第95話 適性属性 3
良い匂いがして、後頭部に良い枕の感触を感じた。
枕の良い感触を感じたく頭を動かし、さらに柔らかい枕に横顔を埋めようと抱きつこうとすると額にばしっと衝撃が走る。
「いたっ!」
痛みに身体が反応して跳び起きる。
額を擦りながら周りを見ると教会内だと分かり、自分を囲うように人がいてエヴィンカル様が苦笑、アウルーレ様とトリーリア様が微笑み、一番近くに真っ赤な顔なエアルリーザとメリルさんが俺を睨みつけていた。
うん……
わかった……
脳内処理が高速でされて察した。
「申し訳ありませんでしたああああああ。」
謝罪の気持ちを最上限、いや限界突破した気持ちを込めた渾身の、土下座をエアルリーザ様にする。
床にひびが入ったが気にしない。
「も、問題なさそうねっ!き、気にしていないから、頭を上げなさい!」
「あ、ありがとうございます。え、えーっと、どうして、私は寝ていたのですか?」
「ラハートフが魔力量の鑑定の水晶に触れたら爆発して、」
「水晶がっ!爆発っ!」
そうだ、割れるような音がして、そこから記憶がない。
「えぇ、そして吹き飛んで頭をうって気絶したのよ。」
「そ、そうだったんですね。そ、その水晶って、ど、どのくらい価値が、あるんですか?」
「お父様?」
「うむ……。」
「す、すぐに言葉にできないくらい高価な物なんですかっ?」
「……予備があると思いますが、ダンジョン産のもので、未だ人には生産できないものなのですよ。」
司教様が魔力量の鑑定の水晶だったと思わしきものが集められた容器を持ち近寄ってきて言った。
「そ、それが、お、私が壊してしまった鑑定の水晶、ですか?」
「はい……。まさか、壊れるとは思いませんでした。量れないほどの魔力をお持ちだとは思いませんでした……。公爵様は分かっていて他の皆様を退出させたのですね……。」
「……いや、私もラハートフが水晶を壊すとは思っていなかった。私はラハートフが全属性だと思っていたから、な……。」
「そ、そうだったんですね。量れない程の魔力量で、適性属性がないとは、可哀想に……。」
「「「……」」」
えええ?
また悲痛な表情になってるよ……
「あ、あの、適性属性がないと何か問題があるんですか?」
「適性がなければ中級以上の魔法を覚えられません。」
「……」
「ラハートフ君は適性属性がありませんので、初級の魔法しか使えません。」
「……」
「可哀想に……」
ショックで沈黙しているわけじゃないんだ。
あれだ。
ある日の魔法修練場で魔法使いの領兵さん達との会話を思い出していた。
「ラハートフ様の魔法はプチとか生活魔法って言ってますけど、上級以上の威力がありますよね。」
「そうなんですか?」
「はい。余裕で王宮魔導師の実技試験を通ってしまうくらい素晴らしい魔法です。」
「そうなんですか。」
「プチなんて詐欺です。相対した敵に『騙したなっ!』って怒鳴られますよ絶対。私も『プチじゃないよなっこれ!これ、プチじゃないよなっ!』と同僚の肩を掴み激しく揺らして少し取り乱してしまいましたよ。」という会話を思い出していた。
その人は盟約した人でもあって、今では魔力量も増えて魔力を込める技術も知って、上級以上の魔法をばんばん使えるようになったと嬉しそうに言っていた。
めっちゃ敬意を持って接してくるんだよね……
あと「ラハートフ様、見てください。」「ラハートフ様、これできるようになりました!」「グリフォンを作れるようになりました!一緒に飛んでください!」とか会うたびになにかしら報告してくるんだ……
あ、今はそんなことより、自分の魔法は上級以上の威力があるみたいだから、中級以上の魔法が使えなくてもいいかなとかと司教様達が悲痛な表情をしても俺は別に悲観的なことを思わなかった。
まぁ、攻撃魔法に関しては上級以上の威力があるみたいだから別にいいけど、他の魔法は使ってみたかったけどな……
