第98話 マジルド伯爵家

義姉兄になったシーラお姉様(ショコランの愛称)とリヨンお兄様(リョーレンの愛称)は魔法に関してはエアルリーザ様を越える天才かもしれない。

想像物が多くあってイメージを補うことができる俺のような前世の記憶を持つ紛い物とは違う。

天才という言葉はこの二人やエアルリーザ様のような人に使われるべきだろう。


「いけ!ベアクフォン!」


リヨンお兄様が指示を出すと翼が生えた熊が駆け出す。


「突きなさい!ツンラビちゃん!」


シーラお姉様が熊を指差し言った。もっふもふで角と翼が生えたもっふもふの兎が跳躍から翼を羽ばたかせ、熊に向かって高速で空中を突き進む。

熊は反応できずに貫通し兎大の穴ができる。


「あああ、またやられたー。」


「速さと硬さと角があれば最強よ!元の毛皮のようにしてたら簡単に殺られちゃうじゃない。というか翼があるのに使わないとかアホじゃない?」


少し教えただけであっという間に使いこなし、自身の知識と想像で翼が生えた熊ベアクフォンもっふもふで角と翼が生えた兎ツンラビちゃんなるものを作り出して、戦わせていた。

さらに。戦う毎にそれぞれどこかしら修正されていくのを見て天才だわぁと思った。


「うぐっ……格好良いじゃないか……」


「勝負に格好良いなんて関係ないじゃない。」


シーラお姉様が関係ないと言っているが、角が格好良いと角の形を拘っていてどんな形にしようかなと考えていることを俺は知っている。


「ぐぬぬ……」


「ラハートフ!私が三勝したから私と勝負よ!」


「シーラお姉様、残念ながらお時間だよ。」


「な、なんですってー!」


「姉さん残念だったね。ラハートフ、帰ってきたら、姉さんに勝てるよう修練に付き合ってよ。」


「はぁ!帰ってきたら、ラハートフは私と勝負するのよ!それじゃあ勝負した意味がないじゃない!」


「シーラお姉様、リヨンお兄様、勝負も修練も付き合うから準備を急いで。」


「「本当?!約束よっ(だよっ)!」」


「本当。『プチクリーン』行こう。」


「さっぱりしたわ。ありがとう。」


「そうだね。ありがとう、ラハートフ。」


これから記念パーティー(俺にとってはこれっぽっちも記念じゃない)だというのにシーラお姉様とリヨンお姉様の二人はマジルド伯爵家の敷地、地下魔法修練場で俺との勝負か修練を賭けて五本勝負していた。


今回はシーラお姉様が三連勝で勝敗は決まったみたいだ。


今日は王城で今年度適性属性を鑑定した王侯貴族の子女の記念パーティー、第四王子の記念パーティーでもあるパーティーが行われる。


第四王子、エアルリーザの婚約者だ。


そして、婚約発表もある。


王子の記念パーティーだから多くの貴族様達が来ているようだ。


ぶち壊したい……


エアルリーザ様と第四王子の初対面でもある。


幸せになってほしい。

良いやつであってほしい。


でも…………


ダメな奴だったら、やはり……


「ラハートフ、緊張しているの?」


御粧ししたシーラお姉様が物騒な思考になりそうだった俺に話しかけてきた。顔を上げシーラお姉様を見る。


美少女だ。


だけど美少女だなぁと思うだけで、エアルリーザ様みたく魅かれるということはない。

角が好きなだけあって今日はツインドリルを装備している。

似合っているんだけど、ちょっと笑いそうになるのを我慢する。


物騒な思考が晴れた。


「ちょっと考え事をしていただけだよ。」


「ラハートフは適性無しでも最強なんだから、気にしなくていいのよ。」


「まぁ馬鹿にする奴がいたら、僕らがぼこぼこにするから安心して。」


「そうだよ。お父さんがそんな奴がいたら地獄を見せてあげるよ。ふっふふ。」


「氷像を作ってあげましょう。うふふ。」


「て、適性無しなんて本当に気にしていないからそんなことしなくていいよ。」


養父母達も物騒だった……


家族思いで良い人達なんだけどね。

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