第38話・第二イベント:五日目なのに

 翌日、ログインして早速戦闘メンバーで遺跡に入るに、まずは列に並ばないといけないらしい。


 どうもプレイヤー別にされているから、少しすると中に入れるとのこと。出る時は傍にある魔法陣から出てくるから、外に戻ったらすぐに離れるよう注意されている。


 中に入ると機械系のモンスターが出てくるが、問題なく退治できる。後は隠し部屋とかを逃さないように、注意深く探索するしかない。


 そうして探していると、巨大なロボットゴーレムとのバトル。まあ問題は無かった。


「パリィパリィ、魔法、攻撃攻撃!」


 なるべくクロ達に戦わせてみる。私だけでもいいかもしれないけど、パーティで来てるんだから、みんなで戦わないと。


 倒し切ると、最後の星座が出てきて、戻りの魔法陣が出てくるが、んーと………


「らしんばんだから、どこに行くか分かるかな?」


 水瓶のように道を示してくれる可能性があり、私は使用してみた。


 そのコマンドがあったのか、らしんばんの星座はまっすぐ魔法陣の後ろを指して、扉が明けられた。


「やったね」


 みんなで奥の道へと進み、潮の香がする。海の音を聞きながら、そこに出た。


「船?」


 巨大な船があり、港と言う雰囲気の大きな部屋に出た。


「ようこそ冒険者。秘密の工房へ」


 そこに白衣を着た少女がそこにいた。


 ◇◆◇◆◇


 奥の部屋に入るリオ達。部屋の中は寝るためなのかカプセルがあり、ボトルシップが飾られた部屋があった。


 少女は椅子を用意して、ここについての説明を始めた。


 ここは星座の争いにより作られた、浮遊都市であった。あったというのは、すでにここは星座の争いで不要と扱われているからだ。


「ここは本来、中立である星座達が地上を守るために設計した場所。ですがもはや中立と呼べるのは乙女座のみ。その乙女座も立場を守るため、瘴気を浄化するシステムとしてしか機能していません」


「なるほど、ここは中立以外での意図で使われたくないという人がいたと?」


「あなたは話が早いですね。ええ、ここを運営していた人族は、どこの立場にも収まりたくなかったんです。せいぜい乙女座を保護するくらいですが、浄化作業は聖女クラスの者でないと意味が無い。ここは存在する理由を失ったのです」


 それから海中に沈み、時々浮上するを繰り返す程度の島となり、星座達の争いを見守っていたらしい。


 リオはそうなんですかと考え込み、少女はここを管理する管理アンドロイドと説明する。


「さてと、星座のコアを揃えていただきありがとうございます。と言っても、それはわざとばらばらにしたんですけどね」


「どうしてですか?」


「それを持つ者がここの支配者になるからです。もうここを戦地に利用したくないのですよ」


 海の中に沈む時、ここはバリアによって守られている。海中で過ごすのが嫌なら、自力で別の大陸へと出てってもらう。そんな繰り返しの中にある。そう少女は言う。


「ですから、それを渡してもらえないでしょうか? かわりに、ここにある物は何でも一つ、持って行っても構いません」


 そう言われて、リストメニューが目の前に現れる。それにおおーとリオは驚き、少女は微笑む。


「さあ、好きな物を持って行ってください」


 そういわれ、リオは即答する。


「あなたが良いです」


 それにアンドロイドは首を振り、やれやれという顔をする。


「私はここの管理人なので、離れるわけにはいきません。島に残る者達、動植物を守る義務があります」


「そうですか」


 そしてリオはメニューに載ったリストを見て、今度は部屋の中を見て告げる。


「ならそれが欲しい」


「………………」


 それに表情をコロコロ変えていたアンドロイドは固まり、静かになぜ?と呟く。


「………気になるところはいくつかありました」


 リオが指さすボトルシップ。先ほどから波に乗って進んでいる。そういう作りの物かと言えば終わりだが、気になることがいくつかある。


「少し疑問に思ったのは昨日です。この島って、移動していないかなと思いました」


 そしてそのボトルシップは移動しているように見える。大きさと形が島と一致する。


「それは、この島が【欲しい】ということですか?」


「はい」


 にこにこ微笑むリオに対して、かすかに金属音を鳴らすアンドロイド。アリスとクロが立ち上がる。


「ここは平和を守る場所です。争いへ出向く戦艦ではありません」


「はい、ですから私は、この船を戦闘で使うことはしません」


 それにアンドロイドはは?と、本気で疑問に思い、尋ねた。


「あなたは船の秘密を知っていますか?」


「いいえ、私はあなたと島の住人が欲しいから欲しているだけです」


 それにますます理解できない人間を見る目をするアンドロイド。アリスはおねえちゃんはこういう人だとアドバイスする。考えるまで無駄だ。


「私はお姉ちゃんです。戦いたくないならそれでいいです。ですけど、私は乙女座の人と接触したら、水瓶座の仲間、蠍座の力の簒奪者として、彼女の味方になろうと思います」


「!?!」


 そりに困惑するアンドロイドに、にこにこ微笑むリオ。


「やっと表情が崩れましたね♪その方が可愛いですよ♪」


 訳が分からないという顔をするアンドロイドは、最後に一つ聞く。


「本当に乙女座の味方をするんですか」


「ええ、なんだって私は、お姉ちゃんですから」


 こうしてイベントを更新する。運営は速攻で、力技で、最短で攻略されて悲鳴を上げて、アンドロイドは理解できずに苦しむのであった。

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