第53話 花咲み

「!?」


ファイン達からアマミツを受け取った昼、撫で続けても一日では終わりが訪れないであろうことから、これから毎日一時間だけ時間を取って撫でようと提案してファイン達に了承を得て、再度感謝と応援をしてファイン達の為の棲みかの空間から出てきた。


早速エアルリーザ様に食べてもらうため、彼女がいる場所に訪ね、彼女の隠密侍女(俺が勝手にそう思っている)メリルさんに確認を取った。

メリルさんがアマミツをスプーンで掬い手の甲に少し垂らし、匂いを嗅ぎ、口に含んだら、目を見開き驚いていた。


テーブルに置いた別の蜜のアマミツを次々と試食していって、試食していって━━五周した。


二周でも確認は十分だと思われるのだが……

三周、四周と試食を続けていく様を見ると、ジーっと見てしまうよな。


ドライフルーツを食べた時の表情を見るにメリルさんが甘いものが好きなのがわかるが……


食べても大丈夫だとわかっているが、エアルリーザ様がそわそわしているから、早く問題ないと伝えてほしい。


「こほんっ!」


思いが伝わったのかジーっと見られていることに気がついたのかメリルさんが顔を少し赤くして咳払いをした。


「問題ありません。素晴らしいものでした。」


今更繕うってもね……


「どうぞ、エアルリーザ様」


そう言い、先程の少し恥ずかしい行動を挽回するように一瞬でエアルリーザ様の目の前に用意したアマミツの数と同じ数の小皿とアマミツが乗ったスプーンが置かれていた。


な、なんという早業。

すげぇ……

さすが隠密侍女……


今度は俺が目を見開いてメリルさんを見てしまった。


「これは普通のアマミツなのね?」


エアルリーザ様が一番右端の小皿を手に持ち俺を見て聞いてきた。


「あ、えーっと、」


メリルさんの早業に驚いてエアルリーザ様への反応が遅れてしまった。


「普通かはわかりませんが、アマミツバチ達が引っ越してくる前に取っていた五種類の花の蜜からできたアマミツです。」

「五種類の花のアマミツなのね。後でどんな花なのか見せてちょうだい。」

「わかりました。」


エアルリーザ様はスプーンに乗っているアマミツの匂いを目を瞑り嗅いだ。


「花の匂いがするわ。それと甘い匂い。」


エアルリーザ様は目を開け、可愛い小さな口でぱくりとスプーンを咥えた。


「やっぱり甘いわね!美味しいわ!」


食べていくにつれエアルリーザ様の頬が赤くなっていく。

子供のように興奮した感じでアマミツを食べていく。


「甘い!」「美味しい!」と子供のように頬を押さえて身体をくねくねする姿は超絶可愛い過ぎて、鼻血が出そうになった。


ファイン様達アマミツバチ様、色んなアマミツを作ってくれてありがとうございます。エアルリーザ様が喜んでいますと心の中で人生トップクラスの感謝の祈りを捧げた。


何の花のアマミツか教えながら食べてもらっている。

表情を見て言葉を聞いてエアルリーザ様のお気に入りをメモを取る。


後でメリルさんに確認をしよう。


「これはいちごのアマミツなのっ?」

「はい。」


エアルリーザ様が大好物になったいちごの花のアマミツと聞いてテンションが高くなり、すぐにいちごの花のアマミツのスプーンを咥えた。


普通の子供となんら変わらない子供の行動のエアルリーザ様を脳内写真を撮りまくる。


「微かにいちごの味がするわね!いちごほど甘くないけど、これはこれでいいわ!」


一番良い反応だ。

すぐにいちご自体のアマミツをファイン様達に生産を頼み込もう。


気に入ってくれたようなのでスプーンにいちごの花のアマミツを掬い垂らす。

それをエアルリーザ様が咥える。

また掬い垂らす、咥えるとわんこそばのように何度か繰り返す。


「もういいわ。とても美味しかったわ。ありがとう、ラハートフ。」


ぐはっ……


エアルリーザ様が花が綻ぶようにお笑いになられた。

エアルリーザ様の笑顔に花の妖精を幻視した。


エアルリーザ様って花の妖精だったのかっ!

通りで可愛い過ぎるわけだっ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る