第44話・襲来するもの
水による恩恵がオアシス都市を中心に広まる頃、とある一団がオアシス都市へと尋ねてきた。
『ワールドアナウンス ワールドストーリーが始まります。オアシス都市周辺の動画撮影を開始するので、準備に入ってください』
「なんだと!?」
「何が始まる?」
「ウインドウが出たけど、これNOを押したらどうなるの?」
「採用された動画に映る自分の姿が無難なキャラクターに差し替えられたり、消えてなくなったりする。俺はYES押しておくぜ」
一通りの準備が終わると、巨大な蟹の兵団が現れ、オアシス都市へと向かう。
「使者が来たぞ。中に入れろ」
衛兵が入れるのは、巨大な鎧姿の大男。赤い甲冑にハサミのような刃を腰に差し、武人と言う雰囲気の男が中に入る。
「あれはだれ?」
「亜の星座の蟹座だ」
「軍神レギオンと言われたキャンサーだ」
案内されるままに奥へと通され、水瓶座アクアと乙女座スピカがいる玉座の間へとたどり着く。
三人の聖女、リオ、そしてテイムモンスターや乙女座に強力するプレイヤーがいる中、蟹座は静かに中央に着て………
「臭い」
そう言い放つ。
「君は相変わらずだね、蟹座」
「人間臭い。なんだここは?せっかくの涼し気な風が台無しだ。いますぐ人間を立ち入り禁止にするべきだぞ水瓶座」
「やめよ蟹座。私がいる前で戦闘行為をするのなら、協定を破ると同意だぞ」
「安心しろ、我からは戦闘はせぬ乙女座」
そう言い、静かに水瓶座を見る。
「まずは水瓶座、魔の星座より救出されてよかった。無事で何より」
「それはどうも」
「我らも助けたかったが、奴ら魔は多く、うじ虫の如くいるために見つけ出せなかった。人や射手と天秤のこともある。許せ」
「ごたくは良い、本題を言ってくれないか?」
「汝を救出したハイエルフと共に、我ら亜の星座に協力せよ水瓶座」
それに乙女座はため息とともに首を振り、水瓶座は表情を変えず問い返す。
「なぜ私がそんなことをしなければいけない」
「人間なぞゴミ虫のごとく湧き出る害悪。我らが保護するドワーフやエルフ、獣人を道具としか見ない者どもを根絶やしにしなければ星が滅ぶ」
「君たちの戦争ごっこに手を貸すつもりはない」
「否ッ!ごっこなのではない!戦争そのものだ!」
その言葉に水瓶座は疲れた顔をする乙女座を見る。
「まさか彼方の月日が経つのに、いまだにそんなことを言っているのか皆」
「ああ、射手と天秤も中立と言いつつ、戦闘に参加。独自の戦線を作り、誰も浄化はしない」
「乙女座が何もしない代わりにしているだろう。それで十分だ!」
その言葉に回りのプレイヤーは嫌な顔をする。正直、スピカはヤンデレ少女と言わんばかりに、眼の下にクマができて、疲れた美少女であったが、いまではしっかり休み、可愛いとはっきり言える少女になった。
そんな子にまた仕事を押し付ける気かと、意見を向けるが無視される。
「水瓶座、そして蠍座の力があれば、戦線はすぐに覆る。我らに就け!」
「お断りします」
それはリオが答えた。
「ハイエルフ………なぜそんなことを言う? いくらハイエルフの身体をもらっただけとはいえ、同胞がないがしろにされているのだぞ!?」
「確かに人を優先して、他の種族を迫害する人は聞きますが、反対にあなたたちも同じことをしているでしょ?」
「否!否ッ!我らのは正しい行いである!」
「いいえ、同じことです。お姉ちゃんは差別は嫌いです。そしてなにより、それを理由にスピカちゃんに浄化の仕事を押し付けるのも間違っています」
「浄化の力を使えば、奴らに隙を見せる!仕方のないこと!」
「仕方ないでスピカちゃんをあんなに消耗させたんですね………」
顔色を変えず、まるで映画を見るように見つめているが、何かすれば戦闘が始まる雰囲気になる。武人である蟹座は武器に手を置き、乙女座は杖を地面に叩きつける。
「蟹座?」
「仕掛けられれば仕方あるまい!」
「ならばその場合、私も戦いに参加する。私の敵になるということの意味は、さすがに分かるか?」
「くっ………」
「悪いが、私はリオの意見に賛成でね。蠍座の力を持つ子クロも同じだ。水瓶座と蠍座は、乙女座に協力し、他勢力の下には就かないと宣言する」
「………人や中立、魔と組まぬと」
「それは約束しよう」
「………あい分かった」
そのまま帰路へと向かう蟹座に、リオは問いかける。
「獅子座さんにお話があるんですけど、どこにいますか?」
「………知らん。牡羊座を食らい、調子が悪いのだ」
そう言って、そのまま帰っていく。
リオはその後、インベントリから塩を出して撒き、乙女座はため息をついた。
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