第26話・神の言葉

 協力関係になったが、基本リオは一人で勝手に行動してもいいらしい。なにかあったり、一人で攻略が無理なら連絡して一緒にしましょう程度。


 お金も情報屋から受け取り、大金だけ貯まる貯まる。


 田舎町と王都でオリジナルレシピ使用料を受け取り、お金だけが貯まり始めていた。


「砂漠に行く準備できたし、砂漠の方角に行くか」


 そう決めたリオは準備していると、公式ページでPVが流れたらしい。それを見てみると、イベント解禁プレイヤーPV動画と言うのがあった。


 それを見てみると………


 ◇◆◇◆◇


 統一された装備に身を包む三名と、頭の先から足の先まで統一感が無い装備を着込む男が一人の女性と共に神殿の奥を進む。


「それでは皆さん、この先にいらっしゃる方は私に聖女の称号を与えてくれたお方です。くれぐれもご無礼の無いように」


「「「「分かりました『シンシア』様」」」」


 一人だけ奇抜な恰好だが統一された意思を感じる。そうして奥へと来ると、ステンノガラスに照らされた玉座と、二人の少女と騎士団がいた。


「あらシンシア。あなたが最後だなんて、ゆっくりねえ」


「『カトリーヌ』様、お久しぶりです」


「やめて、あなたみたいな貧乏人に話しかけられても困るのよね」


「なに」


 統一された鎧をまとう、一人の女性騎士が前に出ようとして、統一されていない男が止める。


「ふん、飼い犬くらいちゃんと躾けてなさいよ。あーあ、あなたもなんか言ったら『アニエス』?」


「別に」


 一人の少女は無機質で無表情、帽子を外して佇む姿は氷像のように美しい。豪華な衣装で金の細工や宝石を纏うカトリーヌはふんッとつまらなそうに鼻で笑う。


 傍に仕える者達は一定の範囲にとどまり、玉座の傍に三人は待つ。


 そして杖を床に叩く音を響かせながら、奥から一人の少女が現れた。


「息災か三聖女」


 その言葉だけでいがみ合っていた三人はすぐに膝をつき、首を垂れた。


 現れたのは10にも満たない小さな少女。大きな服を着込み、杖や服だけ立派な物。そう思いながら様子からしてなにか違う。


 神聖なオーラを放ちながら、玉座に座り、眠そうな顔のまま三人を見る。髪は長く、地に着くほど長い金の髪。


「三聖女が一人、武国キングダムのカトリーヌここに」


「三聖女が一人、王都のシンシアここに」


「三聖女が一人、世界樹セフィロトのアニエスここに」


「あーうん、仲が悪いのは仕方ないから咎めないけど、大事な話の最中はやめてね」


 それに三人がはっと言い放ち、後ろを見る。即座に動けた者達はすでにひざを折っている。


「シンシア、異世界から来た旅人を連れてきたのか?」


「はっ、彼らは無償で私の手足となり、共に国の発展のために身を捧げる者達。我が使命にご協力を頼むため、彼らにも同席をお願いした所存です」


「うん、手が足りないのはまずいね。正直具体性のないこと頼む気だから、彼らにも一通り説明して手を貸してもらうから。そうだね………そこの装備が統一してないもの、君、聖女の傍まで私の話聞いて」


「勿体なきお言葉、感謝の極み」


 そう言い、すぐに移動する。他の聖女の連れや仲間のはずの者が憎々しげに睨んだが、男はどこ行く風であり、三歩ほど後ろで対ししてひざを折る。


「奇抜の割にまじめだね」


 そう言ってあくびをしてから、説明に入る。


「私は『黄道十三星座』に座る神の一柱、乙女座スピカ。まずは初めまして」


「なんと、偉大なお方と思いましたが、神の一人とは」


「と言っても、回復と浄化と結界しか使えないんだよね。アンデッドでも無ければ君にも負ける。力が無いから中立に就いた神さ」


 いまは聖女を生み出し、各国に派遣して世界を安定させる仕事をしている。そう告げてから、さてとと呟く。まずはどこから説明するか、そう呟いた。


 ◇◆◇◆◇


 昔々のお話、太古の昔、世界には多くの種族と魔物が存在した。


 それだけならなにも問題は、まあまああったけど、神には関係ない話だった。いつからか神がしゃしゃり出るまではね。


 人、人間こそ世界最高の種族であると考える国に、魚座と牡牛座が名乗りだし、力を貸し始めた。


 人こそ世界を害する種族だと、蟹座と獅子座が吠えた。


 そして世界から禍々しい種族として淘汰されていた魔族に、山羊座、双子座、蛇使い座、蠍座が覇を唱えた。


 天秤座、水瓶座、乙女座、射手座、牡羊座は中立を宣言して戦いを見守っていたのだが、問題は起きた。


 神々の戦争に巻き込まれ、中立の者達が狙われた。正確には力を狙われたんだ。


 天秤座は勢力を維持するために交戦に入り、射手座と共に戦乱に加わった。


 水瓶座は魔族の手に落ち、どこかへと連れてかれた。


 牡羊座は傷つき、獅子座に食われた。


 乙女座は全体に協力することで不眠で働いている。


「とまあ、この世界の現状平和そうに見えて、少しのことで傾く状態なんだ」


「そんな世界とは」


「まあ、創造なる神からしたらどうでもいい話さ。君らは気にせず。好きにするといいよ。どこの勢力に組みしても構わない」


「我が心はシンシア様と無辜なる者達の為にあります故」


「そう? まあいいや」


 そして本題と言って、彼女は語る。


「先日、水瓶座の力を感じた。おそらく、何者かが水瓶座の力を解き放ったんだろう。誰かか分からないが、水瓶座の力は解放した。故にこのバランスはもうじき壊れる。誰かが魔に属した星と戦い、その結果水瓶座が完全に落ちるか、救出されるかで変わる」


「それは」


「水瓶座は一度殺されている。と言っても神だ、次の器が作られ、その場で蘇るが、そこを割り込まれた。魔の星の誰かは分からないが、器だけ盗られ、力は逃がしたらしい。傀儡になることは無かったが、水瓶は復活することはできず、身動きができない状態なんだ。誰でも良いから助けてくれないかい?」


 その言葉に三聖女は御意と言った。


「言っておくが、抜け駆けしようとして他の足を引っ張るのは無しだ。水瓶座が魔の星に就くのも、人や亜人の星に就くのもダメだからね。中立の星に戻してほしい。だからこそ、喧嘩はするな。それ以外はお前達のできる範囲なら許す。できる限りのことをするように」


 それに返事をして、地面に降り立つ乙女座。


「では私はまた世界の浄化に戻る。心してかかるように」


 動画はそこで終わり、私は考える。


 水瓶ってこれのことですよね?


 なるほどなるほど、お姉ちゃん頑張るからねスピカちゃん。


 こうしてやることを決めて、砂漠を目指した。

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