幕間
ごくらく
すべての女が美しいわけではない。特筆すべきテクニックを持つ者ばかりでもない。処女もいれば男に抱かれることに倦んで行為の間中死んだように動かない者もいる。
それでも。
『ごくらく』の女たちは素晴らしい。男を文字通り極楽に連れて行ってくれる、と誰もが口を揃えて言う。
二年前。
殺人事件を経て、店の名が『ごくらく』から『しおまねき』に変わった。
二年よりさら以前、東京からやって来た高利貸し、
『ごくらく』という店名を誰がどういうつもりで命名したのかを秋彦は知らない。雨ヶ埼秋彦は所詮関東の鬼薊、雨ヶ埼の人間ではないのだ。
「雨ヶ埼の女は極楽浄土に行ける」
秋彦は天国も地獄も、信じていない。
この世で唯一信頼に足るものは、金。金だ。雨ヶ埼秋彦も、金を愛している。だが生粋の雨ヶ埼の人間とは愛し方が違う。
雨ヶ埼は邪道、自分こそが正道。
天国も地獄も信じぬままに、金の崇拝者たる秋彦はそう考えている。
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