第30話 年末の過ごし方
クリスマスの翌日。俺達はお餅や蕎麦を買うために近くのスーパーに訪れていた。
「これで終わり?」
「はい、お正月の準備はこれでバッチリです。」
街はクリスマスムードから一気に年末ムードに入れ替わっていて今年の終わりが近づいていることがわかる。
「今年ももう少しで終わりですね」
「そうだね、ほんとあっという間だったよ。」
一年の初めの頃は自堕落に毎日を過ごしているだけだったが瀬戸さんと出会って変わった。
それまではなんてことのない生活だったのが瀬戸さんと出会えたことで楽しく、幸せな毎日を送ることができた。
来年も……こんなふうに過ごせたら
いいな。
「まぁでも今年は私にとっていい年でした。だって月城くんとこうして仲良くなれたんですから」
「っ!?」
少しなれたかなと思っていたんだが……相変わらず彼女のこれには耐性がない。
「さて、買い物も終わりましたし月城くん、どこか行きたいところはありますか?」
「じゃあお茶にしない? この近くにスイーツが美味しいカフェがあるから」
「いいですね! 私もちょうどお腹が空いていたところだっだんです」
「さっきクレープ食べてなかった?」
「女の子はスイーツならいくらでも食べれるんですよ」
清華さんといい、瀬戸さんといい彼女達はスイーツなどを食べても太らない体質なのか全く太らない。
というか二人とも胸に栄養が入っているような気がする。
「さぁ月城くん、行きましょう! 案内してください」
「わかったよ」
俺達はカフェに向かって歩き始めた。
◇
カフェの中は落ち着いた内装だが決して静かというわけではなく、高校生達の楽しい談笑が聞こえてくる。
「いらっしゃいませ! 二名様でよろしいですか?」
「はい、2名です。」
「ご自由な席へどうぞ。」
店員の女の人に促され俺達は奥の席に腰掛けた。
すると店員さんが満面の笑顔でメニューを持ってきた。
「ご来店ありがとうございます! こちらメニューとなります。」
「ありがとうございます。」
「それと当店には特別メニューがございまして、それがこちらです」
店員に勧められたメニューを見るとそこにはカップル5食限定、特製いちごパフェと書いてあった。
まさか……この店員さんにカップルだと思われてる? ていうかこの間の猫カフェでもそんなことがあったような……そんなに俺たちがカップルにみえるのか?
まぁここは否定しておいた方がいいかな。
「いや別に僕たーー」
「私これで」
俺がいい終わるより先に彼女が注文をしてしまった。
「かしこまりました! ドリンクはどうなさいますか?」
「私はブラックコーヒーで、月城君はカフェラテでいいですか?」
「え、あ、うんそれで……」
「承知致しました、少々お待ちください。」
そういうと店員さんは足早に去っていた。
すると瀬戸さんが申し訳なさそうな顔をしていた。
「ごめんなさい、月城くん。私食べたくてつい……」
「いいよいいよ、むしろ瀬戸さんの恋人と勘違いされて誇らしいよ」
「っ〜!?」
「瀬戸さん?」
「月城くん……たまにそういう無自覚なところありますよね、私の心臓に悪いです。」
何故か彼女の頬が少し赤くなっていた。
どこが心臓に悪いのか分からないがまぁ別にいいか。
「そういえば月城くんはお正月は実家に帰るんですか?」
「その予定だったけど今回はいいかなー」
今回の帰省はあの姉さんが帰るらしいので俺としてはあまり行きたくないのだ。
あの人めんどくさいんだよなぁ……酔うとヤバくなるし。
「大晦日はどうするんですか?」
「今年は一人で過ごそうと思ってるよ」
まぁ、たまにはいいだろう一人で年を越すのも。
「……でしたら大晦日は私の家で過ごしませんか?」
「え? 瀬戸さんの家?」
「はい、お母様もお父様もいらっしゃいますよ。」
しかも今回はお父さんもか……怖そうだよなぁ。彼氏とか思われたらやばそうだ。
「ありがたい提案だけどさ、いいの? 部外者の俺なんかが輪に入っちゃって」
「お父様もお母様も月城くんを歓迎してくれると思います。それに高城くんは決して部外者ではありませんよ。あなたは私の命の恩人ですから。」
「瀬戸さん……」
「それでどうしますか?」
「……わかった。お邪魔させてもらうよ」
「ふふ、よかったです。お母様もお父様も喜びます」
少々不安は残るが……まぁなんとかなるだろう。
その時いちごがたっぷり乗っかったパフェとブラックコーヒー、カフェオレを持った店員さんが現れた。
「こちらご注文の特製いちごパフェとホットコーヒー、カフェオレでございます。」
「わぁ、美味しそう」
「美味しそうですね」
「では失礼します。」
そう言って再び店員は去っていった。
「では月城くん、食べましょう!」
「う、うん」
二人で食べることを推奨されているからかパフェのサイズは俺が思っていたより大きかった。
これ二人で食べきれるかな?
「ん〜! 美味しいですよ月城くん!」
「それはよかったよ」
「ほら、月城くんも」
そう言って彼女はパフェをスプーンすくうと俺の方へ向けた。
「な、なんで毎回そうなるの!?」
「てっきりあーん待ちかと思いまして」
「い、いや……そのここでは……」
周囲を見渡すと周りのお客さん達の視線がが俺達に集中していた。
てかさっきの店員さんめちゃくちゃニヤニヤしてんじゃん! さてはこの状況を狙ってやったのか!?
「ほら、月城くん。口を開けてください、食べさせてあげますから」
「う、うぅ……」
「はい、あーん」
「あ、あーん」
俺は観念してスプーンを口に入れた。
いちごの酸味とバニラアイスの甘さが程よくマッチしていてとても美味しい。
だがそれ以上に恥ずかしい! 周りのお客さん達は「おー!」と皆声を揃えて言っていた。
「どうですか?」
「お、美味しいよ」
「ですよね、すごく美味しいです! ほら月城くん、もう一口」
「ま、また!?」
その後瀬戸さんにあーんをされながらパフェを味わった。
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