話しているとすごく落ち着くな。
ジムで会った時もそうだったが初対面なのに緊張とかそういうものをこの人に感じなかった。
「それと改めて言わせてくれ、あの時娘を守ってくれてありがとう。」
「いえ、僕は当たり前のことをしただけですよ」
「ふふ、君ならそういうと思ったよ。妻から聞いただろう? あの子の過去のことは」
「はい、聞かせてもらいました。」
「あの子は昔から何かとと狙われることが多くてね。護衛をつけたりもしているんだが未だに娘を狙った犯行は後を耐えない、この間の一件もそうだ。」
やはりお金持ちという理由もあるだろうがやはり彼女の容姿は人の目を引く。つまりはそういうことだろう。
瀬戸さんを狙う犯罪者どもに一気に怒りが沸いてくる。
「最近は動きが活発になってきている。できれば学校にも護衛をつけたいところだが……私は娘の学園生活の邪魔をしたくはない。だからとりあえずは登下校は送迎、もしくは誰かと必ず一緒に帰ることを徹底してもらった。」
「学校の中まで来るかもしれないんですか?」
「流石にそうはならないことを信じたいが一様、万が一に備えてさ」
「そんな……」
そこまでしなければならないなんて……
瀬戸さんはただ純粋で可愛い女の子なのに……どうしてそんな子の幸せを平然と奪うようなことができるんだ……!!
「君は本当に優しいんだな。」
「え?」
「娘のために怒ってくれて私はうれいしいよ」
密かに指摘されて俺はかなり怖い顔をがようやくわかった。
「すみません、怖い顔をしてしまって」
「いや、謝ることはない。娘のためにこんなに怒るのは私と妻とあと2人くらいしか知らなかったからね。これは妻も君を信用するわけだ。」
恐らくその2人とは清華さんと水瀬さんのことだろう。2人はやはり彼女の素晴らしい親友のようだ。
「私も君を深く信用するに値する男だと確信したよ。これからも娘を守ってあげてくれ」
「……守れますかね……こんな弱い俺に」
「確かに今の君はまだ弱いかもしれない。だが人間誰しも生まれた時は皆弱いんだ。そこまで重要なことではないよ。これから強くなればいいだけさ。」
「これからですか?」
「ああ、鍛えるのなら今までまで通り、私も手伝うからさ」
「わかりました、またよろしくお願いします。」
「ふふ、本当にいい目だ。」
まだまだ瀬戸さんを守るには足りないものはたくさんあるけどそれでも彼女の笑顔と未来だけは必ず、何があっても守りたい。
「さて、重い話はこれくらいにしてサウナにでもいかないかい? 最近出来たばかりなんだ」
「さ、流石和馬さんですね……」
「もう和馬さんじゃなくてお義父さんでもいいんだよ?」
サウナに二人で向かおうとすると不意に和馬さんがとんでもないことを言ってきた。
「ちょっ! 何言ってるんですか?」
「はは、冗談だよ。それにまだ娘をやるわけにはいかんからね」
「そ、そうですよね」
「まぁ君になら全然任せられるけどね。」
「それも冗談ですか?」
「さて、どうだろうね。それより早く行こう寒くなってきた」
「は、はい!」
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