第2章:隠れ里で
第8話・館のフィールド
準備を終えて古びた館へと入り込む。中は一見すると外側で見たよりも複雑であり、どこからか子供の笑い声が聞こえる。
シロとキノが不安そうにリオに抱き着くが、リオは気にせずに中に入った。
ここでゲーム的のコンセプトで、お化け屋敷のような仕掛けがたくさんあるのだが、相手が悪い。
突然壁を通り抜けて現れたお化けは首を刎ねた。
ポルターガイストは全て魔法で撃ち落とす。
子供の幽霊は首を刎ねた。
最後だけまずいと思いながら、リオはずかずかと中を歩く。リオはこの手の話はリアルだと怖いなーと思うくらいで、仮想世界でお化けと言われても怖くもなんとも思わない子だった。
ついには泣いている少女幽霊を見つけて、縄を構えて近づく。
お化けの少女はビクッと震え、怯えて逃げ出したから追いかける。
出てくるモンスターは、モンスターだからと恐れず、倒すことにしている。
「バケー」
「シャー」
オバケや蜘蛛のモンスター。針によるストレートでやっつけたり、剣で叩き込んだりとここは良い場所だと思いながら、我が物顔で進んでいく。
調べられるところは調べながら、進んでいると動きの遅い、鎧が現れた。
リビングアーマーと言う種族で、斧を使うタイプのようだ。剣や槍を構えた者は全て倒した。
「斧か………」
ウチの子に欲しい。そう思い、敏捷値が低いのか、動きの遅いリビングアーマーに魔力を叩きつける。
「?」
リビングアーマーはバフを掛けられた驚きながらしばらくすると攻撃するそぶりも止めた。マーカーが緑になり、テイムすることにした。
紫と黒の鎧、兜を傾けて膝をつく。名前は『クロ』。新たなテイムモンスターだ。
「スキル【鈍足】か」
スキルに鈍足が付いていて、敏捷値がマイナス値だ。その代わり接近戦に必要なステータスは遥かに高い。レベル2か3くらいあるし、プレイヤーに近い。
とりあえずすでに持っている斧を見て、
「これ投げられる?」
投擲を教え込むことにした………
◇◆◇◆◇
お化け屋敷は騒がしい。今日も怪しい人が入り込む。
腕に蜂を付けて、錆びた武器を構えた耳長エルフ。今日も今日とて屋敷を歩く。
クモがいたら錆びた武器で突き刺したり、目玉があれば刃物を突き刺したり。
お化けが出てくれば捕まえようとしたり、捕まえたらとりあえず持ち運んだりする。お化け達は怖がった。彼女が来るのを怖がった。
だから彼女を呼ぼう、ここの主、館の主、悲しき怨霊。
彼女なら追いだしてくれるはずさ♪
◇◆◇◆◇
館の奥に来ると、ゴシックロリータの少女がいる。可愛らしく、それが物を浮かせて襲い掛かる。
「ボス戦?」
フィールドボスらしき存在、フラグを踏んだのか現れたそれは、ボス壁と呼ばれるものを展開して閉じ込めて、強制的に戦いを始めた。
「いいよ、やろうか」
グランドピアノが滑るように迫るが、それを飛び越えてすぐに少女に斬りかかった。ガキンッと音が鳴り響く。金属の剣、明らかに呪われてますと言う黒い剣が彼女を守る。
彼女は泣いていた。無表情で涙をぽろぽろ流している。
「やりにくい、武器壊そう」
そう呟き、クロの方を見る。ピアノを受け止めて、ダメージを軽減している。
「キノはクロに回復、クロはキノを守って!」
お互い頷きあい、リオはその瞬間、速攻した。
カンカンカカンカンカカカン………
ただ連続で呪われた剣を集中的に攻撃した。
その時に気づいたが、どうもパリィしている扱いで防いでいるらしい。なら耐久値が削れているはずだ。パリィはダメージ量を耐久値で受け止めているからだ。
何度も何度も叩き込む。こちらの耐久値が尽きそうになると、別の錆びた武器を取り出して対処する。
壊れた物も出てきた。だけど錆びた武器の数だけは多い。
少女は驚きながら、口をぱくぱく動かす。声無き声でなにか言っている。
た す け て。
「いよっしゃ、お姉ちゃんに任せなさい」
蝋燭の火、シャンデリア、本棚や本が流れ込む。リオは全て躱した。全て撃ち落とした。全て切り捨てた。
そして徹底的に呪われた剣だけを壊す。なぜかって、下心がある。
(この子テイムできないかな?可愛いし、武器だけ壊したらなるかな?)
次はピアノなど壊す。そのつもりでまず剣を壊す。
それが、この館のユニーク条件を満たしていると気づかず、リオは呪われた剣を破壊して悲鳴が響き渡る。
男の悲鳴だ、甲高い悲鳴で剣にヒビに入る。リオはそれを、
「うるさい」
そう言ってトドメを刺した。
『ワールドアナウンス、ワールドアナウンス!』
『プレイヤーリオは呪われた館フィールドのボスを単独撃破に成功しました』
≪初回報酬として【小さな箱庭】。初回単独撃破報酬でシルキーを手に入れました≫
≪スキル【武器壊し】を習得しました≫
≪スキル【部位破壊】を習得しました≫
鳴り響く音と共に、ほへと首を傾げるリオは、とりあえず女の子に近づく。ばたりと倒れ込み、青マーカーだからとりあえず目覚めるのを待つかと決めた。
妹はうへっ!?と驚き、他のプレイヤーも驚く中、リオは少女を膝枕しながら館のボス部屋で時間を潰す。
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