第41話 熱いキス

 陛下の部屋に入ると、陛下の匂いがフワッと香る。

クラクラしそうだ……陛下がいつも過ごして、寝ている場所。





「こっちだ」







 陛下は今度は僕の手を引いて、ベッドの方へ……。え、ベッド?! どういうこと?! いやいや、まだそんな……はやいって!!!!







「え、ちょっ……!!」


「心配するな。襲ったりしない」








 はあ、よかった。いや、よかったのだろうかりでも今はまだ心の準備が……出来てないから。







 陛下が先にベッドに座り、僕は陛下の股の間に座る。

 後ろから抱き締められ、ドキッとする。







 陛下は僕の肩に顎を乗せて、僕の手を触って遊んでいる。








 なんだよ、可愛すぎるんだけど……?!








「へ、陛下……?」


「私、今凄くめんどくさいよな……?」


「そんな事ない……貴方が僕を想ってくれてるのがわかって嬉しい」


「本当に?」


「本当です! 貴方が不安になるなら、不安にならないように頑張りますから……ずっと好きでいて欲しい」


「ふ、こんなに好きなんだ。もう後戻りはできないぞ?」


「はい。ずっとずっと愛してます」





 すると彼女は僕の服のボタンを外し始めた。







「え、ちょっと! 何するんですか……?」


「いいから。お願いだ……肩を出すだけ」


「だけって……」







 そう言いながら僕は抵抗せずに、服がはだけ、肩が露出される。








 彼女は僕の首筋にキスを落とし始めた。チュッチュッとリップ音が脳内に鳴り響く。



 キスをされたところが熱くなって、頭がクラクラする。








「や……です……っ」


「ふふ、可愛い私のアシュ」


「もうやめ……」








 するといきなりズキッと痛みが走った。








「いたっ……! え、何?」


「キスマーク」


「キス、マーク?」


「知らないのか?」


「し、知ってます! 自分のモノって印……ですよね?」


「そう」








 彼女は嬉しそうにキスマークをつけた所を撫でている。




 振り向いたらキスをされそうで、恥ずかしくて振り向けない。





「急に……どうしてですか?」


「これがあれば変な虫が寄り付かなくなる」


「そうですか……ふふ、貴方が満足できるならそれでいいです」


「消えたらまた付けるからな」


「僕の愛しい人は独占欲が強いんですね」


「そうみたいだ」


「僕もつけたい……」


「いいぞ」








 後ろで首元を緩める音がする。貴方がいつも隠している綺麗な鎖骨に、印を。




 彼女は深く座り直し、ベッドの真ん中で胡座をかく。



 僕はゆっくり近づいて、ギシッとベッドが軋む音がした。





 さらけ出された鎖骨……綺麗だな。








「なにか如何わしいことをするみたいだな」


「なっ……僕にはまだ早いです……」


「わかっているさ。さあ付けてくれ」


「えっと……どうやるんですか?」


「はは、知らないのか。思いっ切り吸うんだ」


「え、難しい……」


「とにかくやってみて」









 僕はゆっくり鎖骨に唇を宛てがい吸ってみた。けど、跡がつかない。








「あれ……」


「もっと強く吸わないと。こんなふうに」


「いたっ……もう、何個つけるんですか!」


「綺麗だ」


「ばか……」








 どっちが男かわからないくらい、彼女は積極的だ。







 翻弄されて、受け入れて。もっとして欲しいなんて、思ってしまうようになった。見えないけれど、痛みを感じたところを撫でてみる。本当に跡がついているのかよくわからなかった。







 そうして僕は何度も彼女の鎖骨にキスマークを付けようとしたが、繰り返してやっと薄く跡がついた。








「はあ。やっとつきました」


「よくできました」









 白い肌が赤くなって、妖艶だった。見ているだけで欲情してしまうほどに。









「陛下……キス……したいです」


「今日は積極的だな」


「貴方のせいです……」


「それはすまない。では責任を取らないとな?」


「僕からしますから……目を閉じてくださいっ……」


「ほう。それは嬉しい」





 閉じられたあなたの瞳。長いまつ毛……。少し開けられた唇。





 僕はキスをする前に、彼女の顔をじっと見て、頬を撫でて……唇に触れた。




 カプッと指が咥えられる。







「あっ」


「焦れったいぞ」


「少し待ってください……」


「わかったよ」






 僕は意を決して、ゆっくりとキスを落とした。








 すると、待っていたかのように彼女の舌が僕の口内に入ってきて、舌と舌が絡み合って……。いつもより激しく、食べられるんじゃないかというくらいに、このまま服を脱ぎ捨て、致してしまうのではないかというくらい。







「はぁ……は……陛下……はげしっ……んぁ…………やぁっ…………」






 グチュグチュといやらしい音が脳を刺激する。だらしなく開け放たれた僕の口から唾液が垂れる。彼女はそれに構わず僕の口内を貪るように、激しいキスを繰り返した。





 僕はひたすら必死に舌を絡めながら、彼女の服を握り締めた。





 長い長いキスだった。やっと唇が離れ、お互いに息を切らす。





「がっつき過ぎですよ……ばかぁ……」


「つい……キスマークで興奮してしまったみたいだ。怖かったか?」


「全然……寧ろ……その……よかったです」


「ふふ、よろしい」





 優しく頬を撫でられ、思わず擦り付いてしまった。








「そなたは猫みたいだな」


「え……?」


「急に積極的になったり、突き放したり、こうやって擦り寄ってきたり」


「ちょっと、突き放すって……いつの話をしてるんですか?!」


「キスが出来ないなら帰ってと言われた時は、驚いたよ」


「もう、掘り返さないでください! あの時は必死で……」


「わかっている。あの時のそなたは壊れそうだった。もう悲しませたりしない」


「そうしてくださると助かります……」


「引き止めてすまなかった。サリナの所に行ってきなさい」


「もう大丈夫ですか?」


「お陰でな」






 彼女は色めかしく鎖骨を撫で、唇を舐めた。



 もう、僕を刺激しないで欲しい……。




 そそくさと僕は服を整える。



「なんだ、さみしいな」


「もう、行きますからっ」


「ふふ、そなたは面白いな」


「あ! からかわないでください! じゃあ行ってきます」


「行ってらっしゃい」









 そうして僕は、陛下の部屋を後にした。








 熱いキスをした、唇に触れる。





 熱を冷まそうと早歩きで向かうが、あの熱いキスが脳裏に焼き付いて、唇の感触が消えなくて、熱い顔を両手で抑える。





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