第32話 聖女様と年越し
「月城くぅ〜ん……肩貸してぇ〜」
みんなで食事を始めてから3時間後、顔を真っ赤にして酔った由紀さんが唐突にそんなことを言ってきた。
「えっ!?」
「ちよっ、ちょっとお母様!?」
「相変わらずお酒に弱いね。速水、由紀を寝室まで連れて行ってくれ」
「かしこまりました、旦那様。」
速水さんはうとうとする由紀さんをおぶると素早く退出した。
にしても和馬さんは全然よってないな。
少なくとも由紀さんの倍くらいは飲んでいらように見えたがもしかしたらめちゃくちゃ酒に強いのかもしれない。
「二人とも、年越しそばでも食べるかい?」
「私食べたい!」
「じゃあ俺もお願いします」
「わかった、少し待っててくれ」
そう言って和馬さんは台所へ向かって行った。
「すみません、月城くん。お母様ったらお酒が入るといつもああで」
「気にしないで、むしろ家族のように接してくれて嬉しかったよ」
最近はあまり家族と会わないことが多かったが今回改めて家族の温かさを知ることができた。
今度顔を出しに行くか。
「お父様もお母様も月城くんのことをだいぶ気に入っていましたしね」
「そうなの?」
「はい、月城くんのいいところが二人にも伝わって私も嬉しいです」
ふふんと自慢げな表情で笑う彼女を微笑ましく思った。
しばらくそんな会話をしながら待っていると和馬さんが蕎麦を乗せたトレーを運んできた。
「さ、できたよ。」
蕎麦の上には海老天とかまぼこが載っていて非常に豪勢な見た目だ。
「わぁー、美味しそう! いただきます」
「い、いただきます。」
やはりいつも食べている蕎麦とは違い香りが強く、美味しい。そして海老天も揚げたてサクサク、中身はぷりぷりで極上だった。
「うん、我ながら美味しいね」
「ほんとお父様の作るお蕎麦は美味しい です」
「今まで食べた中で一番美味い蕎麦でした。」
こうして人と話しながら年越し蕎麦を食べていると改めて今年も終わりかと強く感じる。
そんなことを思っていると時刻は年越し寸前にまで迫っていた。
「そろそろだね。」
「もう今年も終わりですね」
「ほんとあっという間だったな」
今年は去年よりも圧倒的に時間の進みが早かったような気がする。まぁあれだけのことがあれば当然か。
そしてテレビの中継がカウントダウンを始めた。
5、4、3、2、1……
「あけましておめでとう二人とも。悠真くん、今年も真奈をよろしくね。」
「はい、わかりました。」
「ふふ、頼りにしてますからね、月城 くん。」
今年も彼女の身の安全と笑顔はまもってみせる。絶対に。
それを今年の目標に設定して俺は気合いを入れた。
「じゃあ年越しもできましたし、俺はそろそろ帰りますね」
時間も時間なので帰ろうとしたところ
「ん? 今から帰るのは大変だろう。今日はうちに泊まっていくといい。」
「え?」
今この人泊まって行けって言った?
「私もその方がいいと思います」
「瀬戸さんまで!?」
「よし、そうと決まれば速水、月城くんの部屋の準備を」
和馬さんがそういうといつの間に帰ってきた速水さんが横で待機していた。
「そう仰るかと思って既にご用意させていただきました。」
「準備はや!?」
そして新年早々瀬戸さんのお家に泊まることになってしまった。
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