第8話 聖女様の嫉妬
「ごめんなさい、私の友人たちがちょっかいをかけてしまって……」
「いやいや、全然大丈夫だから! 気にしないで」
家に帰るなりお昼のことで瀬戸さんから謝られた。
瀬戸さんは何も悪くないし、むしろあの状況から助け出してれた恩すら感じている。
「羨ましいよあの二人といると楽しそうだ。」
「本当は二人ともとってもいい子なんです。ですがたまに暴走することがあって……」
「瀬戸さんはあの二人と結構付き合い長いの?」
「はい、あの二人とは保育園の頃から一緒で……幼馴染なんです。」
これは驚いた、まさか聖女様と妖精ちゃんと氷姫がまさか幼馴染だったとは……。
だが確かに今言われてみれば三人は高校入学時すでにかなり仲が良かったな。
それにしてもこんな美少女幼馴染っているんだな。
「香織ちゃんは昔から気だるげでだらしないけどとっても可愛くて癒されます。食いしん坊なので追加でお弁当を作ってあげたりしています。」
水瀬さんにも毎日作ってあげてるのか……通りで瀬戸さんのお弁当だと見抜けるはずだ。
水瀬さんはよくクラスの女子達にお菓子を与えられていたが完全に餌付けされているな。
「美来ちゃんはとってもクールで一見冷たく見えるけど心を許した相手にはとことん優しくしてくれるとっても可愛い子です。」
二人のことを語る瀬戸さんは我が子の自慢話をするかのように嬉しそう話していた。
本当に大好きなんだろうな、二人のこと。
二人のことをよく知っていなければここまで褒め言葉は出てこない。
清華さんはまさかのクーデレだったという衝撃の事実が明かされたがこれは内密にしておこう。
「瀬戸さんは本当にあの二人のことが大好きなんだね」
「はい、私は親友達のことが大好きです!」
ああ、なんて綺麗な友情なんだろう。恐らく他の二人に瀬戸さんのことを聞いても今みたいに嬉しそうに語ってくれるだろう。
そんな友情を体験したことのない俺にはわからないな。
「でも……今日はちょっと二人がずるいです。」
「ずるい? 何が?」
「私だって我慢してるのに……あの二人は月城君と学校で楽しそうに話してたんですよ」
確かに俺と瀬戸さんは基本的に学校では話さない。根も葉もない噂をこれ以上広げられると困るためできるだけ接触を控えていて話す時は業務連絡くらいだ。
なるほどそれでちょっと今日はムッとしてたのか……
むっと頬を膨らませる彼女が可愛くて自然と頬が緩む。
「わかった、今度から学校でも話そう。」
俺は模範的な解決案を提示し、瀬戸さんの表情を伺うがさらに頬が膨らんだ。
え? ダメだった? これ以上どうすれば……
「それは当然ですが……今日の分の埋め合わせを要求します!」
「な、何をすれば……」
高級ケーキダッシュで買って来いの刑か今日一日使いパシリの刑か……なんでもこい!
そう身構えていると瀬戸さんは笑顔で隣をポンポンと叩いた。
「もっとこっちにきてください。」
「え? こ、こう?」
「はい、よくできましたね」
そいうと彼女は急に俺の頭を自分の胸に抱きしめた。
(え? え? これどういう状況!?)
顔周りを覆う大きい二つの柔らかな膨らみは俺の理性を壊さんとばかりの凄まじい威力だ。
「ふふ、いい子いい子……」
さらに頭を撫でられれば完全に母親と子供だ。
「月城君は私のお胸が好きそうでしたから……大サービスですよ?」
「べ、別にそんなこと言ってな———」
「お嫌いですか?」
「……ノーコメント。」
「ふふ、素直じゃないんですから」
さらに抱きしめる力が強まり胸に押しつけられる。
目の前に胸が迫りこれ以上は耐えられそうになかったため俺は無理矢理抜け出した。
「あら、まだもうちょっといいんですよ?」
「お、俺が耐えられないから無理……」
「また甘えたくなったらいつでも言ってください。肩でも膝でもお貸ししますので」
「……わ、わかった」
本当に危なかった……あと数分やられていたら理性を保てていたかどうか分からなかった。
不服を訴えるように見つめると彼女は心底嬉しそうに微笑んだ。
「これで……もう完全にわたしのものですね?」
「……なにか言った?」
「いいえ、なんでもありません」
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