第52話 神?

「「あああ!」」


アマミツの試食をしていると、二人の声が響いた。


「それ甘いやつでしょ!ラハートフ、一人で食べるなんてズルい!」

「ズルいぞ!」


いずれ見つかるとは思っていたけど、ちょうど試食している時に来るとは、二人は何かに持っているな……


「やあ、ニチカ、ポチマル。」


この空間『テント』の魔法が書いてあった魔導書『旅のオトモ』の契約精霊の元気っ娘ニチカともふ犬ポチマルが頬を膨らませて俺を指を差していた。

ポチマルには関しては幻視、人ならそうしているだろうなと思った。


〈ラハートフが言っていたニチカ様とポチマル様ですね。〉

「え?ニチカ様にポチマル様?」


ファインの二人の呼び方に驚く。


〈ラハートフにこの棲みかを創造する魔法やオトモ契約の魔法を授けてくださった方々ですよね?〉

「そうとも言える?」


言える?

言えるのだろうか?

契約できたからこそ、すぐ理解できてすんなりと使えるようになったから、そうとも言える、のか?


「わたしのこと知っているの?」

「僕のこと知っているの?」

〈ニチカ様とポチマル様のお力のおかげで、こうして安全な棲みかで、怯えることなく一族が過ごしています。ありがとうございます。〉

〈ありがとうございます!〉


ファインとキララはニチカとポチマルに深く頭を下げた。

頭を下げられた二人は顔を合わせ、額を合わせ、会話をする。


「こういう時どうすればいいの?」

「くるしゅうない?」

「そうなの?」

「たぶん?」

「そうしよ。」

「うん。」


俺の近くで会話をするものだから、話が聞こえていた。


「「くるしゅうない。」」


二人がファインとキララを見て胸を張って言った。


お遊戯会を見ているような感じがした。

微笑ましく思った。


〈そうはいけません。〉

「だめなのっ?」

「ちがったっ?」


二人はガーンと効果音が付きそうなくらいショックを受けていた。


〈いいえっ!とても有り難いことですが、〉

「だめじゃない?」

「いいの?」

〈はい、駄目ではありません。とても寛容なお二方様には感謝してもしきれません。〉

「「?」」

〈つきましては、先ほど『甘いやつ』と言っていたものを献上させていただきたく思います。〉

「「甘いやつっ?!」」

〈はい。〉

「「もらえるの?」」

〈はい。〉

「「やったあ!」」


ニチカがポチマルの前足を掴みくるくると空中で回り喜んでいる。

ファインは娘達にアマミツを持ってくるよう指示を出した。


持ってこられたアマミツをニチカとポチマルはぺろぺろと舐める。


「「あっまーい!おいしい!」」

〈それは良かったです。〉

「ニチカ、ポチマル、ファイン達にちゃんとお礼を言いな。」


ニチカとポチマルは「「あっ!」」と声を上げて顔を合わせて、二人揃ってファインの方を向き、頭を下げた。


「「ありがとう!」」

〈喜んでもらえて光栄です。〉


ニチカとポチマルはお礼を言い「あまかった!」「おいしかった!」と身体を大きく動かし如何に甘く美味しかったかを表現していた。


二人がどのくらい一緒にいたかわからないけど、似たような言動をする二人に息がぴったりだなと思った。


「ちゃんと言えたな。偉いぞ。」

「「えへへ。」」


ニチカとポチマルの頭を撫でる。

嬉しそうに二人が照れ笑う。


撫でているとなぜか、なぜか二人の後ろにファインとキララ、アマミツバチ達が列を作って並び始めた。


「どうした?」

「ラハートフ!ファイン達も撫でてあげて!」

「撫でろ!」


ファインに聞いたのに、彼女より先にニチカとポチマルが答えた。


「ファイン達を撫でる?」

「「そう!」」

〈あ、まぁ、なんだか羨ましくなって、つい並んでしまったのですが、良ければ、お願いします。〉

「撫でるくらい、問題ないよ。」


アマミツという高級品を作ってくれているしな。と感謝を込めて撫でた。


アマミツバチを一人一人撫でていたのだが、並び始めて会話している時からどんどん列が長くなっていっていた。

撫でても撫でても終わりが見えない。

しかし、嬉しげに飛ぶアマミツバチを見るとやめようとは思わなかった。


だが、それでは終わりが訪れないから、指一本一本で撫でることにした。

十人纏めて撫でる、撫で続けた。


最初満足げにふんふんと腕を組んで頷いていたニチカとポチマルはいつの間にかいなくなっていた。


昼まで、八時から十二時まで四時間ぶっ通しで撫で続けた。


ありがとうを込めて撫で撫で、これからもよろしくねを込めてぽんぽんとして合計約五秒、移動交代で約五秒。

一回で十人、一分に約六十人、一時間に約360、四時間で約1,440。


この日から毎朝約一時間、彼女らを撫でることが日課になった。


やる気がアップしたようでアマミツの生産量が増え、さらに彼女らが積極的に改良、色んな花の蜜や実をブレンドしたりして、アマミツの種類も増えていった。


エアルリーザ様の食の幸せに繋がるのだから、本当に感謝を込めて応援も込めて撫でた。

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