最終章

第47話 主人公誘拐?! (シリアス展開注意)




 それから僕達は仕事を再開し、陛下の兄とその妻は引き継ぎが終わると帰って行った。


 再開してから3ヶ月が経ち、落ち着きを取り戻した時のこと。







 陛下の元に、伝話がきた。






「陛下、急な伝話を失礼致します。魔物パトロール班のノクターンと申します」


「どうした?」


「沿岸で魔物が大量発生しました。至急応援お願いします!」




伝話の向こう側から、魔物と戦う音が聞こえる。



「わかった。私も行こう。それまで耐えてくれ!」


「はい……! では失礼致します!」





 伝話を終えると直ぐに陛下は立ち上がり、同じ執務室にいる僕の元へ駆け寄ってきた。






「すまない、アシュ。護衛2人を呼び寄せてくれないか?」


「わかりました!」





 僕は急いで2人に魔法道具で合図を送り、数秒たたずして2人が現れた。





「沿岸で魔物が大量発生した。騎士団総出で向かおうと思う。ルカニエは私と共にきてくれ。カンだけ残ってアシュを守ってくれるか?」


「任せてください!」




陛下は騎士団へ連絡し、あとから向かうと伝えられた。



「アシュ、何が起こるかわからん。だから王宮の中で身を隠しておいてくれ。カンもいるし……大丈夫そうか?」


「大丈夫です。陛下、どうかご無事で……」


「いつもの事だ。いつもより数が多いのが気掛かりだが……無事に帰ってくる」




 僕にキスをして、陛下は足早に王宮を出ていった。









「大丈夫……だよね?」


「きっと大丈夫っすよ。陛下は強いし、ルカもいるっすから! アシュ様は俺が守ります!」


「ありがとう。仕事してるけど、カンは休んでてね」


「そっすね……手伝えることないっすか?」


「うーん……じゃあ、僕がここに置いた書類に判子を押してくれる?」


「はい!」






 30分ほどたった頃だろうか。何か嫌な予感がする。




「ねえ、カン……なんか嫌な予感がしない?」


「そっすか? どういう予感を?」


「何だか分からないけど……」



 すると突然、扉の隙間から紫色の煙のようなものが……





 どんどん入ってくる!!!!






 窓が勢いよくバンッと閉まった。





 何が起きてるんだ?!?!




「アシュ様!! 俺の後ろに」


「う、うん……!」


「嫌な予感ってのが……当たったみたいっすね」


「そうだね……どうする? 窓から逃げる?」



 すぐそこまで煙がきている。得体がしれないから、恐らく吸ってはいけない気がする。



「そうっすね!」



 ガチャガチャと窓を開けようとするが、開かない!!!!



「クソ! 何で開かねぇんだよ!」


「ハンカチで口を覆って! 吸っちゃいけないと思うんだ……! しゃがみながら外に出るしかない!」


「わかったっす!」




僕たちは扉へと歩き出した……






のだが……








意識が






遠のいていく……















「クソ……アシュ……様……」




















✦︎✧︎✧✦






 目が覚めると、知らない場所にいた。





「ん……ここは……どこ?」


「よォ、やっと起きたか! 国王補佐官様ァ!」



 動こうとするが、手錠で身動きが取れない……!!


 もしかして……誘拐……?!





 身体を動かすと、そこらじゅうがズキズキと傷んだ。



「いっ……!」




 身体を見ると、そこらじゅう痣だらけ。





 いや、それよりカンは……無事なのか?!






 周りを見渡すと、カンが横たわっている。




「あぁ……!!!! カン、起きてよ……カン!!!!」


「うるせぇぞォ!!!! 殴っても起きやしねぇくせに、起きたら俺のことは無視かァ?!」


「うぅ……貴方は……誰ですか……っ」


「テメェは知らねぇだろうなァ!! 部外者なんだからよォ」


「違う……僕はもう、この国の一員だ!」


「へっ……何も知らねぇで呑気に生きてきたんだろォが……なにが救世主だ……か弱い子猫ちゃんじゃねぇかァ!!!!」





 本当に誰なんだ……全く面識もないだろう。見るからに悪人面だ。それよりカンが……目を覚まさない。生きてる……んだよね?





「俺のオヤジが……先代国王に殺されたんだよォ……死刑だぞ死刑ィィ!!!! 何が正義だクソ……死んだやつは生き返らないが、俺が苦しまないといけねぇ理由はねェ!!!!」


「僕と陛下は……関係ない……じゃないですか……っ」


「うるせえ。そんな事はどうでもいい。先代国王があっけなく死んじまうなんてなァ……!」


「先代国王は……国民に……愛されてました……!」


「うるせえ黙れ!!!!」




 ドゴッ!!



 座り込んでいた僕のお腹を思いっ切り蹴った――







「かはぁ……っ!」


「ふん」






 痛い……浅い息を繰り返す。





 そしてその男はカンの元へジリジリと歩いていく……!



「だ……めだ……カンは……もっと……関係……ない」


「黙れっつったろォ? この脳筋野郎は生贄……ってやつだなァ。こいつは殺すがお前はまだ使い道がある」


「いゃだ……カンは……殺させない……っ!」


「テメェに何ができるってんだ? ァア?! 魔力もそんなにねぇし、弱えテメェによォ!!!!」



 ドゴッドゴッ……!!



「っ……はぁ……ヒュー……」





 上手く息が吸えない。




「ちょっと蹴っただけでこの有様だ。ふん、そこで黙ってみてるがいい!!!! コイツが死ぬのをなァ!!!!」




 腰につけていたナイフを取り出し、カンの太ももに突き刺した……!



「ぐぁぁああああ!!!!」


「よォ、起きたか。どうだ? 痛いだろう」




 血だまりが、広がっていく――――。



「ヒュー……ヒュー……」




 声を出そうにも、空気が漏れる音しか出ない……!!痛みで身体も動かない。僕はなんて弱い人間なんだ……!!!!




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