第29話・攻略砂の居城:決着

 私がここに来て、ログインしてすぐに水瓶を使ったら、光の方角が斜め上になり、ここにあることが分かった。同時に、相手側にも知られたと思い、即座に行動した。


 ここには奴隷のように扱われている人達もいるから、彼らを助けるのも同時にしようと思う。


 とりあえず誰にもバレずに牢獄の位置を確認して、鍵束持って渡しておこう。なにげにここの人?達はのんびり屋である。


 壁移動すると不思議なほど、視界をかいくぐることができた。死角なのかな?


 地図も手に入れられたし、意外と間抜けさんが多い。


「いまのところそんな感想ですけど、どう思います」


「それはこちらの落ち度だな。奴らは総入り替えしておこう」


 城の中心部、そこに呪文が刻まれた包帯に包まれる子供がいる。涙を包帯の下から流し、盃に貯める子が探していたものだろうと考える。


「水瓶を持っているなハイエルフ」


「リオと言います。あなたはだあれ?」


「黄道十三星座の一柱、蠍座のスコルピオン。覚えなくてもいい、異世界の旅人でも一回殺せば、水瓶座の力は回収できるからな」


 それを回収できればもう用なしだと告げて、人型だったそれは変化し出す。


『お前が水瓶の力を持って、水瓶の身体に近づいてきてもらい助かった。これで水瓶座を配下にできる』


「水瓶座さんはそのまま復活してもらいます。もともとそのためにここに来ましたからね」


『笑止』


 ガンッ!と言う音が鳴り響く。ハサミ同士をぶつけ、尾を伸ばし、巨大な足が地を踏む。


『旅人が図に乗っていると聞いていたがまさにお前のような者をいうのだろう。神が、貴様程度に倒されるはずないだろう? 仲間もいないのならなおのこと………たった一人で我らが要塞を翻弄したのは褒めよう、だが、たった一人で神に勝てると思うな女ッ!』


「一人じゃありません、家族がいます」


『同じことだ!』


 テイムモンスターがわずかに震える。だけど、私は臆さない。


「水瓶座の子を自由にさせてもらいます、理由? 理由はそこに助けを求める子供がいるから、お姉ちゃんとはそういうものです」


 こうして私とスコルピオンとの勝負が始まりました。


 ◇◆◇◆◇


 リオが駆け出すと共にクロはリオの影に隠れた。影隠れと言うアーツを使い、一定の間無敵になり、移動することが可能だ。


 だがそんなリオに向かって、ハサミを開くスコルピオン。その大きさはパラサイトスコーピオンぐらいだが、装甲の分厚さが違う。


 開いたハサミから光の弾丸が無数放たれた。


(これで終わりか)


 スコルピオンはそう思った。レベルも低い、ただのハイエルフ。エルフにしては優秀だろうがたかがその程度。これで終わったと思ったら………


『ッ!?』


 激痛が走る。


(なんッ、攻撃!? なにをしたッ!!)


 駆けるリオを見つけて、尻尾の針が素早く動く。毒の付いた刃を弾き、魔法が放たれるがこれではない。


 牙が食らおうとするが背中に乗られ、ちまちまと鬱陶しい。高く飛び上がり振り下ろして、光弾の雨を降らせる。


 するとまたこちらに向かう光弾があり、それが躱そうとしたが命中する。それは………


『攻撃を反射している……マジックパリィか!?』


 マジックパリィ。一定の使い手しか使えない、魔法を弾くだけの技術。


(のはず!?)


 だがこれは弾いた魔法を、敵にぶつける。それは高難易度の技術だ。それを初見で使える。スコルピオンの中でリオの評価が上がる。


(なるほど、ただのバカではないと言う事か!)


 そして足元に近づき、何かを空中から取り出した。それは………


(火薬樽ッ!?)


 大量に出されたそれは少しの衝撃で起爆する爆弾だ。それをためらいも無く起爆させた。


『ぬおぉぉおぉぉぉぉッ!』


 さすがのスコルピオンも足元で爆発して、体勢を崩しかけた。


(何度も食らうのは危険だがその程度! しかも今の一撃で彼奴も吹き飛んだはず!水瓶の力は勝者である俺のも………)


 そう思ったとき、頭部に向かって刃が突き刺さる。


『なっ………』


 それはリオであり、何度も素早く切り込み、すぐに離れた。


(バカな!!ダメージが無いだと?! どういうことだッ!?)


 スコルピオンは分からないが、クロが持つ忍法のアーツで空蝉と言う、ストレージの中の物とダメージを受ける対象を入れ替える物がある。


 リオは影の中のクロにより、安全地帯に避難して、入れ替わった物、この場合は火薬樽と入れ替わり、ノーダメージで爆薬でダメージを与えた。


 高速の戦闘が続く。フロアを止まらず走り回るリオに対して、光弾の雨や尻尾の針、または踏みつけで攻撃するスコルピオン。


 だがすべて避けられたり、弾かれ、反射してきた攻撃にダメージを負う。


(バカなバカなバカなバカな!!)


 思考が怒りに支配される。あり得ない、あり得ないと叫ぶ。


 神足る我が身を傷つけ、こちらは一切の傷を負わせられない。そんな屈辱は無い!


 光弾を放ち続ける中、ハサミを開いたとき、氷のブレスが銃口を凍らせ、銃身で爆発させられた。


『アァァァァァァァァァッ!?』


 背中に背負わされている小さな竜の攻撃、もう片方のハサミを開いたが、針のような糸が飛ぶ。


『ぐっあぁぁぁぁぁ!?』


 また誤爆してしまった。なぜだ、まるでこちらの攻撃が見えているように動く。


『図に乗るなァァァァァァァァァァァァァァッ!!』


 身体のパーツが離れ、紫の光と共に空中に浮かぶ。尻尾、口、左右のハサミに加え、巨大な装甲の足が銃砲に変わり、雨のように光の弾丸を放つ。


 だがリオは全てをすり抜け、躱して、跳ね返す。


 傷つき、奥の手まで見せてこの様はなんだ!?


『シッネェェェェェェェェェェ!!』


 尻尾が展開して、レーザーを放つ。


 リオはこれに………


「ありがとう」


 そう言って二つの剣を交差して斬りかかる。反射した。


(バカなッ!?)


 理論的に不可能ではないが初見、しかもタイミングが分からない攻撃だぞ!? スコルピオンは疑問に思った瞬間、頭部、ハサミ、足を貫かれた。


『ば、バカな』


 そして魔力暴走を引き起こして、最後の一撃を放とうとするリオを見て叫ぶ。


『貴様は一体、なんだッ!?』


「ただの普通のお姉ちゃんです」


 ………ふざ………


『ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!?』


 頭部を破壊され、連鎖的に他のパーツも爆発する。


 スコルピオンは反射された自分の力、自分達でため込んでいた火薬によるダメージにより、その身を亡ぼすのであった。

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