第7話 聖女様のお友達
怪我が無事治り、松葉杖を卒業した俺は昼休み中教室で瀬戸さんが作ってくれたお弁当を食べていた。
「うん、やっぱり美味しいな」
今日のお弁当も気合いが入っていてどのおかずもすごく美味しい。
毎日こんな美味しいものが食べられるなんて天国すぎるだろ!
そんなふうに弁当を楽しんでいると一人の小さな女の子が近寄ってきた。
「……美味しそう」
見た目は小さく瀬戸さんのよりも低い背丈に藍色の綺麗髪、さらに整った容姿はすごく可愛らしく瀬戸さんが美しいなら彼女は子猫とかに向く感情が近いかもしれない。
庇護欲が掻き立てられるようなそんな見た目だ。
「え、えっと水瀬さん、どうしたの?」
彼女は水瀬香織、俺と同じクラスでその可愛らしい容姿から学年では『聖女様』と同様に人気があり、みんなからは『妖精ちゃん』と呼ばれ男女両方から人気がある。
彼女は鼻をすんすん鳴らしながら俺の弁当をじーっと見つめる。
「じーーー」
「え、えーと……」
「こら、あまり人を困らせてはダメよ。」
現れた少女は『妖精ちゃん』の頭に軽くチョップを入れた。
「ひどい……私はお腹が空いただけなのに……」
「それでも人のをそんなジロジロみちゃダメ。」
「でもーー」
「あーもうわかったわ。あとで私のわけてあげるから」
「やったー! さすが氷姫」
「その呼び方もう一回言ったらご飯あげないわよ」
このクールな女子は清華美来。彼女も俺のクラスメイトで美しい姿から繰り出される毒舌から『氷姫』などとと呼ばれている。
彼女は一部の特殊な癖を持つ男子から異様なほど人気で彼女に罵られた男たちはどいつもこいつも幸せそうな顔をして撃沈している。
俺には理解し難い感情だな。
「え、何あいつ、こないだは聖女様と登校してたのに今日は『妖精ちゃん』と『氷姫』となかよさそうにしてんじゃん」
「俺の『妖精ちゃん』がー!」
「何言ってやがんだ! 俺の『妖精ちゃん』だ!」
「ああ、『氷姫』に足で踏まれながら罵倒されたい……」
この二人がいる影響でまたもや俺が注目されるようになっている。なんか一部変態もいたが。
「ん? そういえばあなた……真奈と一緒に登校してた男よね?」
「え、ああ、はい。」
「本当のところ付き合ってたりするの?」
いきなりど直球で聞いてくるなこの人。まぁ俺と瀬戸さんが別に付き合っているわけでもないので答えは決まっている。
「いやいや、付き合ってませんよ」
「本当かしら?」
清華さんの顔が俺の眼前にまだ迫る。近くで見るとさらに美人だなこの人。
「でもなんでまなのお弁当持ってるの?」
大人しくしていた彼女が唐突にそんなことを言った。
「え?」
「私も毎日分けてもらってるからわかる。これは……まなの料理。しかもすごく気合が入ってる。」
なんでこの子瀬戸さんのお弁当だってわかるんだ!? それよりもまずいこのままではみんなにバレてしまう。
そんな時そこに救世主が現れた。
「どうしたんですか? 二人とも」
「せ、瀬戸さん!」
「今この人が真奈と付き合ってるかどうか聞いてたの」
「付き合ってませんよ、彼と私はそんなような関係ではありません。」
「じゃあどんなかんけいなの?」
「彼と私は……」
クラス全員が彼女に注目し、教室がしんと静かになる。全員どうしても気になるようだ。
それもそうか。みんなから見ればある日突然聖女様と登校し始めた変な奴だもんな。気になって当然か。
ここで彼女が通りすがりに乗せただけの他人とか言ってくれれば楽なんだが……
「ふふ、秘密です」
『聖女様』は可愛らしく唇に人差し指を当てながら言った。
「え、秘密?」
「秘密……」
「はい、秘密です!」
彼女が俺との関係を必死に隠そうとしてくれたのはすごくわかる。だがこれは……これは……
すごい誤解を生んでしまう!
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