第7話 座右の銘

前世の事はただ、本当に、ただ魔力を動かすことだけでも楽しくて、魔法が使えることが楽しくて楽しくて今の生活がとても充実しているから、魔法に使えそうなイメージとかちょっとした記憶や知識しか思い出すこともなくなっている。


ここ近くで思い出したのは日本の水道やトイレ。

当たり前のように使っていたけど、捻れば無限に水やお湯が出る蛇口、温かい便座にレバーを引くと流れていくトイレって凄かったんだなと思った。


前世では人間関係が気薄だった。家族とも。

だからか今では顔も思い出せない。

思い出そうとも思わないけど。


それが今は照れ臭さがあるが父さんと母さん、肉屋の夫婦からの愛情を感じている。たっぷりと。

本当に、恥ずかしいけど……幸せだ。




村の住人が風呂の素晴らしさを知って半年が経過した。

もう少しで四歳になる。


最近、庭にぽつんと置いてあった解放感溢れる浴槽が壁に床に脱衣場、屋根ができて普通の浴室にバージョンアップした。

各家庭にも続々と浴室にバージョンアップされるなか、今もなお頼まれてお湯を溜めに行っている、父さんに抱っこしてもらい運んでもらっている。


井戸や川、使い慣れていない魔法プラス少ない魔力量で溜めるのは大変で疲れるし時間もかかるから、うちにお風呂に入りに来て俺が魔法を使って数秒で溜めるのを知っている村の住人達が毎日頼んでくるんだ。


皆の魔力量は俺と違って、ほぼ毎日(約四年)魔力切れなんてしてなかったから少ない。

風呂が広がり魔法を使う俺を見て魔法を使うようになったけど、住人達が自分で一杯にするには一年、二年はかかりそうだ。



聞き分けの良い子だと思われていて、両親に「プチファイアは大人がいるところでしか使わない。村から出ないということを守れるなら一人行動をしていい。」と言われたから、頼まれた家に歩いて行ったら時間がかかってしまった。


しかも魔法一辺倒ということもあり運動不足で途中でバテてしまった(幼児の身体だからということもあったかもしれないけど)。

結局頼まれた家庭の全てに行くことができなかった。


まだ小さいから仕方がないと許してもらったけど、それから父さんに抱っこで運んでもらっている。


前世の記憶があるから、親同伴というものは、恥ずかしい……

さらに父さんが自慢気に俺のことを話すこともあって、恥ずかしい……

今の自分では全ての家を回れないから仕方がないが、やっぱり恥ずかしい……


頼まれたものだからやってあげたいという思いと羞恥心で親に抱っこまでしてもらって溜めに行かなくて……という思いがあり少し葛藤していた。


だが、毎日多くの他家で魔法、プチウォーターとプチファイアを使い続けていたから、最近プチホットウォーターという一つの魔法としてお湯を作り出せるようになって羞恥心は吹き飛んだ。


すぐに魔法を何度か試した。

プチホットウォーターはぬるま湯から熱湯、沸騰近くまで温度を変えてお湯を出せることがわかった。

プチホットウォーターで温度を変えることができるならと閃いてプチウォーターも温度を変えることができるに気が付いた。

こっちは0度近くからぬるま湯より低いの温度を出せた。


日々新しい発見があって、魔法はなんて、楽しいものなんだろうか!


楽しくて久々に昼寝と夜寝る以外に魔力切れを起こし気絶した。



プチホットウォーターを使えるようになって良かった!

恥ずかしくても途中で「恥ずかしいから止める!」とか言わないでやり続けて良かった!


聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥?

んー?

なんか違うような感じがするが、似たようなことを言いたかった。


『恥は一時、やるは熟練度上昇』

ふと思い浮かんだ言葉だけど、なんか良い!

『やるは熟練度上昇』には『塵も積もれば山となる』の意味も含まれている。


『恥は一時、やるはちりつも』の方がいいか?

あ、『恥は一時、やるは財産』の方がいいか?

財産はやれば自分の血肉?経験?技術?になるよ、無駄なことはないよ的な感じ。


誰にも言うつもりがないけどやっぱり最初に思い浮かんだ『恥は一時、やるは熟練度上昇』を座右の銘にしよう!

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