第55話 エアルリーザ・フェン・オルヴェルド 五歳

まえがき

エアルリーザ視点です。

ーーーーー


私はエアルリーザ・フェン・オルヴェルド、五歳です。

エヴィンカル・フィン・オルヴェルドとアウルーレ・フォン・オルヴェルドの娘で、オルヴェルド公爵家の長女です。


私はお父様とお母様のような貴族になる為、日々魔法から礼儀作法、勉強を沢山しています。

剣術と魔力量以外ならエンダースお兄様に勝てる自信があります。



今日も勉強しに図書室に専属侍女のメリルと共に向かっている途中、使用人達の会話が耳に入り、気になる話だったので立ち止まりました。


「エヴィンカル様が救援に行ったのは隠し子を助ける為だったみたいよ。」


先日お父様は領内の村が魔物の襲撃を受けたという報告を聞き、自ら指揮を取って、救援と討伐に向かっていきました。


お父様が強いとわかっていても、「いつ何が起きてもおかしくない。」とお父様が常々言っていますから、最悪な事が起こったかもしれないと何もしていないときにふと考えてしまいます。


今朝お父様達が魔物を討伐して村を救ったと、お父様が無事だと聞いて安堵しましたばかりで、使用人達の隠し子という言葉に心の中で驚きました。


「私もそれ聞いたわ。」

「その隠し子と一緒に戻ってくるんですって。」

「その隠し子はいくつなの?」

「しっかりと喋れるけど小さい子らしいから四歳くらいじゃない?」

「四歳で魔法が使えるみたいよ。その子のおかげで助かったから、連れて帰ってくるみたいなの。」

「さすがオルヴェルド公爵家ね。エアルリーザ様も天才……はぁ、どうしたらそんな子になるのかしらね。うちの子なんて━━」

「━━」

「━━」


話題が彼女らの子供の話に変わってしまいました。


お父様はちゃんとお母様達に隠し子のことは報告しているのでしょうか?

こういうことを怠ると夫婦の仲が悪くなると使用人達が話しているのを聞きましたわ。

大丈夫かしら?


これ以上はこの場にいても意味がないので目的地であった図書室に向かいましょう。


「メリル。」

「はい、なんでしょうか?」

「私の弟がお父様と帰ってくるみたいね。」

「……」

「お父様達が城門に着いたら知らせるようにしてちょうだい。」

「わかりました。」


どんな子なんだろうと弟のことが気になって勉強を集中してやれませんでした。


翌日お父様が城門に着いたと知らせが届きました。

急いで身支度を整え、玄関前にやって来ました。

何度か深呼吸をし気持ちを落ち着かせます。


だって四歳の子がお父様を助けたのよ?

どう助けたか考えたら魔法しか思い付かないわ。

四歳の子が騎士のように身体を張ってなんてできるわけないものね。


どんな魔法か気になるじゃない。

それにグリフォンに乗って向かってきていると聞いて、聖獣と共に帰ってくるお父様と弟に興奮しない方が変じゃないかしら?


すーはーすーはー



玄関が開き、二体のグリフォンが見えました。


一体はお父様、もう一体は弟ラハートフだと思われる濃い青色の髪、赤い瞳の小さい男の子をその母親のフロエナさんだと思われる金髪青瞳の可愛い女性が後ろから支え乗っていました。


最初が肝心ですね。

勉強してきたことを思い返しながら挨拶をします。


「あなたがお父様の隠し子にして命の恩人のラハートフですわね。私はあなたの姉のエアルリーザよ。」

「は?」

「……へ?」


とても失礼ですが、お父様もフロエナさんもとても間抜けな顔をしています。

お父様はお母様に怒ってもらいましょう。


「ーー、ーー、ー?」


ラハートフが何を言ったのかわかりませんが私をとても驚いた顔で見ていました。

貴族は顔に気持ちを出してはいけないことを教えてあげましょう。

それにしても四歳と聞きましたが、三歳のエジェット、エリカトア、エンディルより小さいんじゃないのかしら?


「俺は父さんラハルと母さんフロエナの子ラハートフだっ!」


少しラハートフの容姿のことを思考していると、ラハートフが怒った顔で使用人達を睨みつけながら言いました。


「彼は命の恩人で彼女は彼の母親だ。愛人でも隠し子でもない。褒美の為に来てもらったんだ。」


お父様が続けて言いました。

そして、血の繋がりを証明する魔導具を使って、隠し子ではないと証明してみせました。


私はなんということを言ってしまったのだろうか……

大好きなお父様とお母様の子供じゃないと言われたようなものです。

それは、あんなに怒った顔をするわけです。

噂を確かめもせず鵜呑みにしてしまった私が悪いのです。


なぜか私の他にその場にいた皆がラハートフとフロエナさん、お父様に謝罪しました。

許してもらいました。


グリフォンの存在より弟という存在に、弟ではなかったですがラハートフのことの方が気になっていました。

許してもらい改めてラハートフを見ると、そう!聖獣グリフォンに乗っているではないですか!と今更ながら興奮してしまいました。


お父様がラハートフに不思議なことを聞きました。


「ドラゴンの魔法を使えるか?」


ドラゴンの魔法?

ドラゴンとはあのドラゴンでしょうか?


ドラゴンの魔法?なんでしょうか?それは?と思っているとラハートフが真っ赤な小さなドラゴンを出しました!

五体のドラゴンが様々な並びをして飛んでいます!

くるっと回ったりしてます!


これが魔法っ?!

凄いですわっ!


そしてその場にいた皆がなぜかまた謝罪と感謝をしてました。

あ、私も「お父様を助けてくれてありがとう。」と感謝しました。


その後お父様とグリフォンに乗って空の旅を楽しみました。

空から見た城、街、街の外、なんて素晴らしい光景でしょうか。

感動しました。


グリフォンもラハートフの魔法みたいで他にも一体を出してその場にいた人達に乗せてあげていました。


凄いですわっ!


次の日にお母様達と本当の弟達と一緒に感謝をしました。

お母様に抱き締められ顔を赤くしているラハートフを見てなぜか胸が痛くなりました。


ーーーーー

あとがき

あと三話エアルリーザ様視点が続きます。

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