第14話 聖女様と迷子の子供
「はぁ〜……幸せな時間でした……。」
「それはよかったよ」
猫カフェを出た俺たちはショッピングモールの中を見て回っていた。
道行く人々がすれ違う度に彼女に見惚れていた。それほどまでに彼女は顔やスタイルが完璧なのだろう。
流石だよなぁ、俺も見習わないと。
「瀬戸さん、次はどこへ行く?」
「そうですね……つぎはーー」
とそこで彼女の足が突然止まった。
「どうしたの?」
そして俺も彼女が見ている方向を見るとそこには小さな女の子が目をうるうるさせて周りをキョロキョロしていた。
「ママ……どこぉー!」
彼女の鳴き声は誰にも届くことなく人混みの音の中へと消えいっていく。
周りの人は誰も助けようとはせず皆彼女のことを避けるように目を背ける。
小さい子があんなにも泣いている。流石にこれを見過ごせるほど非情ではない。
「瀬戸さん、俺ーー」
「ふふ、どうやら私と月城君は今同じことを考えているようですね。」
「瀬戸さんも?」
「はい、あんな小さい子を放っておくことはできません!」
「ありがとう、じゃあ行こう。」
俺は彼女と意見が一致した事に喜びを感じなから少女の元へと向かった。
「大丈夫ですか?」
「……お姉ちゃんたち誰?」
「私は瀬戸真奈、こちらは月城悠真君です困ってることがあったら力になりますよ。」
瀬戸さんは小さな子供にもわかるように優しく自己紹介をした。
小さい子への対応もできるのか流石だな。
すると女の子も少し落ち着いてきたのか事情を話してくれた。
「あのね、かなのお母さんがいなくなっちゃったの……それで私どうしたらいいかわかんなくて……」
彼女は泣きそうになりながらもなんとか状況を説明してくれた。
なるほど探し人は一人か……となると……
「これはサービスカウンターに預けた方が良さそうかな」
「そうですね下手に探し回るよりそちらの方が確実です。」
「よし、じゃあ、かな。ついてきて」
「は、はい! ゆー兄、まー姉」
「……」
「あら、可愛い」
このくらいの歳の子にお兄ちゃんと呼ばれるのは妹ができたみたいでとてもしんせんな気持ちになった。
◇
「かなちゃん、ここにいればきっとお母さんが来てくれるからね」
無事にかなちゃんをサービスカウンターに預け、去ろうとした所かなちゃんが俺の袖をぐいっと引っ張った。
振り返ると泣きそうな表情でこちらをうるうると見つめている。
「ど、どうしたの?」
「いっちゃ……いや……」
「で、でも……」
「い……や……」
するとかなちゃんの瞳から一粒の涙が溢れた。
俺は慌てて彼女を落ち着かせる。
「ああ! ごめん! ごめん! ここにいるから! 」
流石にそんな目で引き止められては行く言葉できずおれと瀬戸さんとかなちゃんはサービスカウンター近くのベンチに三人で座った。
「かなちゃん、お母さんがら迎えにきてくれるまでにいいことをしてあげましょう」
「いいこと?」
「私の膝に寝転がってください。」
かなちゃんは言われた通り瀬戸さんの膝に寝転がった。
「こう?」
「そうです、そうです。」
突然の膝枕にかなちゃんはわかがわからずぽかんとしている。
瀬戸さんは母性に溢れた笑顔を浮かべながらかなちゃんの頭を優しく撫でた。
「これはなあに?」
「これはですね、男の人にするととても喜んでもらえる必殺技です。」
「必殺技?」
「そうです、かなちゃんに好きな人ができたらこれを試してみてください。多分イチコロですよ。」
真面目な顔をしながら意味不明なことを享受する瀬戸さんに俺は微笑ましくなった。
「まー姉も誰かにするの?」
「そうですねぇー……よくしてる人はいます。」
「誰! 誰!」
「秘密です、まだ子供には早いですから。」
「けちー!」
そんなやりとりをする二人を楽しく眺めていると一人の女性がサービスカウンターにやってきた。
「あのっ! さっきアナウンスで言ってた私の娘はーー」
「ままー!」
「かな!」
二人は駆け寄り合い深いハグを交わした。
「もう、どこにも行かないで」
「ええ、行かないわ。あなたのそばにいる。」
感動の親子の再会に俺たちはいらないと思い無言で去ろうとした所母親に呼び止められた。
「あなたたちが娘をみつけてくれたんですね! ありがとうございます!」
「いえいえ! 別にたいしたことは!」
「私たちもかなちゃんとお話しできて楽しかったです」
母親は何度もお礼を言ってきて何かご馳走すると言ってくれたが全て断った。
「ゆー兄、まー姉じゃあね!」
「じゃあね」
「また会いましょう」
そう言って俺たちはかなちゃんと別れた。
「嫉妬しちゃいました?」
かなちゃんと別れて数分後そんなことを尋ねてきた。
「別に膝枕くらいでそんなことないし」
「私はとくに何がとは言っていませんよ」
はめられた……
隠していたのに……幼女相手に大人気なく嫉妬しちゃったなんていいたくなかったのに!
「ふふ、可愛いですよね月城くんは。」
「そんなことないって」
「帰ったらたっぷり膝枕してあげますからね」
その日はいつも以上に甘やかされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます