第17話 聖女様の誕生日
「ご馳走様でした。」
「お粗末様でした、私は食器を洗ってきますね」
「うん、いつもありがとう瀬戸さん。」
いつも通り夕飯を食べ終えた俺は食器を持って台所に向かう彼女を確認してから用意しておいた紙袋を取り出した。
あれから1週間、今日は瀬戸さんの誕生日だ。特に瀬戸さんはいつもと変わった様子はない。だが俺は内心かなりドキドキしていた。
(な、なんて言って渡せばいいんだろう……)
プレゼント自体は清華さんに手伝ってもらったおかげできっと喜んでくれるであろうものが用意できた。
だが異性にプレゼントをあげるなど初めてのことで渡し方やその時にかける言葉が何度考えても思いつかない。
ま、まずい……! 早くしないと彼女が戻ってきてしまう!
そう思っていた矢先洗い物が終わった彼女が戻ってきたので俺は咄嗟に紙袋を後ろに隠した。
「今終わりました」
「ご苦労様、いつも悪いね。」
「ふふ、これくらい造作もありませんよ。 あら? 月城くん、後ろに何か持ってません?」
「べ、別に……な、何も持ってないよ」
な、なぜばれた!? きちんと隠していたはずなのに……
「むぅ……怪しいです」
「き、きのせいじゃないかなぁ?」
俺は必死になって紙袋を瀬戸さんから隠す。
しかし瀬戸さんの疑問は強くなっていくばかりだこのままではどのみちバレるのは時間の問題だろう。
ならば渡すべきは今しかない!
そう思ってプレゼン渡そうとした時彼女何かハッととした表情になったかと思うと気まずそうに目を逸らし出した。
え? 何でいきなり……どういうことだ?
すると瀬戸さんがやけに優しい口調で言った。
「もしかして……男の子が女の子に見られたくないものですか? ……なるほど、月城くんもそういうの持ってたんですね……すみません勝手に見ようとしてしまって」
「違う! 違う!」
何やらとんでもない勘違いをしているようだったので俺は慌てて後ろに隠していた紙袋を瀬戸さんに差し出した。
すると瀬戸さんは不思議そうな表情そうな表情をしつつもなんとか受け取ってくれた。
「? これは?」
「そ、その……瀬戸さん、今日誕生日だから……プレゼント用意した。」
「わ、私にですか!? あ、ありがとうございます! ですがなぜ私の誕生日を知っているんですか? 私教えてなかったと思うんですが……」
瀬戸さんはちゃんと驚いてくれたようだ。
初めてのサプライズプレゼントだったが……途中少々ミスったところはあるが結果良ければ全てよしってことで
「清華さんが教えてくれたんだ、ちゃんとプレゼントあげろってね。」
「美来ちゃんが……すみません私の友人がまたご迷惑を……」
そう言う彼女はまるで彼女たちの親の様だった。
清華さんもこんなてのかかる子供みたいに思われているとは想像もしてないだろうな。
「いや、清華さんにはすごく感謝しているよ。でなければ俺は瀬戸さんの誕生日を祝えず後悔していただろうからね。」
彼女がいなければ普段お世話になりまくっている瀬戸さんのの誕生日をスルーしてしまうところだったので本当に彼女には感謝しかない。
今度ケーキ沢山おごってあげよう
「なら、良いのですが……本当にもらってもいいのですか?」
「もちろん、瀬戸さんのために買ってきたんだから。今ここで開けてみてよ」
「ありがとうございます、では……これは石鹸とハンドクリームに香油ですか?」
瀬戸さんにプレゼントしたのは俺と清華さんで悩みまくって選んだ石鹸とハンドクリームと香油だ。
「うん、ここのやつはすごい香りもいいって聞いたから」
これは清華さんもベタ褒めして自分用のも買っていたので間違いないと思う。
「本当にいい匂いです……これは大変いい品をいただきました。」
「……喜んでもらえてよかったよ」
正直彼女にきちんと喜んでもらえるか不安でいっぱいだったが無事彼女が嬉しそうに笑っている姿を見て俺も嬉しくなった。
こうして無邪気に喜んでいる彼女はいつもの様な大人の余裕がある美人ではなく、可愛い一人の女の子のようだった。
「それにしても……月城くんセンスいいですね。こんないいものを選べる目があるとは」
「ま、まぁね……」
ほとんど清華さんの力な気がするが……そこのところは黙っておこう。
「私、こんなふうにもらって嬉しいプレゼントなんて中々ないんです。あとはあの子たちからもらえる物もですけど」
「両親とかからはもらえないの?」
「もらえるのですが……あまりに高級品すぎて……」
「ああ、なるほど……」
彼女が親からもらうのは毎回とんでもない額の品だが、彼女自身はあまり高すぎるものを渡されても困るというわけだ。
よかった……超高級なの買わなくて。止めてくれた清華さんに感謝しなきゃな。
「ですから月城くんが選んでくれたこのプレゼントは私にとってはどんなに高いものよりも価値があり、大切なものです。ですので大切に大切に使わせていただきます。」
「うん、喜んでくれて嬉しいよ」
大事そうに紙袋を見つめる彼女は美しく、いつまでも眺めていたいくらいだった。
「ところでケーキも買っといたんだけど……食べる?」
「さっき冷蔵庫に入ってたやつですか? あれって前に買ってきてくれた店の……」
「そう、あの店のだよ」
「やったー! ありがとうございます!」
「清華さんに勧められてさ、色んな種類買ってみたから食べ比べしようか」
「はい! 楽しみです!」
こちらも清華さんがプレゼントがあってケーキがないのはどうなの?ということで買ったものだ。
ケーキは全て清華さんのお気に入りトップのやつなのでハズレはないと見ていいだろう。
「今日は俺があーんしてあげようか?」
「そ、それくらい自分で食べれます! それにあの時は月城くんがまだ万全ではないと思ったからしただけで……」
「その割には瀬戸さんも嬉しそうだだだけど」
「そ、そんなことより早く食べましょう! わたしどれにしよかっなー!」
「あ、逃げた。」
「逃げてません」
そんなやりとりに楽しさを感じながら俺たちは誕生日を過ごした。
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