第46話 勘違い
僕達はいつも通り早めに転移して、休憩してから皇帝陛下の謁見へ向かう。
今日はルカニエとカンは来ておらず、陛下とサリナと3人で。大事な話があるって言うから、少し緊張する。
ガチャッと扉を開けると、皇帝陛下が座っていた。僕達を見てすぐ立ち上がり、挨拶をする。
「よく来てくれた。さあ、掛けてくれたまえ」
「「失礼致します」」
「先代国王の件は誠に遺憾だった。素晴らしい国王だった」
「そうですね。でも、最後に話が出来たから悔いはないです」
「話というのは……ああ、話したくないならいい。無理に聞くつもりは……」
「いえ、大丈夫です。話させてください。
私が後継者になると決まるまで、父は私を愛してくれました。父だけが私を愛してくれた。でも、いつしか私を遠ざけるようになり、教育ばかりに力を入れるようになりました。
そんな父が憎かった。父が認知症になり、次第に仕事が出来なくなりました。その時も、父は人を寄せつけなかった。
ついには人の区別もつかなくなった父が、私のことを探しては謝りたいと呟き始めました。今更もう遅かった。腹が立ちました」
「そんな事があったとは……かなしいものだな」
「そうですね。でも、最後、私は勇気を振り絞って、女性の姿で父の前に現れた。すると、父が話してくれたんです。ずっと謝りたかったと。私の幸せを願っていると。いざ聞いてみると、あんなに憎かった父が優しい父に見えた。だから、悔いは無いです」
「そうか。それならよかった。最後に話が出来てよかったな」
やはり皇帝陛下が悪い人とは思えない。今日は特にそう思う。陛下は気付くだろうか?
「はい」
「しんみりしてしまったな。さあ、紅茶を飲んでデザートでも食べながら話そう」
「「お気遣い感謝致します」」
「ところで、ソウ……いや、オレリア。お前はアシュと恋人になったのか?」
皇帝陛下には僕が陛下のこと女性と知っていることは、話していない。さっきの陛下の発言で気付いたのだろう。
しかし、恋人になったことまで気付くなんて……。
「ッ……ゴホゴホ!!」
「はっはっはっは! なんとも面白い。そこの者、ハンカチを」
「すみません……いつからお気付きで?」
「君達が両想いなのは気付いていたさ。今日久々に見ると雰囲気が違うもんでな」
「な、なんとも……お恥ずかしい」
「恥ずかしがることでは無いさ。俺には恋愛のよさがよくわからんが、お前を見てるとそう悪いものでもなさそうだ」
「私はどう見えているのですか?」
「幸せそうだ。いつも哀しそうだった」
「はぁ……皇帝陛下には頭が上がりませんね」
「勘が鋭いのでな。アシュ、お前もそれに気付いていただろう?」
「へぁ?! そ、そうですね。気付いていました」
「はっはっは。お前達はそろって面白いやつだ。オレリアを頼むぞ」
「はい!!」
「いい返事だ」
「私もとっても嬉しいです。2人とも幸せそうで」
「本当だな。サリナは補佐官を辞めるまで本当に頑張っていた。尊敬している」
「ありがたきお言葉です……!」
「それはそうと……大事な話があってな。オレリア、お前を女王にするための法律だ。法律を変えるのに、終盤まで事が進んでいる」
「それはなんと……嬉しい報告です」
「それに伴って……そろそろ準備をした方がいい。盛大に発表するからな。パーティーの準備は任せてくれていいが、ドレスや支持を集めておくなど……しておいた方がいいだろう」
「皇帝陛下、発言してもよろしいですか?」
「アシュ、発言は自由にしてくれ」
「ありがとうございます。ドレスに関しては、僕と陛下で進めているところです」
「ほう。なかなかやるじゃないか」
「私の補佐官ですから」
「補佐官、兼恋人だな」
「……はい」
陛下は嬉しそうに笑った。
「支持を集めるなら、私も協力します!! 隣国の公爵夫人として!」
「頼もしいな。サリナ、補佐官を辞めてもオレリアを支えてくれて感謝しているよ」
「ふふ、光栄です。皇帝陛下!」
「あの……皇帝陛下。皇帝陛下はなぜ、オレリア陛下のためにここまでしてくださってるんですか?」
もう、聞くしかないと思った。この返答によって、陛下の気持ちは変わると思う。皇帝陛下を信じて、質問してみる。
「そうだな……そういえば話していなかったな。これは話が長くなるが、構わないかな?」
「大丈夫です!」
「私も気になってました! 聞きたいです!」
「私も……どうしてですか?」
「それはオレリア、お前が後継者と決まった後、初めて会った時に遡る。その時、まだお前は男としての振る舞いを練習している途中だったな。お前の話し方や動きに違和感を覚えた。それは些細な違和感だったから、気づいたのは私くらいだっただろうな。
それでお前を呼び出し、話した。お前はオレリアだろう? と」
「そうでしたね。皇帝陛下に嘘はつけないと思ったから、認めた」
「そう。その事実が面白くてな。お前の行先が気になって仕方がなかった。国王になったお前は、立派だった。奇想天外で見ていて楽しかったぞ。ここまで国を繁栄させるとは思わんかったが。その姿を見て、手助けしてやりたいと思った。国のために生きるお前は哀しそうだったから、少しでも幸せになれたらと」
「そんなことを思っていたなんて……私は皇帝陛下の事を勘違いしていたようです」
「ほう? どのように?」
「私は……貴方が怖かった。貴方を楽しませないといけないという義務が」
「なぜそう思うようになってしまったんだ? 確かに面白いとはよく言ったが……」
「貴方は人生がつまらないと感じていた。なにか楽しいことは無いかとよく聞いていたでしょう?」
「それが俺を楽しませろという意味に捉えてしまったわけか」
「そういう事です……楽しませてくれたお礼に、私を女王にしてくれるのかと」
「……? そんな理由でそこまでしないだろう」
「貴方は変わっているから」
「はっはっ! お前に言われたくない」
「なっ!」
「まあよい、誤解が解けたならそれでいい」
「申し訳ございません……」
「いいさ、俺も悪かったんだからな」
「皇帝陛下、話してくださってありがとうございます! やはり陛下は勘違いしているのではないか、と思っていたので……」
「ほう、アシュは人の考えがわかる能力があるのかもな」
「皇帝陛下程では無いです……」
「感謝するよ。お前が質問してくれなければ、話さなかっただろうから」
「光栄でございます」
「では、今日はこれくらいにして……御苦労だった。ついでに泊まっていくといい」
「え?! そんな!」
「いいんだ。それくらいさせてくれ」
「そうですか……無下にはできませんね」
「そうだ。3人とも泊まっていきなさい。俺はやる事があるから、これで失礼する。また夕食で会おう」
「「はい、では失礼致します」」
✦︎✧︎✧✦
次回から最終章に突入します!
最終話は性描写があり、R15ギリギリかと思いますのでご注意くださいm(_ _)m
長い間お付き合いありがとうございます!!
応援したいと思ってくださった方は評価のほどよろしくお願いいたします💭
☆1:頑張ったね賞。
☆2:伸び代がある。
☆3:素晴らしい!
☆1あげるの可哀想かなーと思われる方もおられると思いますが、別に気にしません( *¯ ³¯*)〜♪
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