「攻撃魔法に関しては上級以上の威力があるみたいなので別にいいですが、他の魔法は使ってみたかったですね。」
「は?」
「「「あ。」」」
「そ、そうよ!ラハートフは素晴らしい魔法が使えるんだから、適性属性がなくたって意味ないわ!」
「確かに、そうだな。」
「そうね。」
「そうでしたわ。」
「は?」
エアルリーザ様の言葉に司祭様だけはなんの事か分からず、ぽかんとした表情を浮かべていた。
「あ!ラハートフ、魔力を込めたプチリペアをしたら魔力量鑑定の水晶が直るんじゃないかしら!」
「!?やってみます!司教様、それをお貸しください。」
「あ、はい、どうぞ?」
「ありがとうございます。よしっ!全力でいきます!」
魔力を集め集め集め、粉々になった水晶を包み、魔力を込めていく。
可視化する程に魔力が込められる。
「な、なんという魔力量!?」
「凄いな。」
「さすがラハートフ!」
エアルリーザ様の「さすがラハートフ!」に高揚し込める魔力も上がる。
「わああすっごい魔力、貰っていい?」
「食べていい?」
「今は駄目ですよ。」
契約精霊のニチカ、ポチマル、ユシルが現れる。
容器の真ん前でニチカとポチマルが集められた魔力に手を顔を近づけようとしているのをユシルが止めている。
「魔力超増し増しの『プチリペア』!」
粉々で山となっていた魔力量の鑑定の水晶だったものが光輝きながら元の姿に戻っていく。
余波を受けて床のひびも直る。
「「おおお。」」
「綺麗。」「綺麗ね。」「綺麗ですね。」
「綺麗だなー。」
「綺麗だー。」
「綺麗ですね。」
光が収まる。
水晶が鎮座している。
「な、直ったでしょうか?」
元の水晶の形になっているが、鑑定能力まで直っているかかわからないから不安だ……
「で、では、私が試してみましょう。」
司教様が水晶に触れると淡く光る。
「おお!以前鑑定した時と同じです。」
「私も鑑定してみるか。」
「あ、ちょっと待ってください、エヴィンカル様。『プチダーク』」
「あ、そうだな。ラハートフ、助かった。」
「いえ、では、どうぞ。」
予想通り、エアルリーザ様より強い閃光を放つ。
ついでにアウルーレ様もトリーリア様も鑑定し、エヴィンカル様と同じくらいの閃光を放つ。
他の人のも鑑定できるということは直ったってことだよな?
あぁ、弁償するとかにならなくてよかったぁ……
「こ、公爵様達より強い光を出したラハートフ、様はいったい……」
「司教殿、内密にお願いするぞ。」
「は、はい!神に誓って他言しません!」
「では、また何かあったらよろしく頼む。」
「はい!」
思いがけない出来事があったが、鑑定が終わって教会を出るオルヴェルド公爵一行。
前の馬車にエヴィンカル様、エアルリーザ様、アウルーレ様、俺ラハートフ、後ろの馬車にトリーリア様、エンダースサマを回収していたメリルさんが乗って進む。
「うむ。適性属性がないとは思わなかったが、ラハートフにとってはあまり意味がなかったな。」
「そうですね。でも攻撃魔法以外の魔法を使ってみたかったです。」
「ラハートフなら似た効果のプチ魔法が使えるんじゃないか?」
「そうですかね?」
「見せてもらって、試してみるといい。」
「そうですね。色々試してみます。」
「私も一緒にやるわっ!」
「えぇ、一緒にやりましょう。」
そう話ながら帰宅したエヴィンカル達とラハートフ。
忘れられていたエンダースサマはメリルさんがエンダースの部屋に持っていったらしい。
俺は忘れていたよ。
息子なのに回収したメリルさんが乗ってきて「あ。」と漏らすくらいトリーリア様も忘れていた。
日頃の行いがあれだからな、憐れ……
ーーーーー
あとがき
面白いじゃん、まぁまぁ面白いなぁ、少しでも続きが気になるな。と思ったら☆☆☆をつけていってくださいな!
とりあえず☆だけでもつけてください!
面白くなってきたら☆を足してくださいな!
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