第97話 養父母と義姉兄
「エリザの従者になってもらいたい。」とエリザことエアルリーザ様のお父親オルヴェルド公爵現当主エヴィンカル様に言われ、その条件に貴族の養子にならなければならないが、母さん達と離れ離れにならなくてもいいと言われ、エアルリーザ様の従者になることを決めて、決まった。
電話やメールなどの伝達方法がなく、車や電車飛行機の速い移動手段がない世界では遠くにいる人とのやり取りには時間がかかる。
例外としてラハートフのプチウィンドグリフォンのような騎乗し飛行できる魔法が使えるようになったオルヴェルド公爵家の面々がいるが、オルヴェルド領外では秘密にしているため、馬車で移動していた。
養父母になる貴族様とのやり取りなどで一ヶ月が経った。
「へぇ、君があの魔力量を増やす方法を齎したラハートフ君か。」
「え?」
「彼は私の寄り子で魔法の研究をしている貴族なんだ。盟約をし、養子の話をしたら、了承してくれてね。」
「それで、知っていたのですね。」
「どこからそんな発想が出てくるのか頭の中を覗いてみたいものだよ。」
「……俺、頭をかち割られませんよね?」
「……大丈夫だ。」
「間がありましたよ?本当に大丈夫ですか?」
「……」
「え?そこで沈黙ですかっ?今から養子の件取り消しn」
「ラハートフ君!僕が君にそんなことするわけないじゃないか!僕達ができない発想を君はした!なぜ僕達は魔力を多く込めることや同時に複数使用することを思い付かなかったのだろうか!伝えられてから、確かにそうすれば威力が上がるかもなと思ったくらいなのになぜ思い付かなかったのだろうか!逆もそうだ!だが僕達は魔力が少ないと発動しないと思い込みをしていた。見せられるまで何を言っているんだ?この人は?と馬鹿にして話を流していたよ。ーー」
ん?その説明したのってエヴィンカル様だよな?
盟約の件だし。
寄り親?のエヴィンカル様を馬鹿にしたってことだよな?
目の前に説明したであろう本人がいるのによく言えるな……
ちらっとエヴィンカル様を見ると無表情になっていた。
こわっ!
「ーー。そんな君の発想は素晴らしいものだ。そんな君の頭をかち割ってしまえばそれがなくなってしまうではないか。だから僕は君に、息子にそんなことをしないよ。これからよろしくね、ラハートフ。」
「え?あ、はい。よろしくお願いいたします?」
「じゃあ、早速あの馬の魔法について教えてくれないか?」
「え?ちょ、待って、引っ張らないでください。」
養子の件で養父になると了承した貴族様の屋敷に訪れ、その養父となる男?少年?との最初のやりとりだった。
エヴィンカル様と数人の護衛とその貴族様が住んでいる王都の屋敷にやってきた。
途中オルヴェルド公爵家が所有する王都の屋敷にゲートを登録したくらいで問題なく到着した。
養父は俺達が乗っていた馬車を引いてきた馬プチアースについて聞きたいようだ。
いつの間にか馬プチアースのところに同年代の男女とそのお姉さんらしき女性が馬を触っていた。
「凄い魔力が込められているわね。」
「そうなの?」
「えぇ、特級魔法に必要な魔力量は込められているわ。」
「そんなにっ?!すっごいね!」
「姉さん、肌触りも本当の馬みたいだよ!」
「わああ!本当ね!それにひんやりしてて気持ちいいわ!」
「みんな先に触るなんてずるいぞ!」
「気になるじゃないですか。」
「わかるけどね。でも!早く魔法を教えてもらたかったけど僕でも我慢して挨拶を先にしたんだよ!」
「よく我慢できましたね。」
えええ、我慢してたの……
挨拶?よろしくとは言われたけど普通名前を名乗ったりするんじゃないの?と首を傾げてしまう。
一応エヴィンカル様に聞いているけど……
養父?に背中を押され彼女らの前に出される。
「さぁ、みんな!この子が新しい家族のラハートフだよ。そしてあの方法を齎した本人にしてこの馬の魔法を使用した者だよ!」
「まぁまぁ、凄い魔力量ねぇ。鑑定の水晶を壊すだけあるわね。私達より多いじゃない。」
「ラハートフね!私はショコラン・フェン・マジルドよ!ラハートフのおかげでいっぱい魔法が使えるようになったの!ありがとう!」
「どういたしまして。」
この子の方がしっかりしているね……
「僕はリョーレン・フェン・マジルドだよ。この魔法どうやってるの?」
この子は養父に似ちゃったんだね……
「私はこの人の妻で、あなたの養母になるニルサリア・フォン・マジルドよ。本当の母親だと思って甘えていいからね。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
「あ、名乗っていなかったね!僕はマジルド伯爵当主、アガートルン・フィン・マジルドだよ。で、この魔法どうやってるの?」
説明してもいいんだけど、エヴィンカル様を放置していいのか?
振り向いてエヴィンカル様を見るとさっきと同じ無表情だ……
「アガートルン。」
「ん?エヴィンカル様まだいたんですか?」
「「……」」
「エヴィンカル様、こんにちは!エリザは今日いないんですか?」
「エヴィンカル様、こんにちは。」
「エヴィンカル様、アウルーレ様達はお元気ですか?」
マジルド伯爵家の皆はこの瞬間エヴィンカル様がいることに気づいたかのように挨拶をした。
まじ気がついていなかったようだ……
魔法に興味が向きすぎじゃない?
「……あぁ、今日はラハートフの顔合わせだけで連れてきていない。アウルーレ達は元気だ。」
「残念です。今日こそ勝ちたかったのに。」
「そうですか。今度はアウルーレ様達も連れてきてくださると嬉しいですわ。」
「……わかった。」
「ラハートフ、早くお父さんにこの魔法を教えてくれ。」
「僕も知りたい。」
「室内でも説明ができますので、新しいお家に入りたいなー、なんて……」
「そうなの?じゃあ、談話室に行こうか。エヴィンカル様もゆっくりしていってください。」
すたすたと屋敷に向かっていくアガートルン様。
その後ろをついていくニルサリア様とショコラン様とリョーレン様。
「……」
「……」
「……少し、変わった方々ですね。」
「魔法に関しては優秀なんだが、魔法が好き過ぎてな……」
「ラハートフ!早く行きましょ!」
「ラハートフ!早く行くよ!」
ショコラン様とリョーレン様が振り返り早く早くと手を振っている。
土の器を作り土を少し持って、彼女らの方へ歩き出す。
泥団子で圧縮のことを教えたら、あっという間にマジルド伯爵家の皆が想像するものに近い形を作れるようになった。
昼食を忘れ、エヴィンカル様のことも忘れ、夕食までずっと魔法を試していた。
人のこと言えないけど本当に魔法が好きなんだなと思った。
執事長に俺の部屋となる部屋に案内してもらって、ゲートを登録しておいた。
ちゃんと許可をもらっている。
その日は泊まって翌日ゲートでエヴィンカル様達とオルヴェルド公爵家の領都に戻った。
マジルド伯爵家の皆もついてきた。
オルヴェルド家の魔法使いの領兵さん達がパワーアップしたから、いいのかな?
エアルリーザ様が少し素でショコラン様と会話してたから、マジルド伯爵家の皆がついてきてくれて良かったなと思った。
でも笑みだけは無理しているように、作り笑いに見えるんだよな……
どうすれば取り戻せるだろうか……
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