第53話 求婚
扉の向こうで入場の合図が聞こえる。
ガチャッと扉が開かれ、皆の視線が一斉にこちらへ集まった。
ゴクッと唾を飲みこみ、2人で歩み始める。
ワァァアアアアアアア!!!!
パチパチパチパチ……
すごい歓声だ! よかった……皆祝福してくれているみたい。
それから僕達は、貴族に囲まれ対応に追われた。
色んな方々が女王になった事をよく思っているようで嬉しかった。不思議とそこまで疲れはしなかったし、陛下も嬉しそうに応えている。
そういえばドマドフ・チャッカマン大公が見当たらないが……なるほど。大公がおそらく協力していたのだろう。どうなったかは……陛下のことだから……徹底的に……うん。まあ、あれだけの事があったんだ。どうなっても同情の余地は無い。
陛下には人が絶えず集まっているが、僕はそろそろ両親の元へ行こうと離れた。陛下が少し僕のことを寂しそうに見たから、両親に会いに行くと伝えると安心したようだ。
「お父様、お母様!」
「ああ……! 元気そうでなによりだよ、アシュ」
僕が試練を乗り越える間やそのあとも、何度か会いに来てくれたが、パーティーの準備でしばらく会っていなかった。
「まさか国王が女性だったとは……同じ女性として誇らしいな」
「そうだね。実は……ちょっと耳貸して」
「ふんふん……ええ?! 本当に?! それは……嬉しいすぎるぞ、アシュ〜〜!!」
「なになに?! 父にも教えてくれよ〜!……え! 遂にか……それは本当にめでたいね」
僕が求婚することを2人に伝えた。よし、指輪はちゃんとある。ポケットに手を入れ、確認する。落ち着いたらバルコニーに来てくれるらしいから、頃合いを見て向かうか。
✦︎✧︎✧✦
両親と食事をしたり飲み物を飲んだりしながら過ごした後、僕はバルコニーに出た。頭の中で何度もシュミレーションして、大丈夫……だよね?
15分程たった頃だろうか。陛下が来た。
「アシュ」
「あ、陛下!! いいスタートが切れてよかったですね」
「本当だな……女性が特に喜んでくれて嬉しい」
「そりゃあ、女性にとって憧れの存在になったんですから!」
「そうだといいな」
「陛下、話したいことがあって……その……」
「なんだ? ゆっくりでいいぞ」
「ありがとうございます……」
さあ、言うんだ。大丈夫。断られるなんてことはないのだから。ここは男らしく、求婚するぞ!!!!
僕はポケットに手を入れ、指輪を取り出し、片膝をつく。
陛下は一瞬目を見開き、嬉しそうに笑った。少し瞳がうるんでいる気がする。
「陛下!! 僕と、結婚してください!!!!」
「……っ……喜んで」
陛下は僕に勢いよく抱き着いて、少しよろけて受け止める。
あぁ、幸せだ。陛下が僕の妻になった――――。
「アシュ……嬉しいよ……人生で最高の日になった……ありがとう……っ」
「僕もです……愛してます、これからがスタートですよ?」
「そうだな……そなたとの人生……」
「2人の人生……ですね」
「ふふ、幸せだ」
「僕も……今が1番幸せです」
僕達は、熱いキスを何度も交わした。
思う存分キスをしたあと、僕達は会場に戻って結婚を発表した。会場は大いに盛り上がり、このパーティーは歴史に残るだろう。
皆に祝福され、僕達の事をよく知る者たちは涙を流してくれた。僕は本当に幸せ者だ。こんなに多くの人に愛され、大切な人もいて……。皆には感謝してもし切れないな。
✦︎✧︎✧✦
僕達は、半年後に結婚式を挙げることになった。それまで再び忙しい毎日を過ごす。そんな毎日だが、僕達は夫婦になるのだ。早く結婚式が来ればいいと思った。
そして結婚式のドレスは、またサーラにお願いしている。サーラはパーティーの後、依頼が殺到して忙しようだ。さすが国王の影響力。
そして迎えた結婚式。異様だとは思うが、外の国民が集まる前で誓いをたてるのだ。
純白のドレスと純白のベールを纏った陛下。
お世話になった教皇が、あの言葉を紡ぐ。
「新郎アシュ・クイック……あなたはここにいるオレリア・エルギールを健やかなる時も、病める時も喜びの時も、悲しみの時も
共に過ごし、愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」
「誓います」
「新婦オレリア・エルギール……あなたはここにいるアシュ・クイックを健やかなる時も、病める時も喜びの時も悲しみの時も共に過ごし。愛をもって互いに支えあうことを誓いますか?」
「誓います」
「では誓のキスを」
ワァァアアアアアア!!!!
「国民の前で誓いを立てられることが嬉しい」
「そうですね……国民の皆さん、心から祝福してくださってます」
「そうだな……まさか私が結婚するとは」
「僕はやっと実感がわいてきました……」
「私もだ。奇遇だな」
「え……わあ!」
陛下は僕をお姫様抱っこした……!
「ちょ、ちょっと……恥ずかしすぎますよぉ……!」
「これが私達だろう?」
「そ、そうですけど!」
「ほら、国民が喜んでる」
「も……もう……」
「ふふ。愛しているぞ、アシュ」
「僕もです……!」
僕は陛下にキスをした。陛下に仕返し!
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