第51話 2人で入浴?!

 一体何が起きてるんだ?! 僕が陛下の背中を流している……。陛下はどこから見ても美しい!


「手が止まっているぞ」


「へぇ……?! あ、すみません!」


「ははっ、相変わらずだな」


「それはどういう?!」


「私の裸に慣れていない」


「そんなの当たり前じゃないですか! というか、本当の裸は今が初めて……」


「そうなのか? 悪魔からの試練で見なかったのか?」


「じ、上半身だけ……」


「ならよかった。初めて見るなら本物でないと」


「そ、それはそうですね……」


「よし、ありがとう。変わろう。そなたの背中を流させてくれ」


「え、そんな! 申し訳ないです」


「気にするな。早くしないと冷える」


「わ、わかりましたよ……」


「すべすべだな」


「陛下ほどでは!」






 陛下とこんな……一緒にお風呂に入ってるなんて。夢みたいだ。



「さあ、もういいかな? 少し狭いが2人で入れるだろう」


「ええっ!」


「2人とも入らないと風邪を引いてしまう」


「確かに……」





 陛下が先に入り、僕が上から乗る形になる。密着して……胸が当たってるし……!! 顔がすごくあつい。



「真っ赤になってる」


「こんなの……真っ赤にならないはずないでしょう!」




 僕がそう言うと、彼女は僕の手を握って……彼女の胸に……僕の手を……



「え、あっ?!」


「初めて触るだろう?」


「はい……柔らかい……です」


「私はそなたのものだ。だから、こういう事もしていいんだ。寧ろ……してくれないと寂しい」


「そ、そうですよね……いつもすみません……僕もカッコよくリードしたいのに……」


「そのような事は求めていないから安心していいぞ」


「なら……いいですけど……」


「そなたのここはどうなってる?」


「いや、ちょっと! 見ない方がいいです! 汚いし……!」


「何を言う。男のそれに興味が無いわけないだろう。見たいんだ」


「見たいって……うぅ……そんな目で見られたら……」


「触らせて欲しい」


「見られるよりは……まだ……いいかも……です」





 そして僕はゆっくり彼女の手を僕のそれにゆっくりと……













 ここから先は、皆が想像する通り……最後までするってわけじゃないけど、お互いを触りあった。恥ずかしすぎて、どうにかなりそうなくらい、心臓がバクバクいっていた。結婚したら初夜があるから……遠い未来じゃない。



 だから、今日ここまで進めたことは良かったと思う。









 僕達はお風呂に入った後、2人でベッドに入る。





「そなたが戻ってきてくれた事が、まだ夢のようだ」


「僕もです……」


「そなたはずっと冷たかった。死人のように……だから、温かいそなたの体温が……また、冷たくなったらと思うと……」


「そうだったんですね……悪魔は、もう会うことは無いと言っていました。それが安心材料になるかはわからないけど……もう本当に戻ってきたんですよ」


「そうか……よかった。もう一時も離れたりしない」


「今後魔物が大量発生したら、陛下は行くしかないでしょう」


「そうだが……そなたを巨鳥ルフに乗せて、護衛も付けて……」


「近くで見守る?」


「そうだ。そうでないと、安心できない。そなたが私の視界に入っていないともう……」


「そうですね。これからはそうしましょう」


「ああ……アシュ、キスしても?」


「いいですよ」




 僕達はお風呂でも散々深いキスをしたけど、正直僕も足りなかった。実感が欲しくて、貴方をもっと感じたい。試練があまりにも辛くて、幸せな記憶で上書きしたかった。




 珍しく僕から、何度もキスをした。


「んぅ……陛下ぁ……好きぃ……です……はぁ……」


「はぁ……アシュ……私も……好き……だ……」



 言葉を発するあいだも繋がっていたくて、絶え絶えながらに言葉を紡ぐ。






 僕達は何度も何度も、愛を囁きながら深くて長いキスをした。







 現実のキスはずっとずっと幸せで、これからはもう離れないと誓った。












 舌が痺れるほどキスをして、お互いの身体を寄せ合い、深い深ーい眠りに落ちる。







 僕は夢を見た。陛下と結婚して、子供と幸せに暮らす夢。






 これが、現実になりますように。














✦︎✧︎✧✦



 僕達は数日間、ゆっくり穏やかな日々を過ごし、陛下のドレスが完成したようで2人で見に行くことになった。





 陛下のドレス姿。僕が最初に見るんだ。





 カラカラと扉を開けると、サーラが出迎えてくれる。




「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。大変な事件に巻き込まれたようで……お2人とも、少し痩せてしまわれましたね」


「もうこれからは、こんな事が起きないといいな……犯人はわかったから、きちんと対応させてもらった」


「そ、そうなんですね……」


 何故かわからないけど、これ以上聞かない方がいいと思った。



「それならよかったです。では早速ドレスをお持ちしますので、そこで座ってお待ちください!」



 



 サーラが持ってきたのは、お願いしていた2つのドレス。どちらもとても美しく、陛下に似合うと思う。




「ほう。さすがサーラだな。早速着てみたいものだ」


「そうですね……綺麗……絶対似合います!」


「もちろん、陛下のためのドレスですから!! さあ、こちらへ! あ〜待ち遠しかったんですよ!! さあさあ陛下!!」


「はは、そんなに急かすでない。時間はたっぷりある」








 陛下はサーラに手を引かれ、奥へと入っていった。





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