第27話 陛下が嫉妬……?
「ああ、愛しの兄弟、友、弟子よ〜〜〜!!!!」
「師匠〜!!!! お久しぶりです! 会いたかった!!」
「俺もだ〜!!」
懐かしいこの胸板!!冒険から近くに来たからと寄ってくれた。ベルニのことを陛下に紹介できるのが嬉しい。
「初めまして。ソウハン・エルギール陛下。アシュがお世話になってます!」
「こちらそ。アシュが家族のように慕っている、そなたに会えるのを楽しみに待っていた」
「俺もです! 大切なアシュの上司がどんなお方か、見ておきたかったんです」
ん? なんかバチバチいってない?! 仲良くしてよ……陛下が敵意を向けるのは中々ないから戸惑ってしまう。
「と、とりあえず中に入りましょう?」
「ああ、そうだな。案内しよう」
陛下の後ろを並んで歩く。陛下に聞こえないように、ベルニに話しかける。
「ちょっと、仲良くしてくださいね?」
「もちろんだよ。仲良くしようとしてるだろ?」
そう見えないから言ってるんだけど……
「かけてくれ」
「ありがとうございます」
陛下を前にしてベルニと横に座る。それを見た陛下はまた、顔を顰めた。
「そなたはかなりの冒険家だと聞いたよ。私達は冒険する余裕がないから、話を聞かせてくれるかな?」
「もちろんです。俺は冒険家と言っても、美味しい魔物探しが趣味でして。アシュ達にも食べて欲しいと思って、渾身の肉を持ってきました」
「え、そうなの?! なんの肉?」
「フッフッフッ……ドラゴンの肉だよ!!」
「ド、ドラゴン……?! 貴重なお肉じゃないですか……」
「フフフフフ……倒すのに1ヶ月もかかってしまった」
「流石の師匠でもそんなにかかるんですね」
「俺と友達2人で倒したから余計にな」
「2人で倒そうと?! そんな危険を犯す必要があるのか?」
「わかってないですね〜陛下……高い壁こそ達成感があるんですよ〜」
「ただ食べるためにか?」
「そう! 食べるためだけにね」
「ドラゴンって鱗が厚いから、解体するのも大変ですよね?」
「そうなんだよ〜だからそれはさすがに手伝ってもらって、売り捌いてやったさ」
「高く売れそう!」
「もちろん! だから一石二鳥だな」
それから陛下は僕達の話を聞いていた。なぜずっとそばに居てくれたのかよくわからないけど、とても機嫌が悪そうだった。
それに気付いていたが、ベルニと久々に話せる嬉しさから話に夢中になってしまう。僕は恋愛とかよく分からなくて……察せない自分が嫌いだ。
ベルニとの話は相変わらずあっという間に過ぎていき、ベルニは1泊していくことになった。夕食にはベルニが持ってきてくれたドラゴンの肉を食べながら、4人で楽しく食事時間を過ごした。
いつもはルカニエやカンと一緒に寝ている僕だが、今日はベルニと一緒に寝る。
「師匠と夜を過ごすのも久々ですね。今日が終わって欲しくないです……」
「なかなか嬉しいことを言ってくれるじゃないか。そう言えばこの間訓練を受けたんだろう? どうだった?」
「僕は医療班に配属されたので、色々教えてもらいましたよ。師匠はこの国の巨大地震がきてしまったら、助けに来てくれますか?」
「もちろんだ。転送石も陛下がくれたしな」
「嬉しいです!! もっと頑張れる気がします。師匠はなんの班ですか?」
「俺は火属性だが他の魔法も得意だし、魔物の相手には慣れているから、戦闘班だ! 腕がなるぞ〜!」
「僕と同じじゃないんですね……そりゃあそうですよね」
「そうガッカリするな。カンが救護班だから顔は見れるんじゃないか?」
「そうですね。残念だけど……仕方ない」
「そう落ち込むな! 魔物退治を早く終わらせて、残りの時間は一緒にいるぞ〜! アシュの親も手伝いに来てくれるだろうしな」
「ありがとうございます! そうかもしれませんね」
(モルガ王国も災害時救援を送ることになってるんだもんね……)
僕達は今日も夜遅くまで話に没頭し、次の日の朝にベルニは再び旅へと戻って行った。
「陛下、師匠と初めて会ってどうでしたか?」
「そうだな、面白い人だと思った」
「本当に? なんだか、あまりいい雰囲気ではなかったので……」
「はあ……迷惑をかけて済まない。私がああいう態度で接するのは良くないとわかっていたんだが……なぜか腹が立って……」
「なぜ……? もしかして、嫉妬……ですか?」
「嫉妬……? 私が彼に?」
「はい。憶測ですが……陛下にとって師匠のような存在がいないから、羨ましかったのかなって」
「ん? それは絶対に違う。そんなハズないだろう」
「え? じゃあわかりません……」
「そなたがあんな笑顔を見せる相手が、私でないのが腹立たしかったのかもしれない。何故かは分からないんだ」
陛下がそんなことを考えていたなんて……自惚れてもいいかな? 彼の新たな一面を見れたようで嬉しい。ベル二といたら嫉妬してくれるんだ……そんな姿が愛らしい。陛下自身もそんな感情を持つことに戸惑ってるみたいだし、初めての感情を持ったってことだよね……?
「ん? 僕はどんな笑顔をしていたんですか?! いつも通りじゃ?」
「いやいや、あんなに楽しそうなのは初めて見たかもしれん」
「そ、そうだったんですか……そっか。僕にとって師匠は特別なんです。彼のように自由に冒険をする人って中々居ないじゃないですか。あの人が話す冒険の話は、まるで僕が一緒に冒険しているかのようで」
「確かに彼はとても話が上手くて惹き込まれるものがあるな」
「そうなんです。だからかもしれないですね」
「そうか……私もそんな話が出来たらいいのだが」
「人には人の役割があると思うんです。陛下は、僕を安心させてくれるし頼ってくれるのが嬉しいんです。それに、僕が辛い時はそばに居てくれたらなって」
「わかった。約束しよう。辛い時はお互い報告し合うんだ」
「ふふ、そうしましょう」
陛下はどんな時に辛くなるんだろう。たまに辛そうな表情をするけど、耐えられないくらい辛い時はどういう時なのだろうか。
僕の前だけ涙を見せてくれるだろうか。震える貴方をそっと抱きしめて、安心させてあげたいな。『大丈夫』って言ってあげたいな。1人で抱え込まないで欲しい。約束……絶対。
いつでも待っています。
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2章まで読んでいただき、ありがとうございます🥰
次回から3章へ突入します!!
3章から、2人のラブラブなシーンが増えてきますので、楽しみ!
と思ってくださった方は、フォローや評価よろしくお願いいたします🫶🫶
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