第15話・初回イベント:猛攻

 火の手が上がり、キノコの妖精達は錬金術師に守られていた。結界装置を使い、ゴブリンの群れから身を守るが、緊迫した状態は続いていた。


「誰か助けて」


 そう誰かが呟いたとき、紅蓮の炎が舞い上がり、ゴブリンの群れを飲み込む。


「それじゃお姉ちゃん」


「片付けようか」


 二人の剣士が生き残った群れを片付けて、クロが投げ斧で撃破する。


 他にもプレイヤーが付いてきた。大急ぎで移動し出したため、意味もなく付いてきたことにして、他のプレイヤーが隠れ里に流れ込む。


 壊れた建物がある中で、隠れ里の住人は守られたようだ。


「大丈夫ですか村長」


「助かりました。いやはや、やはり外の人を呼び込んでいればよかった」


 そう言い、プレイヤー達に発見されてこの後はどうするか、田舎町の人と相談して決めるようだ。


 ゴブリンの群れは多数にいて、これを撃破するのが基本らしい。


「リーダー、他の奴がここを拠点にされても困るから、防衛ラインの一つにしたいらしいぜ」


「ウチからもそうした方が良いですね。広範囲魔法が撃てるので、私が担当します」


「私はどうしよう」


「一緒にこの周りに出るゴブリン部隊退治しようよ。本隊らしきところもあるらしいし、そっちは田舎町にとどまる人に譲って」


「そうね、そうだ。クリームと箱庭置くから、キノや料理スキル持ちには料理作ってもらおう。コンロとか無いけど多少は作れるから」


「お願いしても良いですか?」


「ご飯の準備ありがたいです」


「キノを置いていくから、クリスも参加しようか戦闘」


 こうして腕にシロとクリスを付けて、ゴブリン討伐を始めるのであった。


 ◇◆◇◆◇


 各地でゴブリンの討伐が始まった。


「キルスコア稼ぐぞ!」


「応ッ!」


 あるクランはキルポイントを稼ぐためにゴブリン本隊に突撃を始めた。


「まだ別部隊らしきゴブリンが接近、今度は魔物の群れ付き!」


「いいですよー私の広範囲魔法の的ですねえ」


 隠れ里に陣を張り、ゴブリンやそれに追い立てられる群れを撃破し出すもの。


「回復薬が足りません!回復薬を作れる方はいませんか!?」


「はーい」


「生産職はここで活躍するしかないね」


「あっ、なら材料投げてくから回復薬頼んでいいですか?」


「良いですよ」


 とあるところでプレイヤー同士が協力し出して、ゴブリンを退治している。


 そして………


「一匹♪二匹♪三匹目はウルフで次ゴブリン」


 硬化した糸は槍のように放たれ、肩を射抜かれたゴブリンに畳みかけるように片手剣を振るう狐獣人。


 闇と無の魔法を交互に使い、糸と針を使う。


「【ダークチェーン】」


 空中に鎖を出して、片腕に巻いて振り子のように自在に動く。飛んだり跳ねたりしながら敵を打つ。


 助かったゴブリンは投げナイフや斧の的になり、風魔法がトドメを刺す。


「ヒスイちゃんとクロ君強いねえお姉ちゃん」


「うん、クロは魔法攻撃できないけど、それ以外は十分育ってるよ」


「今度館の情報教えて、たぶん公開した方がいいから」


「分かった」


 交差する。死神がのんきに鼻歌を歌いながら、首を刎ね、急所を貫き、トドメを刺す。


 牛の魔物が突撃してくるのをジャンプ力で頭上を取り、的確に急所を貫き、首を刎ねた。


「いまのは見たことないな。即死よくできたな」


「急所の中にはデッドポイントっていう、ある程度の攻撃力があれば即死にさせられるポイントがあるんだよお。そこばかり攻撃すると【死神】って称号が手に入るよ」


「そうなんだ、牛さんは喉元がデッドポイントみたいだね」


「そうなの、しかも切り落とせるほどのスピードと重さが無いとダメっぽいね」


 そう言いながら、同じ牛はデッドポイントを貫き、一撃で片づける二人。


「この子達見たことあるう?」


「無いなー王都周辺より先かもー」


 そう言いながらとりあえずゴブリンごと倒している。クロはゴブリンを一撃で倒すところから、ゴブリンのデッドポイントを見つけたらしい。


 ヒスイが敏捷を上げる魔法を使い、速くなったクロは斧で叩き割っていく。


 とりあえず苦戦はしなさそうであった。


 ◇◆◇◆◇


 メールが来たので、田舎町に戻る一同。大変な状態になっている。


 新種モンスターの大群とゴブリンの本隊が迫る中、田舎町のプレイヤーは疲労と言うより、もう集中力が切れてきた。


 理由? 理由はただ一つ………


「回復薬まずい!」


「そろそろ飲みたくない………」


「ぐえぇぇぇ、そっちは無味だからいいだろ!マナポはくそまじいんだよ!」


「限界、口直ししたい………」


「ありゃりゃ」


 セツナは呆れながら、ハルルンは真剣な顔ではっきり言う。


「リオさん、ミルクやドリンク系統の飲み物は他にもありますか? 口直し、空腹値回復しないと、攻め負けそうです」


「そっちで?」


「そっちでです。新種モンスターが現れて、喜々として狩ってるのがいまのモチベーションですね。ですが空腹値の所為で、下がりだしました」


「お肉なら【スノーバッファロー】っていう牛から取ったから、ステーキかな? タレの準備しながら作るか」


「助かります!」


 こうして冒険者ギルドのキッチンを借りて、簡単なステーキを作り出すのだが、肉のうま味が良い。


「鑑定」


 鑑定した結果、新鮮なうちなら生でも食べられ、少しの熱でうまくなるとのこと。


 ステーキとその肉汁でタレを作る。味噌豆の醤油から作り出された醤油が、熱でよりうまい匂いをギルド中に漂わせた。


「えっ?なに、料理?」


「うまそ………」


「売ってくれないかな?」


「皆さん、クラン『焔の魔導団』のクランリーダーです。食材アイテムの提供を受け付けています。調理はこちらがするので、ご飯食べて町を守りましょう」


「マジか!?食って良いの!」


「ステーキか………お酒が欲しいけど、さすがに泥酔があるから無理か」


「けど、腹減ったところだから」


「俺、リアルで食ってきたけど、リアルより豪華」


「食べたいです!」


 こうしてプレイヤーのモチベーションは回復し出した。

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