第31話 聖女様と大晦日

 大晦日の日、昼間は彼女と家でくつろぎながら過ごした。そして現在夕方、俺は予定通り瀬戸さんの家を訪れていた、


(相変わらずでかいなぁ……)


 前に来た時も思ったがやはりでかい……本当に令嬢なんだな。


「さ、月城くん行きましょうお母様とお父様が待っています」


「う、うん!」


 彼女に手を引かれ俺も歩き出す。


 うぅ……なんかめっちゃ緊張してきた……


 今回は前回と違いお父さんもいる。しかも話を聞く限りめちゃくちゃ強いらしいので俺は内心かなり怖がっていた。


 どうか怖い系の人じゃありませんように!


 そう願っていると玄関の前まで来ていた。


「ちょっ、ちょっと待って」


「もしかして月城くん緊張しているんですか?」


「い、いやそんなことは……ないよ」


「ふふ、心配しなくても大丈夫ですよ。お父様もすごく優しい方ですから。」


「そ、そうなの?」


「ええ、きっと月城くんも仲良くなれ   ますよ」


 まだ不安は残るがとりあえずは瀬戸さんの言葉を信じよう。


「じゃあ行きましょうか」


「うん」


 瀬戸さんが扉を開けるとそこには45度の角度で綺麗なお辞儀をしたメイドさん、速水さんが待っていた。


「おかえりなさいませ、お嬢様、月城様。」


「お久しぶりです速水さん」


「こちらこそお久しぶりです月城様。いつも真奈様と仲良くしてくださってありがとうございます。」


「こちら心ばかりの品ですがどうか受けとってください」


 俺はあらかじめ購入しておいた菓子折りの紙袋を速水さんに差し出した。


 今日は長い間お世話になるわけだし、これは絶対に必要だ。


「これは、これは……ご丁寧にありがとうございます。」


 速水さんが両手で丁寧に俺から菓子折りを受け取った。


「では参りましょう、奥様と旦那様がお待ちです。」


 そう言って速水さんは歩き始めた。


 少し歩くとリビングの扉らしきところで速水さんの足が止まった。


 そして扉を瀬戸さんが開けた。


「お父様、お母様、月城くんを連れてきましたよ」


「あら、月城くん、いらっしゃい!」


 テーブルに食べ物を運んでいた由美さんがこちらに振り向いた。


 その顔は相変わらず綺麗で本当に親子揃って美人だなと改めて思う。


「今日はお世話になります」


「ふふ、いいのよ娘の恩人ですもの! あなたー月城くんがきたわよ」


 由美さんがキッチンの方に呼びかけるとキッチンからスーツの上にエプロンをつけた見覚えのあるある男の人が現れた。


「初めまして、いつも娘と仲良く……

おや? 悠真くんじゃないか?」


 そこにはジムの常連さんの和馬さんがいた。



 ◇



「いやー! まさか悠真くんが娘の恩人だったとは! ははは、本当に偶然とは恐ろしい。」


「本当! こんな偶然あるのね!」


「はは、そうですね……」


 まさかジムの常連のダンディーなおじさんが瀬戸さんのお父さんだったなんて……未だに信じられない。


 瀬戸さんはお母さん似だがよく見ると和馬さんに似ている部分もある。


 ということは和馬さんが財閥の社長か! イケメンでムキムキで強くて、金持ちとは……天は二物も三物も与えるものなんだな……


 だがこれでようやくわかったことがある。それは瀬戸さんの家族が全員美男美女だということだ。


「私の方が驚きですよ! なんで月城くんと知り合ってるんですか!?」


「前に真奈にも言ったじゃないか、ジムで男の子と知り合ったて」

 

「まさか月城くんとは思いませんよ!」


 瀬戸さんもまず和馬さんに怒っているように見えるが二人とも楽しそうなのでこれがいつものやりとりしますなのだろう。


 俺も和馬さんみたいに瀬戸さんを楽しませてあげたいな。


「そうだ、ちょうどいい! 悠真くん、食前のトレーニングといかないかい? ジムよりは少ないが器具も置いてあるよ」


 恐らくトレーニング部屋でもあるのだろう。やはり金持ちすげぇ。


「だ、駄目です! 今日は月城くんは私と一緒にいるんです! これはお父様でも譲れません!」


「たまにはいいじゃないか、真奈だっていつも月城くんと一緒にいるだろう?」


「月城くんがジムに行っている間はずっと月城くん一緒じゃないですか! 月城くんは私のものです」


 そう言って瀬戸さんが俺の腕を抱きしめた。


「せ、瀬戸さん!?」


 腕に柔らかな二つの感触が確かに伝わり、俺の理性を徐々に削る。


「まさか真奈がここまで……ならしょうがないお父さんは娘の願いを尊重しよう!」


 絶対変な勘違いをされたが俺はそれを指摘することもできずそのまましばらく瀬戸さんに腕を抱きつかれていた。








 












 





 













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