第37話 誓い(キスシーンあり)

「こっちへ来てくれるか?」

「あ、はい」


 先代国王が色んな意味で眠るベッドの横に立っていた僕達は、部屋の隅っこへ移動した。僕の後ろには、いかにも高級そうなクローゼット。何をするのだろうか?




「ここには私が良いと言うまで、誰も入ってこない」

「そうですね……」

「ずっと我慢してきたことがしたいのだが」

「えっと……つまり?」

「さっきの……続きだよ」



 妖艶な表情で見つめられ、鼓動がはやくなる。死んでしまいそうなくらいに。陛下はまた僕の唇をそーっとなぞる。


 やばい、キスされる……! 恥ずか死ぬ!! 深いやつを、ついにしちゃうのーー?!




 僕は耐えきれずにギュッと強く目を瞑った。




「嫌なのか?」


「へ……?」


「そんなに強く目を閉じるな」


「だって……恥ずかしいじゃないですか! こんなの慣れてないし……陛下だって、初めてでしょう?」


「後継者教育で教わったからな」


「僕はほとんど教わってません!」


「私は国王だぞ? 跡継ぎを作ることの重要性はそなたとは違うから」


「わかってますよぉ……」


「そんな上目遣いで見られたら……我慢できなくなるぞ」


「僕は男ですよ?!」


「そんなの知っている。でもそなたはそなただ。男のあるべき姿なんて、私にとってはあるようでないものだ」


「陛下が……引っ張ってくれますか?」


「任せなさい。緊張するなら優しく目を閉じて」


「はい……」



 僕はゆっくり瞼を閉じて、陛下の唇を待つ。どんな口の形で待てばいいんだ……? ちょっと口を開けていたら、いきなり深いキスをされちゃうんじゃ……それは、ちょっと! 徐々にやって欲しい。だから、口は閉じて、力を抜いてみればいいかな……?



 前は泣きまくってよくわからなかったから、記憶を辿っても思い出せない。だめだ、心の中でべらべら喋ってる自分が恥ずかしい。




 すると柔らかい感触があった。チュッと音を立てて離れたかと思うと、角度を変えて何度もキスをする。





 やばい、どうにかなってしまいそうだ……キスってこんなに気持ちいいのか……。そのまま溶けてしまいそうで、足に力が入らずズルズルと座り込む。




 それに陛下の唇がついてきて、終わらない快楽にクラクラする。




「アシュ、そろそろ口を開けてくれるか?」

「はぇ?! わ、わかりました……」



 断りきれずに口を開けると、歯と歯の間に陛下の親指が。何をするつもりなのだろうか……? 少しづつ僕の口の中に指が入っていく。








「舐めなさい」






 言われるがままに陛下の指を舐める。両手で陛下の手を握り、一生懸命。親指の次は……人差し指……どう舐めればいいのかわからず、陛下の目を見ると……

 艶めかしい微笑を浮かべ「いい子だ」陛下ってSっ気があるような……僕はMなの?




「そなたは可愛くて堪らないな」



 そう言って、僕の唾液でまみれた指を舐めた。



「ではお待ちかねだろう?」



 そうして僕が待っていた深いキスを……ゆっくり舌が口内に入り込む。優しく掻き回すように舐め取られ、僕も頑張って舌を絡める。息が上手く出来なくて、頭がぼーっとする。口の端から唾液が垂れているのがわかる。みっともない僕の姿に興奮してくれるのは貴方だけだろう。


「……ん……はぁ……」




 息が絶え絶えになり、声が漏れる。





 口が離れ、一気に酸素が入っていく。お互い息を切らし、見つめ合う。垂れた唾液を舐め取られ、ビクッと身体が反応する。





「想像以上だな……」


「はぁ……はぁ……僕は想像もしてなかった……です……」


「心外だな」




 陛下の顔色が悪い。




「陛下、顔色が……」


「ああ、コルセットがキツすぎる……だめだ、緩めてくれないか? ここの後ろのこれを下げて欲しい」


「ジッパーですか?」


「そう」


「は、はい……」



 ゆっくりとジッパーを下げると、陛下の美しい肩甲骨が顔を出す。なんかいけない事をしているみたいで……背徳感が僕を襲う。



 だめだ、あまり見ちゃいけない。



 背中の方まで下げるとコルセットが見えた。うわ……本当にキツそうだな。リボンを解き、コルセットを広げる。



「あー……息ができる……ありがとう」


「どういたしまして」


「サリナが来てくれているんだが……彼女に着替えを手伝ってもらったんだ。張り切って締めすぎたようだ」


「え! サリナ様が? 久々に会いたいな……」

(サリナは陛下が女ってこと、知ってたんだ……信頼してるんだからそうだよね)


「こら。私の前で他の女のことを話すんじゃない」


「あ、すみません……へへ、嫉妬してくれているんですか?」


「当たり前だろう。それより名前で呼んでくれないか」


「え……」


「はやく」


「は、はい。オレリア……」



「ふふ、ありがとう。今皇帝陛下が法律を変えようとしてくれていてな。女性が国王になる権利。それが発足されれば、私は女王になれる。だから、その時はまた名前で呼んでくれるか?」


「そうだったんですね……もちろんです。皇帝陛下がそこまでしてくれるなんて、優しいですね」


「私が彼を楽しませたお礼だと。彼は正直いけ好かないが、感謝している」


「そうですか……また皇帝陛下に会う時は、一緒に聞かせてくれますか?」


「もちろん。計画も考えないといけないからな」


「そうですね。……そろそろみんなを呼びませんか?」


「ああ、私のせいでムードぶち壊しだな」


「いや、心が持ちませんでしたから……」


「そうか、そなたはウブだからな」


「そうですよ。ゆっくり……お願いします……」





 そして陛下は元の紳士服へ着替える。さらしを巻くまで後ろを向いていたが、巻き終わると振り向いてくれって言われて……陛下の腹筋を初めて見ることが出来た。縦に入った線がとても美しかった。



「そんなにジロジロ見るな」


「だって、綺麗だから……」


「触るか?」


「え、いいんですか?!」


「ああ、ほら」


「わあ……かたいですね。今までの努力が伝わってきます」


「強くなるための訓練は慣れればそうでもない」


「陛下は強い……僕と違って」


「そなたにあるものは私にはない。逆も然り。だからいいのでは無いか?」


「そうでしょうか……」


「私はそなたを守りたい。そばに居てくれるだけでも私は生きていられる」


「僕は……貴方が辛い時も、楽しい時も、一緒にいたいと思えるような人でありたいです」


「それはもう既に。そなたのために命を捧げ、身も心も全てを捧げよう」


「僕も貴方のために生きて、命も身も心も貴方のものです」





 僕達は死体のある部屋で、愛を囁きあった。





 短くも長くもあった、そのひと時を噛み締めるように……。






✦︎✧︎✧✦



次回から4章に突入します!!

こっからもう溺愛溺愛ですので、もっとやれー!

と思った方は評価のほどよろしくお願いいたします!笑

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