第17話・初回イベント:終わり

 ギガントタイラントアリゲーター。現れたボスの反応は魔法を感知すると遠距離攻撃で炎の玉を吐き出す。連発可能。


 かなり勢いがあるから、敏捷値の低い前衛が盾をしていると突破される。


 攻撃力、魔法力も高く、防御力も高い。


 並みの魔法攻撃ではダメージは微々たるもの。


 そんな中、攻撃の手を緩めない姉妹がいた。


「クロは投げ斧で攻撃、キノは回復。ヒスイは詠唱の早い魔法攻撃」


「お姉ちゃん合わせて」


 姉妹でのノックバック攻撃にまた吹き飛ぶワニ。これのおかげで町へと向かうワニは止められていた。


 だがHPはなかなか削れず、クリティカル判定で攻撃することにしたリオ。


「そりゃそりゃそりゃそりゃ」


 的確にポイントを狙い、ちまちまとダメージを重ねていく。


 セツナも見習い、ちまちまダメージを稼いでいる。


「ハルルンが来た。お姉ちゃん、炎の玉を吐き出させないで1分保てる?」


「やってみよう」


 こうしてハルルンの前に大盾を持つ者が現れ、ハルルンが詠唱。それに気づき、半身を上げて、炎の塊を放つ準備をする。


 まず一陣、セツナの槍のような一撃がノックバックとなり吹き飛ばす。


 地面に張り付くように踏ん張り、少し邪魔ができた。あと50秒。


 次にリオが同じように攻撃した。これであと40秒。


「ウォーターランス!」


 ノックバック系の魔法が一斉に放たれ、体勢を崩す。20秒。


「ハルルン!」


 詠唱短縮、魔法強化、魔法収集。これらのスキルを使い、あと20秒。


 セツナが少ないスキルだけで突撃したが、それだけではびくともしない。


「くっ」


「魔力暴走」


 その瞬間、リオが真っ赤に光った。魔法陣が現れ、それが暴走しているように回転していた。


 詠唱短縮、魔力収束、詠唱破棄、魔法強化。


 これらのスキルを同時使用して無属性魔法を放つ。


 使えたのは、エナジーショック。接近魔法であり、魔法の波動で敵を吹き飛ばす高威力魔法。


 妹に続くように放たれたそれは、片足を浮かせるほどの威力を持っていた。


「よし」


「うっそぉぉぉぉぉッ!?」


 妹が驚き、声を上げながら、すぐにその場から離れた。


「散れ【エクスプロージョン・イグニス】!!」


 それが矢のように放たれ、ワニを叩き燃やす。


 爆発だけで吹き飛び、炎がワニを包み込んだ。


 それが最後のトドメであり、炎と共にポリゴンになり、消えていった。


≪ワールドアナウンス!ワールドアナウンス!≫


≪たったいまプレイヤーハルルン並びプレイヤーにより、スタンピードの原因が撃破されました≫


≪それに伴い、スタンピードは終息。イベントはプレイヤーの勝利で終わりました!≫


 こうしてプレイヤー達は勝どきを上げ、イベントは終わりを告げた。


 ◇◆◇◆◇


「すいません、魔力暴走の情報ください!」


 ハルルンは土下座を決めて、リオに頼み込んだ。リオは自分の持つ武器がスキル持ちで、それのおかげだから無理と伝えて落ち込んだ。


「魔力暴走は珍しいんですか?」


「一応、日に三回しか使用できないけど、魔法威力を倍にするからね。マジックアタッカーは欲しいスキルなんだけど、レアスキルアイテムでないと習得できないんだ」


「アクセサリーなら借りられたのに!」


 ちなみにリオは入手先も話してもらい、情報屋レベルだから落ち込んだ。


「錆びた武器が強化対象なのは初耳ですね」


「錆びた武器にもレア物があるってことかな?」


「これは情報屋に高く売りましょう。喜んで買い取ってもらえますから、お金が入ります。ご紹介すれば手数料で私達に取られなくて済みますが」


「よく分からないし、ハルルンちゃんにはゲーム機貸してくれたお礼があるから」


 そういう話をして、後日、もろもろの情報料をいただき、半分はリオに渡すことになる。


「結構な額にしてもらう予定ですので楽しみにしてください。けど、半分はクランに収めていいんですか?6:3でもいいですよ?」


「いいよ、一人だけだし、装備は自分とクリームが用意してくれるから。その代わりクラン系でお願いしたいことはお願いするし、セツナを借りますし」


「錬金術師は三桁、館情報は早めに解禁だからそんなに期待できないし、さっきの情報は二桁くらいかな? 合計でだいたい100万くらいになりますよ?」


「ソロだと十分の大金だよ」


「むーなら勧誘とかが来たら、ウチの名前を使ってください。ウチと協力関係だからとかいえば、クラン勧誘を避けられるかも」


「それはいいね。料理提供で顔を覚えられてるから、この後に引き抜きとかやられそうだし」


「しばらくはいろんなところ出歩くか」


「レベルはどうなの?」


「私は10に入って、10になった剣術、調教が中級になったよ。パリィも称号とアーツが手に入った」


 剣術などの初級スキルはレベル10になるとMAXになり、【中級剣術】を自動的に習得する。


 パリィについては未情報。情報屋に売るかというが、売らなくてもいいと判断された。


 キノ、シロ、クロはレベル9になり、ヒスイ、クリームは4レベル。クリスは前線で張り付いてたから進化可能。


 進化先はスピリットスパイダーとテラースパイダー、アミュレットスパイダーの三種だ。


 スピリットスパイダーは基本進化、条件はレベル5になること。


 テラースパイダーは裁縫などを覚える。クリームの仕事を手伝ったからかな?


 アミュレットスパイダーは錬金術を覚えて、加速と魔力収束などを覚える。魔法は無魔法。


 条件は主が無魔法を覚えていることだそうだ。この子の方がステータスが高く、プレイヤーが装備を外せばと言うくらいに育っている。


 進化先は当然アミュレットスパイダーであり、私の腕に張り付くと籠手のようになる。硬化を自身に使えるから、盾として使えるかもしれない。腕に張り付いていると装飾品みたいに見える。


 こうしてイベントが終わり、ひと時の平穏を過ごすのであった。

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