第28話 聖女様とクリスマス
「ただいまー」
ジムから帰ってきた俺は部屋の中に向かってつぶやいた。
「おかえりなさい、月城くん。今日も頑張りましたね。ところでそれはどうしたんですか?」
「ああ、これはジムの人からクリスマスプレゼントでもらったんだ。家でも鍛えられるようにって」
和馬さんからもらったのはダンベル。片方5キロ、合計10キロの重りは一人で歩いて持って帰るには少し重かった。
「よかったですね、月城くん。」
「まぁね、ところで準備の方はどう?」
「飾り付けは大体終わりました、今は料理を作ってるところです。」
「わかった、手伝うよ。」
「ふふ、ありがとうございます。」
瀬戸さんに続きリビングへと入ると部屋には様々な飾り付けがしてあった。
小さなクリスマスツリーに雪の結晶のような紙などまさにクリスマスという感じだ。
「では月城くん、野菜を切っていただけますか?」
「うん、わかったよ。」
「ちゃんと猫の手で抑えて切るんですよ」
「わ、わかってるよ」
相変わらず彼女に子供扱いされながら一緒に料理を作った。
◇
二人で一緒に作ったからとあっという間に料理が出来上がった。
「どれも美味しそうだね」
「はい、月城くんが手伝ってくれたおかげですね」
今日の料理ははビーフシチュー、カルボナーラ、フライドチキン、シーフードサラダ、ローストビーフだ。
どれも美味しそうで早く食べてみたい。
「俺はほとんど切ったり炒めたりしかしてないよ」
「それでもとっても助かりました、ありがとうございます。あ、そういえばあれを持ってきたんでした」
彼女は思い出したかのように冷蔵庫へ向かうと中から一本のビンを取り出した。
「それは?」
「ノンアルコールシャンパンです。クリスマスにピッタリだなと思って買っておきました」
「いいね、大人になった気分だ」
「ふふ、さぁ席につきましょう。」
席に着くと用意していたグラスに瀬戸さんがノンアルシャンパンを注いでくれた。
透き通るように透明でとても美しい。
「では乾杯しましょう、月城くん。」
「うん、じゃあ乾杯」
「乾杯です」
二つのグラスが軽くぶつかりチリンと心地のいい音が響く。
ノンアルシャンパンの方は少し甘みを抑えたりんごジュースのような味でとても美味しい。
「すごく美味しいよ、ありがと瀬戸さん」
「いえいえ、さぁ料理を食べましょう」
「そうだね、俺ももう待ちきれない」
どれから行こうか迷うがまず俺はビーフシチューを選んだ。
口に入れると長く煮込まれた肉がほろりと溶け、肉の旨みが口に広がる
次にカルボナーラ。
卵と牛乳が程よくマッチしていてクリーミーで濃厚な味を生み出していてとても美味しい。
「美味しい……」
「ふふ、お口にあってよかったです」
「本当に美味しいよ、ありがとう」
まさかクリスマスを聖女様とこんなふうに過ごすなんて去年の俺は思いもしなかっただろうな。
すると瀬戸さんがローストビーフをフォークに刺しこちらに差し出してきた。
この笑い方は……完全に狙ってやっている
「はい、月城くん。次はこちらのローストビーフを食べてみてください」
「え、えっと……これは……」
「はい、あーんしてください」
「あ、あーん」
ローストビーフはとても柔らかく、そして肉肉しくてとてもおいしかった。
だがそれ以上に恥ずかしさで俺は顔が真っ赤になった。
「どうですか?」
「……美味しいよ」
「それはよかったです、ところでなぜ顔を隠すんですか?」
「べ、別に何も……」
「本当ですか?」
瀬戸さんがニマニマしながらを揶揄うように顔を覗き込んでくる。
俺はこの顔を見せないように必死に隠した。
「ふふ、本当に可愛い。」
「そ、そんなことより料理食べよ」
「そうですね、おかわりいっぱいありますのでたくさん食べてください」
「もちろん」
その後瀬戸さんとクリスマスの料理を楽しんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます