男でもときめきたい！〜ただの補佐官の僕が、実は女性だった国王陛下に溺愛される？！〜

第45話 おはよう

　僕は結局一睡も出来なかった。でも、幸せだった。陛下の寝顔が見れたし、いい匂いといいおっぱ……オホン。とまあ、そんな感じだった。

「ん〜……」

　陛下がもぞもぞと動き出した。相変わらず僕は抱きしめられたまま。

　もう朝が来たから、そろそろ起きるだろうか。カーテンの隙間から暖かい日差しが差し込めている。

　ゆっくりと陛下は瞼を開け、目が合う。焦点があっていなくて、そんな姿が愛おしい。

「ふわぁ〜……おはよう、アシュ」

「おはようございます。リア」

　今ならいいかなと思って、名前を呼んでみた。

「っ……名前、嬉しい」

「へへ」

　やっぱり喜んでくれた。貴方が喜んでくれるなら、呼べる時は何度でも。

「そなたは寝れなかったようだな」

「お陰様で。でも幸せな夜でしたよ」

「それならよかった。今日皇帝陛下に謁見があるだろう？　情けない話だが、少し緊張してな。そなたの温もりを感じたかった」

「僕を頼っていいんです。頼ってくれて、ありがとうございます」

「ありがとう。そなたも緊張するだろうに」

「僕は大丈夫ですよ。皇帝陛下はいい人だと思ってますから」

「いい人……か。そういう面もあるのかもな」

「意外と優しい人かも」

「どうだか」

　何故そこまで皇帝陛下を嫌っているのだろう。過去に何かあったのだろうか。詳しくは聞いていないから、よくわからない。でもきっと、分かり合える日が来ると思うんだ。そう信じてる。陛下のために法律を変えようとしてくれているんだ。きっと陛下の事を大切に思っているに違いない。

「陛下、着替えますか？」

「そうだな。今日は手伝ってもらおうかな」

「喜んで」

　陛下はゆっくりと立ち上がる。

　ん……？　ちょっと待てよ。その服を脱ぐのを見るのはまだ無理だ！！

　急いで陛下が見えないように後ろを向く。

　パサッと服が落ちる音がする。ああ、危なかった。僕よ、偉いぞ。

「手伝ってくれないのか？」

「いや、手伝える時に言って下されば！」

「ふーん。今手伝って欲しいのだが」

「あ、はい！」

　勢いよく振り返ってしまい、陛下は上半身裸だった。

「え、ちょ！！」

「サラシを巻くんだ。1人じゃ難しくて」

「ええっ……わかりましたよ……」

　薄目を開きながら陛下の元へ歩み寄る。

「恋人だって言うのに、そんなんでどうする」

「い、今はまだこうなだけです！」

「はいはい。巻くから後ろから渡してくれ」

「はい！」

　ゆっくりと巻かれていくサラシ。あまり見ないように後ろに回されたサラシを前に渡す。

　こうやって胸を隠していたのか……。大変だなあ。

「これからこうやって、時折一緒に夜を過ごさないか？」

「そうですね。そうしましょう」

「そなたも寝れるようになればいいのだが」

「そ、それは少し先の話になると……」

「ふふ、ゆっくり慣れてくれればいい」

　慣れる時がくるだろうか。こんなにも緊張して、一睡も出来なかったと言うのに。

　恋愛なんて初めてだから、何もかもに緊張してしまう。陛下も同じ初めてのはずなのに、積極的で余裕がある。なんなんだこの差は……。

　僕はどうやっても余裕があるように、見せることが出来ないのに。

「さあ、できた。ありがとう。顔を洗おうか」

「そうですね」

　メイドに水をお願いして、僕達は顔を洗い、歯を磨いた。

「アシュ、もう朝だし……キスしても？」

「は、はい……」

　陛下はキスが好きだ。僕もキスが好き。陛下の優しいキスが好き。時に激しいキスも好き。

　チュッチュと軽いキスを重ねる。

　彼女は僕の腰に手を回して、引き寄せる。徐々に深くなっていく……。

　僕は頑張って、舌を絡める。

「ふぁ……ん……」

　僕達は、幸せを噛み締めるように、深い、深いキスを繰り返した。

　唇が離れると、お互いの混じりあった唾が糸を引く。

「好きだ。愛しているよ、アシュ」

「僕も……愛してます」

「これからもずっと一緒だぞ？」

「もちろん。嫌になっても離れませんからね？」

「望むところだ」

　2人で迎えた初めての朝は、いつもより暖かくて、輝いていた。

　貴方と毎日こうやって、共に夜を過ごして、朝を迎えて……

　そんな日々が楽しみで、早く来ればいいなと思う。

　この国に来て、色々な事があった。1番の驚きは、国王陛下と恋愛をしていること。まさかこんな事になるなんて、誰も思わないだろう。両親もびっくりするだろうな。また報告しないとな。