第43話 関係

 サリナと庭で話した次の日、朝ご飯を食べているときだった。



「明日皇帝陛下と謁見することになった。そこでサリナとアシュ、一緒に来て欲しいんだ」


「任せてください!」


「え、僕もいいんですか?」


「当たり前だ。大事な話なんだ。そなたがいないと」


「ありがとうございます……」


「大事な話か……気をつけて行ってきてね」


「……ああ」



 陛下の兄は、皇帝陛下が苦手だと言っていた。陛下を気遣っているのがわかる。でも、陛下は……。なかなか家族って難しいんだな。








 食事が終わると、僕は僕の部屋にルカニエとカンを呼び出した。

 そろそろ話さなければいけないと思ったからだ。




「なんかこうやって話すの久しぶりじゃない?」


「そうですね。バタバタしていましたから」


「俺、災害の時アシュ様を失うかと思って……俺はまだまだだなって、もっと強くなりたいんです。だから、これからも忙しくなると思うっす」


「無理はしないでよ? もう充分強いと思うけど……カンがそう思うなら、仕方ないね」


「ありがとうございます!! もっと強くなって、あんな不甲斐ない思い、もうしないように……頑張ります!!!!」


「いつもありがとう」



 そう言って僕は、カンを抱きしめた。彼は少し震えているような気がした。





「ルカは……最近どう?」


「私はいまでもドラゴンの訓練ばかりしていますよ。楽しいですから、時間があっという間です」


「楽しいなら良かった。また会わせてね。そうだ、カンにも会わせてあげてよ?」


「そうですね……近々そうしましょう」


「まじ?! やったー!!!! やっとかよ!!!!」


「やっとかよって……ご主人様が会ってから数日ですけど」


「その数日がなげえの!!!!」


「はいはい」


「約束だかんな!!!!」


「わかりましたって」



 2人は相変わらずでよかった。2人なら、受け入れてくれるだろう。喜んでくれるかな? 僕の幸せを……応援してくれるよね?



「あのね、折り入って話……っていうか、報告があって……」


「何でしょう」


「実は……恋人が出来たんだ。誰だと思う?」


「陛下ですか?」


「え……ど、え?!?!」


「バレバレですよ」


「え?!?!?! どゆこと?!?! アシュ様と陛下が、恋人おおおおおお?!?!」


「はぁ……落ち着いてください」


「お、落ち着けるわけ!!!! そんな素振り……あったっすか?!?!」


「誰でも気付くほどですよ」


「嘘だろおおおおおお」







 カンが落ち着くまで時間がかかった。カンは恋愛に関して鈍感中の鈍感だった。僕よりずっと酷い。なんか面白いな。





「えっと……つまり……アシュ様と陛下が恋人になったって……ことっすか?!」


「ずっと言ってるでしょう全く……」



 ルカニエは頭を抱えている。


「そうなんだ……最初僕は、これは恋じゃないと思ってた。でも、恋だったんだ。それで……ずっと辛かった。陛下は男だし、僕なんて……そう思ってたんだ。だから今、夢のようで」




 陛下は、男。女だけど、2人には言えない。いつか言えるようになるから、今はごめんね。嘘をついて。




「そうだったんすか……そんな、性別なんて! あるようでないもんっすから!!」


「その励まし方合ってます?」


「うるさいな!!!! とにかく、おめでとうございます!!」


「ありがとう。ルカ……ごめんね」


「もう恋人になってしまったなら仕方ないですよ」






 ルカはかなしそうに笑った。





「ルカもきっと……恋をしたらわかると思う。きっと出逢えると思うよ?」


「私にはご主人様がいればいいので。陛下と一緒になっても、私達のことは手放さないでくださいね……離れていかないで、くださいね?」






 ルカニエは僕の手を取り、自分の頬に僕の手を当てた。




「もちろんだよ、これからもよろしくね」






 ルカニエはずっと誰かに恋をするなと、僕に言っていた。相談した時も、それは恋じゃない。勘違いだって、言い聞かせてたのかもしれない。僕が離れていくと思ったから。





 ルカニエは、かなしい人だ。誰かに依存して生きないと、苦しいのだろう。その依存先が、僕しかいないことも、かなしい。





 どうすれば、彼を救えるのだろうか。彼は恋をする気などないし、ドラゴンとずっと一緒に居ては、出逢いなんてありはいないだろうし……今までこんな闇を持つ人と関わったことがないから、どうすればいいかわからない。







 恋をして、結婚したとしても、2人とバイバイなんてするわけない。なぜそう思ってしまうのだろう。





 2人は僕にとって、家族みたいなものなのに。











 そうしてルカニエはドラゴンの元へ、カンは訓練に戻っていった。





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