第40話 恋愛相談

「……それで今日はどうしたの? 悠真。私のご機嫌をとったのは何か意味があるんでしょ?」


 目の前の少女、清華美来が上品に足を組み、アイスコーヒーを飲みながらそう言った。


 場所は前にもきたケーキ屋さんだ。今日は俺の頼みで彼女に来てさてもらった。


「実は……清華さんに相談がありまして……」


「……聞かせて」


「実は……昨日ようやくわかったんだけと俺は瀬戸さんのことが異性として好きみたいなんだ」


 俺が少し恥ずかしがりながらそういうと何故か清華さんが呆れたような視線でこちらを見てきた。


(え……失望された? 親友に好意を抱くことが彼女に取って不快だったのか……)


 俺が少し混乱していると彼女が深いため息をついた。


「はぁ……、気づくのが遅すぎるのよ」


「え?」


「私から見れば一目瞭然よ、何を今更わかりきったことを言っているの?」


 まさか清華さんに気づかれていたとは……やっぱりこの人感が鋭すぎる。


 だがよかった、少なくとも瀬戸さんに好意を持ったことに対して怒ってはなさそうだ。


「全く、……あなた達は本当にそんなところまで似ていてお似合いにも程があるわ……」


「そ、そうかな?」


「ええ、で、話はそれだけかしら?」


「アドバイスを頂けないかと」


「貴方ねぇ、普通こういうのは男友達同士でやるんじゃないの?」


「……一人もいない」


「あっ……ごめんなさい、野暮なこと聞いたわね……」


 清華さんの珍しく優しい対応がとても心に突き刺さる。


 悲しいことに俺には男友達がいない。中学時代にいたはいたのだが今はほとんど連絡を取り合っておらず現在、友達と言える存在がゼロとなっていた。


 俺にとって恋など初めての経験でどうしたらいいか分からず信頼できる彼女に相談したというわけだ。


「まぁ、大体わかったわ。あなたは私を信頼してくれたのね。嬉しいわ」


「瀬戸さんの親友だしね、いい人に決まってるよ」


「ふふ、ありがと。それで悠真は真奈と付き合いたい。ということでいいのかしら?」


「出来ればそうなりたいと思っているよ」


「その言葉を聞けて安心したわ。あの子を一生守ることを決めてくれたのね」


「うん、瀬戸さんが嫌じゃなければね」


「それは絶対にないから安心していいわ。にしても中々面白いことになってきたわね」


 清華さんが不適な笑みを浮かべ、彼女はアイスコーヒーをチューと吸い取った。


 するとそこへ大量のケーキを持った店員が近づいてきた。


「お待たせしました、チーズケーキ、ガトーショコラ、特製生クリームのミルクレープと……あと諸々です」


 もはや店員さんも言うのを諦めるほどのケーキがテーブルに並べられる。


 それを清華さんはどれから食べようかと目を輝かせながら悩んでいる。


「本当によく食べるね……太ったりしないの?」


「悠真……私は太らない体質なの。今の真奈には絶対言わないこと。あと私にももう一回言ったら1週間ここのスイーツを奢ってもらうわ。」


「わ、わかったよ」


 ここのケーキは一つ一つがとんでもなく高い……今日も初めに上がるとは言ったがまさかこんなに注文されるとは……お財布持つかな……


「そういえばアドバイスだったわね。そうね……あの子は案外天然だからしっかりと気持ちを伝えてあげなきゃダメよ。……なんであの子の時と私同じアドバイスしてるんだろ……」


 最後の方は良く分からなかったが瀬戸さんが天然なのは少し意外だった。


 確かにたまに無自覚に誘惑みたいなことされるしなぁ。


「わかった、まずは伝えるよ」


 その後もいくつかアドバイスをもらっているとあっという間に帰る時間になってしまった。


 そろそろ瀬戸さんが家にくる時間だ。


「今日はありがとう。清華さん」


「いいのよ、頑張ってねあなたの恋を応援しているわ。」


「じゃあまた明日。」


「ええ。」


 そう言って俺たちは別れた。



 ◇



「……行ったわね。ふぅ……にしても二人して私に相談とか……もう早く付き合っちゃえばいいじゃない……」


 美来は真奈からも相談を受けていた。それも今日と全く同じ内容だ。「月城君と恋仲になりたいの」と相談を受け、これまで何度もアドバイスをしてきた。


 だが今日悠真からも同じ相談を受けてしまった。両思いが確定してしまったのである。しかもまだ二人とも自分だけが相手を好きだと思っている状態、両方思い状態なのだ。


「もう、私が二人に言ってしまった方が早いのかしら?」


 美来は少しそう思ったがすぐにその思考は放棄した。親友の初めての恋。出来れば彼女には告白を受けてもらいたいと。


「そうなると……私のすべきことは悠真を真奈に告白させるとかはまで導くことかしら」


 美来はどう導くかを考えながら帰路についた。


 


 











 


 



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