男でもときめきたい!〜ただの補佐官の僕が、実は女性だった国王陛下に溺愛される?!〜

やーみー

序章(2話読んで2章にとんでも大丈夫ですー!)

第1話 始まり

 

 時々、僕は虚しくなる。このままここで人生を終わらすのか?


 ほとんど旅に出たことがない僕は本を通してしか外の世界を知れない。こんな広大な地に住んでいるというのに、閉じ込められているような感覚。



 恵まれて幸せなはずの僕は、この現状に満足できないのだ。それと同時に、親と違って魔力の弱い僕は何が出来るのだろうかとも思う。










 幸せの定義というのは曖昧で、人によって全然違う。そんな暮らしをして幸せじゃないって?贅沢言うなよ。そう言われると、何も言えない。



 でも、僕の幸せって、外の世界を感じてもっと誰かに感謝されて……必要とされたい。




 成人の日が待ち遠しくて堪らない。1日1日がとても長く感じる。同年代の子達とは話が合わなくて友達もいないし、退屈で仕方がないんだ。





 いつか、自由になって他の誰かに愛されて……幸せな暮らしを夢見てる。楽しいことも、辛いことも、全てを乗り越えた先の景色がみたい。




 親の元を離れた先に、何が見えるか。魔力も体力もないけれど、僕に出来ることはきっとあるはず……人の気持ちを考えられるような人であり続けたい。



 そうすれば、悪い人だっていい人になる。いい人の周りには、いい人が集まると僕は思う。そんな未来を描きたい。





 未熟で弱くて自信が無い






 そんな僕が貴方に出逢って、恋をする――――――








 強くて美しい貴方と紡ぐときめき、時には切ないラブストーリー。




 貴方の弱い心も、全部受け止めたい。弱い僕は貴方を守れないけれど、辛い時は頼って。僕の前だけ涙を流して、全部をさらけ出して欲しい……。貴方と一緒なら、なんでも出来る。そんな気がするのだ。








 まだこの時の僕は『恋』を知らない。













 ✦︎✧︎✧✦


 後ろで結った父の茶色い髪が風で揺れる。

 父を見つめていると、目が合った。両親と僕、家族全員お揃いのオレンジ色の眼。太陽の光が反射して、父の眼はいつにも増して宝石のようにキラキラと輝いて見えた。







 そして今日も領地の民に紛れて、この活気溢れる街の景色をみる。

 




 この領地は、年中暖かい気候で様々な野菜や茶葉が収穫されるため、食の名産地で有名だ。





 ここはモルガ王国の領地の1つ、"アルペン" である。いわゆる移民国家だ。




 通っていく領地の民達は、僕たちに気づくと笑顔で挨拶をしてくれた。よく来るものだから、よく気づかれる。

 そのため、気づかれたくない時は変装して出かけるのだ。





 男としてどうなのかと言われると仕方ないのだが、たまに女装をしたりもする。




 その時は、自分とは別の人として振る舞うことができる。




 平民の至って平凡な女性。みんなの暮らしや、気持ちを身近に感じられる。



 こんな女みたいな顔でも使い道があると思えるから。















「ゴホゴホッ……」




 何気なく周りをみていると、父が顔を歪め咳をした。



 父は元々身体が丈夫ではなく、1年に1度は風邪を引いてしまうほどだ。



 そういえば……今年はまだ風邪を引いていない。




「お父様、大丈夫? また例の風邪?」


「あぁ……陛下が寄越してくれた医者に診てもらったんだけど……ただの風邪みたいだよ」



 心配させまいと、父は私に苦笑いをした。




「それならいいけど、無理しないでね……」


「ありがとう。しかし陛下は過保護なのか、良くなるまでは診てもらうようにと言われたよ。だから医者にしばらく居てもらうことになったんだ」


「そうなんだ……早く治ってね。陛下に感謝だね」


「もう長い付き合いだからね……。心配かけて申し訳ないよ…はやく良くなるよ。妻も心配しているし……僕が咳をする度に大袈裟に慌てるもんだから」



 

 母はモルガ王国の第3騎士団長で、この領地に配属されている。



 仕事中の母をあまり見た事がないが、団員が母を尊敬している姿を見て、凄い人なんだと時折思う。



 いつもみんなのことを考えて、思いやりがあって。両親共にそんな一面があるからこそ、みんなに愛されるのだろう。僕もそうありたい。







「そっか。お母様らしいね」


「そこが愛らしいだろう? アシュ、さあ帰ろうか」




 そして父は優しい目で僕に微笑みかけ、僕の頭を撫でた。



 父の髪はサラサラでストレートヘア、僕は母と同じオレンジ色のくせっ毛。



 巻いたように綺麗にパーマがかっている僕の髪は、結構気に入っている。





 父に頭を撫でられると、左に流していた前髪が視界に入り、少しくすぐったかった。

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