第54話 号泣

帰郷することになった。

出発の朝、オルヴェルド家、一人を除いた全員が第一城壁前まで見送りに来てくれた。

オルヴェルド家の皆の後ろには使用人、魔法使いの領兵さん達もいる。


「村に着いたら一度『ゲート』を使って来てくれ。」

「わかりました。」


「ラハートフ君、ありがとうね。」

「オウゼリーやアマミツの巣のことは任せてちょうだい。」


夫人様方に抱き締められる。


アマミツバチの棲みかは豊富な花があり天敵がいないため、分蜂をいくつもして、新しい巣の近くに花を植えることを繰り返し、撫でることでやる気がアップして生産量が増え、アマミツもオウゼリーも備蓄されていった。

子がいないアマミツだけ巣も沢山できた。


余分なオウゼリーも定期的に貰うことをお願いしたらすぐに了承してもらった。

せっせと働くファインやアマミツバチ達に本当に感謝をした。


そのオウゼリーと蜜を取り終わったいくつかの巣の使い道、シャンプーや化粧品の美容品、蜜蝋に使われていたよな?とぽろっと漏らしたのをメリルさんに聞かれ、奥様方に報告され食いつかれた。

朧気で曖昧な前世の記憶を伝えた。


エアルリーザ様の美の為に研究試行お願いします。



「「「ラハートフ、これっ!」」」


奥様方の抱きしめが終わるとエアルリーザ様の弟君妹君達がいちごを差し出してきた。


「「「わたし(ぼく)達が成長させたの!道中皆で食べてっ!」」」

「ありがとう。」


受け取る前につい撫でてしまった。

村人が貴族の子供を撫でるなんてっ!って恐る恐る子供達の両親様を見たが、微笑ましそうに見ていたからほっとした。

あいつがいたら喚いてたなと頭の片隅で少し思った。


いちごを受け取りプチボックスに収納する。



「ラハートフ、魔法を教えてくれて、美味しいものをいっぱいくれて、ありがとう。」

「いえ。」


嬉しさ超上昇して嬉しい気持ちがいっぱいで幸せを感じる。


「私、ラハートフのように強くなるわ。」


原作超え間違いなしだと思います。


「なれますとも。」

「私、お姉さんだし、すぐ追い付くんだから!」


お姉さんって数ヶ月だけど年上だからそう言ってるんだよね?

隠し子の件、誤解は解けているよね?


あと五日以内にゲートを使って一度戻ってきますよ?

そんな長い期間離れるわけではないですよ?


五日で追い付くわけないと思いつつ、意気込んでいるエアルリーザ様、いいわぁと思って、頑張れと心の中でも応援した。


「あ、あと、これっ!」


エアルリーザ様が何かを両手で包んで突き出した。

エアルリーザ様の両手の下に両手を持っていく。


エアルリーザ様が手を開くと何かが俺の手に落ちてくる。

見ると、たぶんプチアースで作られたものだと思った。


「お守り。魔除けと旅の安全を願ってプチアースでフェンリルを作ったの。ラハートフのように上手くないけど……」


な、泣いて、泣いていいでしょうか?

おかしい、もう、視界がぼやけているんだが……


「家宝にっ、しますっ!」

「えっ?いや、上手くないものを家宝なんてものにしないでっ!恥ずかしい!」

「嫌ですっ!子供、孫、ひ孫にエアルリーザ様が俺の為に、に作っていただいたお守りなんだぞって語り継ぎますっ!」

「やめてっ!」

「嫌ですっ!」

「上手くいったものを渡すから、ね?」


エアルリーザ様の上目遣い、効果が抜群だっ!


だがっ!断るっ!


「ぐっ……上手くいったものも家宝にします!」

「もぉ!馬鹿っ!ラハートフなんて、嫌いっ!」

「!?」


そこから俺の記憶はありません。


いつの間にか村に着いてました。

話を聞くと大声を出して泣き、泣き疲れて寝ている間に出発したそうだ。

起きたらぼーっとしていて、でもお守りは手離さず、ずーっと握っていて、食事は食べ物が宙を浮かびラハートフの口元に移動、口を開け、食べていたようだ。


全然記憶にございません。

たぶんユシル達だよな。

あとでお礼を言っとかないとな。


そして、今も手にエアルリーザ様が作ってくれたお守りを持っていた。


確かに上手くない。

フェンリルって言ったけど可愛いわんこだ。


俺はエアルリーザ様から貰った嬉しさマックスで相手のことを、エアルリーザ様のことを考えていなかった。


俺も渡すなら納得いくものを渡すもんな。

エアルリーザ様も本当はそうしたかっただろう。

時間がなく仕方なくこれを渡したんだろう。


エアルリーザ様からの初めての贈り物ということで本当は家宝にしたいけどっ、家宝にしたいけどっ、交換しよう……


……いや、その前にきらいといわれたおれにあたらしいものをつくってくれるんだろうか?

きらいなやつにつくらないよな……


「ラハートフ、エアルリーザ様は嫌いだから嫌いと言ったわけじゃないのよ。」

「???」

「でも、次あったらちゃんと謝るのよ。」

「……」


母さんの言葉に首を縦に振る。


「じゃあ村に着いたんだから、げーと?でオルヴェルド公爵様に報告に行ってきなさい。」

「……」


また首を縦に振る。


あたらしくたてられたいえでまりょくざひょうをきろくして、『ゲート』でおるう"ぇるどこうしゃくけのしろにあるへやにいどうした。

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