第20話 聖女様のお母さん

 翌日の放課後、学校が終わった後俺たちは宮澤さんに運転してもらって瀬戸さん家へと向かっていた。


「本当にすみません、こんなことに付き合わせてしまって」


「いいよいいよ、お母さんの気持ちもよくわかるし。」


「そう言っていただけると嬉しいのですが……母に何か言われてもあまり真に受けないでくださいね!」


「それほど奥様も心配しておられるのですよ」


 宮澤さんが瀬戸さんのお母さんをフォローする。


「まぁそれはそうですけど……子離れしてほしいものです」


「そんなにお母さんが過保護なの?」


 彼女の母親の評価は少々辛辣だが宮澤さんの話も聞く限り重度の過保護なのかなと思った。


 と同時に不安が頭をよぎった。


(私の娘を誑かしたな! みたいな感じで詰め寄られないだろうか? うぅ不安だ……)


 流石にないと信じたいが重度の過保護らしいのでやられないという保証はない。俺はぶん殴られてもいい覚悟を持つことにした。

 

 そうこうしているうちに車が止まった。


「着きました。」


「ありがとうございます、宮澤さん。さ、行きましょう、月城くん。」


「うん」


 すでにもう家に帰りたかったが俺はその衝動を抑え瀬戸さんに続き車を降りた。


「ここが……瀬戸さんの家……」


「はい、初見の人はやっぱり驚きますよね。」


 逆にこれで驚かないやつは感覚が根本的に触れていると思う。


 広々とした庭にはたくさんの種類の花が咲く花壇や、大きな木が立ち並びまるで森の一角のようだ。


 そしてその真ん中に堂々と建っているのは家とは思えない大きさの屋敷。


 まさかこんなお金持ちだったとは……まぁそれも当然か。


「お嬢様、おかえりなさいませ。」


 俺たちを待つように屋敷の前に立っていたのはメイド服をきた女の人だった。


 メイドさん!? メイドさんって本当に実在したのか……


「ただいま、速水さん。お母様は?」


「応接室にお客様を連れてくるようにと伺っております。」


「そうですか、ではいきましょう。」


「ご案内致します。」


 そう言って速水さんは歩き出した。


 廊下は恐らく俺の部屋くらいの広さがあって赤いカーペットが敷かれていて、屋敷の中もやはり豪華であちこちに高そうな装飾品や、絵画が飾られている。


 こんな家来たことない……


 速水さんの足がある部屋の前で止まった。


「奥様、真奈様とその御恩人です。」


「入ってちょうだい。」


「では失礼します。」


 速水さんが扉を開けると中には黒髪ロングの超絶美女がいた。


 まるでそのまま瀬戸さんが成長したらこうなるんだろうな思うくらい瀬戸さんに似ていた。


「おかえりなさい、真奈ちゃん。大変だった?」


 黒髪美人は瀬戸さんを見るなり、すぐに抱きついた。


 そして頭をよしよしと撫でている。


「よしよし、やっぱり真奈は可愛いわねー!」


「ちょっ! お母さん! 月城くんが見てるから!」


 すぐに人を甘やかすところも瀬戸さんにさっくりだ。やはり親子、すごく似ている。

 

 我が子を慈しむように優しく見つめるその瞳はまるで『聖母様』のようだった。


「あら、そうだったわね。初めまして月城くん。私はこの子の母、瀬戸由紀よ。よろしくね」







【あとがき】


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