第96話 原作通り
適性属性の適性なしの鑑定結果に母さん達は「魔法が使えなくなった訳じゃないのよね?」「うん。」「なら、別に気にしなくていいんじゃない。」「ラハートフ様、今でも凄いんですから!」「「「そうそう!」」」と適性有り無しを全く気にしていなかった。
適性属性の鑑定をしてからより一層エアルリーザ様と過ごすことが多くなっていた。
エアルリーザ様の魔法の授業を同じ部屋で話を聞かせてもらったり、一緒に騎士訓練をしたり、エアルリーザ様がドラゴン、俺がグリフォンプチウィンドに乗って空中戦をしたり、空の旅をしたり、ラルラーナの天使達を共に世話をしたりした。
真剣な表情、悔しげな表情、楽しそうな表情、慈愛溢れる表情と様々な表情を身近で見て、あぁ俺、エアルリーザ様が好きだと自覚し、絶対守ると再度誓った。
魅かれた彼女、好きだと自覚した可愛い彼女との超充実した日々を過ごしていた一ヶ月。
そんな毎日をぶち壊す話が舞い込んできた。
エアルリーザ様と共にエヴィンカル様に呼び出される。
執務室にはいつものエヴィンカル様とセディスさんに、エアルリーザ様の母親アウルーレ様、侍女のメリルさんがいた。
皆がしかめっ面だった。
「エリザの婚約者が決まってしまった。」
頭をトンカチや鈍器で思いっきり叩かれたような衝撃を受けた。
エリザの婚約者が決まった?
エリザとはエアルリーザ様のことだよな?
エアルリーザ様の婚約者が決まっただって?
胸が締め付けられる。
「相手はエリザと同い年の第四王子ホルスディン・エン・ドラゴライヴェルド様だ。」
またしても衝撃を受けた。
第○王子か覚えていなかったが王子が婚約者だった。
原作通りになるのか?
断罪イベントが起こるかもしれない。
もう、拉致して国外に逃げてしまうか?
いや断罪イベントに進まないようフォローすればいいのか?
秘密裏にあんさ……
いやいやまだそうなると決まったわけじゃないのにそりゃあ駄目だろ。
駄目だよ、な……?
エンダースが平民見下しつよつよの子供という原作とは少し違いがあるように、この世界の第四王子が素直でいい子かもしれないし、エアルリーザ様と相思相愛になるかもしれない、なんて考えたら胸がぎゅっと強く締め付けられた。
「まさか王命を出してまで婚約を結ぶとは思っていもなかった。」
「全属性と、魔力量が決めてでしょうか?」
「そうだな……。身を守る為にやったことがエリザの自由を奪ってしまった。すまない。」
「王命ですから……。お父様、ホルスディン殿下はどのような方なのですか?」
今なら分かる……
それは作り笑いだと……
明るく興味があるように聞いているように見えるが、違うんだと分かる。
脳裏に浮かぶゲーム画面の君もそんな笑顔だった。
イラストを描いていた人が違いのある笑顔を表現していたことを称賛するべきか?
エアルリーザ様が抑え込んだ感情……
俺はどうすればいいんだろうか?
やはり、彼女をそうさせる元凶を……
俺がごちゃ混ぜの思考をしている間も話が進んでいた。
「トフ。ラハートフっ!」
「!は、はい、なんでしょうか?」
「大丈夫か?」全然大丈夫じゃない!
「だ、大丈夫です。」
「大丈夫じゃないわね。『安静』落ち着いたかしら?」
セディスさんが頭を撫でながら魔法を使ってくれて落ち着いた。
こくりと頷く。
「……それならいい。ラハートフにはエリザの従者になってもらいたい。」
従者?
従者ってあれだよな?
取り巻きとは違う後ろにいる人のことだよな?
エアルリーザ様の近くにいられるのは好都合じゃないか?
あ、でも……
「えーっと、従者って村の子供、平民でもなれるんですか?」
「貴族の養子になれば問題ない。」
それ、絶対問題ある!
「そ、それは、母さん達と離れ離れになって、その貴族様の家に暮らすことになるのでしょうか?」
「顔合わせはするが、基本エリザの側にいてもらいたい。家族に会いに行くときはメリルと相談してほしい。王妃教育が始まるまでは今はこれまで通りでいいが。」
エアルリーザ様といること以外変わらないならいいか?
ゲートがあるし。
ラル、ラーナの最強育成は少し控えめになるが……
どうすればいいかわからないけど、エアルリーザ様の近くにいられる従者になるのは最適な選択じゃないだろうか。
「わかりました。私をエアルリーザ様の従者にしてください。」
「助かる。」
この日からエアルリーザ様の満面の笑みを見ることがなくなった。
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