第22話・氷の中

 気が付くと氷の洞窟にいた。壁や床に氷が張られていて、滑りそうだなと思いながら立ち上がる。


 所々ヒビが入っているからか、滑ることは無く、全員いることを確認する。


 時々水が入ってきて、フィールドマップは???となっていた。


「魚に飲まれたんだよね?」


「キノ~」


 キノとシロがくっつき、クリスは無言。クロは辺りを警戒して、クーは震えながらも武器を構える。


「んーこのままってわけでも、死に戻りってわけでもないか。歩くしかないか」


 とりあえず歩くことにした。


 出てくるモンスターはミミズや植物系、虫系のモンスターが多い。魚もいるが、空を泳ぐモンスターだ。


 出口が分からない。そもそもどこから入ったか分からない。セーフエリアはあったが、出口がどちらの方角か分からない。


 時々天地がひっくり返る状態になる時もあるし、なんだこのダンジョン?


「地響きしたら気を付けないと、気を付けて進むよ」


 全員に注意をしながら、気を付けて先へと進む。


 そうして奥へと進んでいると、クーがレベル5になる。残念ながら進化先は二つだけ。一つは【騎士熊】、通常進化はこれで、もう一つは【ホワイトナイトベア】。白銀地帯で戦うことで寒さに適応した熊らしい。


 ホワイトの方に進化してパワーアップしたクーと共に、奥へと進むと、小部屋を見つけた。


「卵?」


 前とは別の『モンスターの卵』と言うアイテムが氷の中にある。私は近づいて、一つだけ回収できないかみんなと協力して取れた。


「一個あれば十分ね。これ以上はかわいそうだし、みんな戻るよ」


 氷の塊の中にあったから冷たく、それでも脈動する卵。5000ポイントも魔力が必要なので、セーフエリアで孵すことにする。


 しばらくはここでゲームするしかない。そう思いながら、セーフエリアでログアウトした。


 ◇◆◇◆◇


「ちょうどよかったかも」


 ご飯を食べる時間、母と共に料理を用意しているとき、妹はそう呟いた。


 なんでもリオをスカウトしようと、他のクランが動いているらしい。すでに『焔の魔導団』に入ってないのは知られている。


 現状どこにいるのか私ですら知らないため、多くのプレイヤーは誤情報に踊らされているらしい。まあ、本屋の人も代金未払いになるから、接触しようとしているとのこと。


「代わりに受け取ってよ」


「お金のやり取りは人によって上限違うの。私が受け取ると月に50万しか渡せないからやだ」


 全額200万らしい。これでも半分にしたからだとか。


 そんな話をしながら、しばらくはあそこで過ごすのだが、出口がな。


 そう考えていると、言おうかやめようか考えている妹がいる。たぶんあれだな。ダンジョンの出口をどっちにするかだろう。


「ご飯時に言うのもあれだけど、下から出るのはやめなよ」


「私もいやよ。はあ、やっぱり予想通りのところにいるんだろうな」


 魚のお腹の中、フィールドが切り替わる前のことを考えるとそれとしか考えられない。リオ達はいま、生き物のお腹を歩き回っているのだろう。


 とりあえずいまは口、上に向かって進むしかない。それより下はいやだ。さすがの私もいやなものはいやだ。


 私はそれを意識しながら、ダンジョン探索を繰り返すのであった。


 だけど魚は魚でも、私は特別な魚のお腹の中にいると知らず、ダンジョン探索を続けた。


 ◇◆◇◆◇


 何回かのログアウトとログインを繰り返してダンジョン探索する間、やっと卵が孵った。


「………わーお」


「きゅう♪」


 宝石のような綺麗な蒼い瞳、白い鱗を持つトカゲ。正確にはドラゴンが孵った。


 クーは箱庭ホームから遠巻きに見ていて、クリームは寸法を取る。お洋服を着せる気だ。


 クリスとシロは私に張り付き、クロは静かに見ていた。


 可愛らしいドラゴンの子を抱っこしながら、色々確認するが、ステータスが高い。


 スキルは【氷魔法】に【水魔法】、それに【凍結無効】と【水泳】を覚えている。


 それと知らないスキルで【収納】がある。これはお腹の中やいろんなものに物を仕舞えるスキルらしい。


 スキルを確認してから、この子。名前は【アイ】と名付けた。眼が綺麗だからね。


「きゅーう♪」


 はいはいするように移動している。まだ幼体だからと思ったら、種族のところでホワイトドラゴン:幼体となっている。どうも5レベルまで幼体らしい。


 クリームと協力して抱っこ紐を作り、私はアイを背負って戦うようになる。


 背中は決して傷つけさせない。こうして赤ん坊をあやしながら、このダンジョン攻略を再開するのであった。


「アイ♪」


「よしよし可愛い可愛い」


 とりあえず奥へ奥へと進み、道を割り出しながら先へと進む。


 この先になにがあるか、この時は予想外な物を発見して、私はモンスターと楽しく遊ぶだけじゃなくなることを、まだ知らないままでした。

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