運営1

 それはとあるスタッフルーム。


「うーん………」


 腕を組み、これはどうするべきか判断に迷い、主任に報告だけはするかと席を立つことにした。


「主任、少し良いですか?」


「なんだ?問題が起きたか」


「少し」


 主任の前にあるモニターを操作して、一人のプレイヤー。リオを映して、細かく話し合うことにした。


「このプレイヤーは、リアルチートか」


「はい、漫画の中だけと思ってましたが、リアルに動きがチート過ぎるプレイヤーの一人です」


 すでにリオがチートを使っていないかの確認は全て確認済みである。ハードもこちらが配った物であり、入手手段もβから受け取っただけ。むしろそれでチート行為ができるはずがないと、技術スタッフが言っていた。


「パリィの反応と、上げたステータスによるゴリ押しの戦法。それとこちらの動きをいち早く察知する感覚。なんでこんなプレイヤーがゴロゴロいるんだこのゲーム?」


「さあ? 喜んでいいのやら、悲しんでいいのやら判断に困りますね」


 彼女の他にも、動きがチートなプレイヤーがいる。そう言ったプレイヤーや報告が来たプレイヤーはすでにチェック済み。ほぼ全員が普通にゲームしているだけと報告が来ていた。


「後は、こちらのこと知ってないよな? 白夜幼体やキノコの妖精とか、こんな早く見つかる仕組みではないぞ」


「それも偶然としか。確認しましたがゲーム関係者はいませんでした。よくてβの子だけです」


「白夜はなあ、初期の場所じゃ高値で売れるアイテムで、ほとんど売るか、食べたかのどちらかなのに、タダで川に返して、白刻迷宮に行く鍵の鱗を手に入れているし、シロハナミツバチをゲットしてる」


「七大美食のうち、魚料理は順番次第では、確保した分はすべて使用可能。デザートルートは開拓されそうです」


「他にも魔法ルートと、聖女ルート開拓した奴もいるから、それはまあいい。なんか想定外で聖女騎士団ルートを独自に作られているしな」


 それでと話の本題を聞くと、難しい顔で静かに答える。


「リオが星座ルート水瓶座を引き当てました」


「………まあ、白夜ルートと接触させてたからあり得るか」


 溜息を吐き、少しだけ憂鬱になる。


「リオの性格だから、ノーヒントで水瓶を欲したのか?」


「はい、パラサイトスコーピオンの素材や他の賞品を放棄した場合に手に入る水瓶を確保しました」


「となると、捕まっている水瓶を助けるフラグは立てたか。これは下手するとドリンクも確保するな」


「魚、ドリンクを確保すると、肉を確保するルートも開拓されます」


「そもそもリオはハイエルフか、種族の中で肉を手に入れやすい種族じゃん。しばらく監視して先読みするしかないか。リオ単体で水瓶座を助けられるか?」


「それはその………」


 正直な話、可能性はある。


 あれをあーして、なるべく戦わずに、なるべく多くの敵を倒しながら進めばあるいはという話。


「機械の予測は?」


「50ほど可能とだけ。一応乙女座が動き出したので、彼女達と協力すれば確実にクリアできます」


「したくはないが、ソロ用のデータで相手取る可能性を考えるか。誰だよ、最初一人だけならなめてかかるようにしたの。初期から全力に対峙すればリオに負ける可能性は無いだろうに」


「そういうキャラですからねえ」


 とりあえず今回のフラグで動くNPCの関係者をリストアップして、プレイヤーのルート開拓にも目を光らせることにする。砂漠地帯は色々置いてある。


「できればリオが遺跡に寄り道して、聖女ルートとかのプレイヤーと合流して攻め込んで欲しいが」


「無理ですね。こうなるとボスの力手に入れるルートも覚悟しないと」


「少し早いよリオさん。料理もまだしばらく保存食食わせて、ポーションもまずい味のままのはずなのに、錬金と料理のレベル上げるから、解放されちまった」


「クレームが酷かったから、いいんじゃないですかそこは?」


「後はシルキーか、戦闘に無理して連れてないから低いが、このまま上がれば高性能スキル付き装備が量産されるか」


「はあ、そこはまだ先にして欲しいですね。まだ魔力暴走などのスキルだけにとどめて欲しいですから」


「ドリンク開拓されたら高性能装備は量産されるな。できれば誰かと組んで、水瓶座は別のプレイヤーとこに行って欲しい」


 頭を痛めながら、それでもまだ想定内の話だ。


 リオが単独で進むことを想定した結果を話し合い、ゲームバランスを整えるため、どこをどう調整するか話し合う。


 感謝するところは、いまのところマナー違反するプレイヤーは少ないところか。


「あと祈ることは?」


「リオが貴族とコネクションを結ばないことですね。貴族がリオもといシルキーを服飾ギルドに入れたら、装備品を大量に作られますし」


「その可能性もあるのか………まあそのルートは低いと出てるし、つながりも無いから問題ないか。王都で店を出してたら分からなかったが」


「出してたら貴族キャラクターの誰かに見つかってましたからね。スルーしてくれて助かりました」


「それじゃ、会議は水瓶座ルート解放とリオを始めとしたプレイヤー達の動向だな」


「はい。リオさん、ドリンク手に入れますかね? ドリンク手に入れたらスープももれなく解放されますし」


「祈るしかないだろう。あとは最悪そうなったら調整できるように準備する。それが運営の悪あがきだ」


 そう言い、彼らは彼らの仕事に戻るのであった。

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