第58話 エアルリーザ・フェン・オルヴェルド 五歳 4
私がラハートフに「メリルが好き?」と言ってしまってから二日、メリルにジト目というものを教えてもらい、少し落ち着いた気持ちでラハートフを見れるようになりました。
深呼吸とジト目を合わせれば冷静になれます。
一歩メリルのような冷静な女性に近づけました。
毎日少しでもお母様やメリルのような女性になれるよう頑張ります。
さらに数日後魔力量の増加などの盟約を結びました。
エンダースお兄様が無礼なことを言ってお父様の怒りに触れてしまうことが起こりましたが、またラハートフがお父様の怒りを静め事なき終えました。
エンダースお兄様はラハートフに感謝すべきです。
お父様の怒りの件も魔力量増加の件も感謝すべきです。
順調に魔力量が増えています。
魔力を込める量や同時使用、圧縮も毎日行っていますから、魔力操作、制御の技術もぐんと上がっています。
ラハートフと比べればまだまだですが……
またラハートフの行動に驚かされました。
エルフが使う植物魔法を使ったのです。
グロースでいちごを成長させました。
真っ赤ないちごが美味しそうで取って頂いてしまいました。
とても美味しかったです。
ラハートフの様子を見ていれば、「『プチグロース』」と言うではありませんかっ!
グロースはエルフが使う植物魔法、プチと付く魔法は生活魔法です。
プチグロースという生活魔法は聞いたことがありません!
領兵もメリルも知りませんでした。
後で聞きましたがお父様も知りませんでした。
もっと後になりますが魔導書に書いてあったとラハートフ本人から聞きました。
大発見を何も誇らず普通に皆に教えていました。
ラハートフの教えで生活魔法でも魔力を込めれば効果が増すことを知っている皆は放置された他のいちごを成長させて自分で受粉しいちごを食べていました。
いつの間にかメリルが綿棒用意していたので、つい私も一緒にやってしまいました。
翌日お母様や弟達も来て一緒にいちごを成長させ受粉し、実がなるのを楽しみました。
「こうやって成るのねぇ。」とか「貴重な体験をしたわ。」とか「美味しいわね。」と一緒に食べました。
受粉しなくても実がなるいちごがありまして、弟達が「魔法だけでいちごがなるっ!すっごーい!」と興奮し魔法を連発して使い続け魔力切れで気絶し倒れて、少し騒ぎになりました。
毎日魔力切れを自身の意思で起こしていますから、ここが自分の家ということもあって、あぁ魔力切れね、くらいにしか思いませんでした。
弟達の侍女がすぐに抱えたので、地面に頭がぶつかることもなかったので心配もしませんでした。
そんなことより受粉しなくても実がなるいちごって何ですかっ?
ラハートフが作ったのですかっ?
ラハートフ凄すぎます!と私は私で興奮していました。
後日いちごと他の果実のドライフルーツというものをラハートフから貰いました。
瓶の中に艶のある宝石のようなドライフルーツにこれが食べ物ですかと聞いてしまいました。
とりあえず一つと言われ、ガーネットのようないちごのドライフルーツを食べました。
同じいちごとは思えないくらい甘いいちごに自然と笑みが出て美味しいと呟きました。
他のドライフルーツもとても美味しかったです。
ラハートフが当初の目的の褒美を受け取って帰郷すると聞き、私はお守りを作ろうとしました。
ラハートフには沢山のことを教えていただきました。
ドライフルーツ、果実など美味しい物、そして高級品のアマミツもいただきました。
アマミツなんて、私達貴族でも滅多に口にしません。
エンダースお兄様の五歳の誕生日の時の一度しか食べたことがありません。
花の香りにとても甘い甘さに頬が緩んだのを覚えてます。
そんなアマミツをテーブルに二十個くらい瓶に入ったものを置くものだからとても驚きました。
全て同じものではないということにも驚きました。
驚いている間にメリルが五周も毒見をするものだから、いつの間にかジト目を使えるようになっていたラハートフと共にジト目でメリルを見ました。
顔を赤くし取り繕うメリルが少し可愛いと思いましたのは内緒です。
アマミツを口に含んで、メリルが五周もしてしまうのを納得しました。
普通のアマミツはお兄様の誕生日で食べたアマミツとは花の香りも甘さも段違いでした。
他のアマミツももっと花の香りが強いもの、甘さ控えなもの、酸味が強いもの、色が濃いもの薄いもの、と違いがありましたがどれも美味しいものでした。
一番お気に入りはいちごのアマミツです。
ラハートフが掬ってくれて何回も食べてしまい、少し恥ずかしかったです。
お守り作りは難航しました。
あのラハートフが作った理想の私とファイアドラゴンのようにできません。
それでも諦めず、出発日まで毎日気絶寸前まで魔法を使い作り続けました。
しかし、思う通りの出来にはできませんでした。
メリルに「全てエアルリーザ様の気持ちが籠っているお守りです。ラハートフ様に渡しましょう。」と言われ、恥ずかしいですが一番ましな物を渡すことにしました。
出発当日
「ラハートフ、魔法を教えてくれて、美味しいものをいっぱいくれて、ありがとう。」
「いえ。」
「私、ラハートフように強くなるわ。」
「なれますとも。」
「私、お姉さんだし、すぐ追い付くんだから!」
「あ、あと、これっ!お守り。魔除けと旅の安全を願ってアースでフェンリルを作ったの。ラハートフのように上手くないけど……」
「家宝にっ、しますっ!」
「えっ?いや、上手くないものを家宝なんてものにしないでっ!恥ずかしい!」
「嫌ですっ!子供、孫、ひ孫にエアルリーザ様が俺の為に、俺の為に作っていただいたお守りなんだぞって語り継ぎますっ!」
「やめてっ!」
「嫌ですっ!」
「上手くいったものを渡すから、ね?」
受け取ってくれたのは嬉しいけど、恥ずかしいから、上手くできていないから、本当にやめてほしいと思っているのに……
「ぐっ……上手くいったものも家宝にします!」
「もぉ!馬鹿っ!ラハートフなんて、嫌いっ!」
「!?」
ラハートフは私の言うことを聞いてくれなくて、嫌いじゃないのに嫌いと言ってその場から離れました。
そしたら、後ろから誰かが大声で泣き叫びました。
立ち止まって振り返るとラハートフが大声を出して泣いていました。
子供のように。
すぐに私が泣かせてしまったんだと気がつきました。
謝りに行こうにも足が動いてくれませんでした。
私はずっと泣き続けるラハートフを見ていました。
胸がとても痛いです。
ラハートフが泣き疲れ眠って馬車に運ばれ城を去っていくのを見ていました。
胸がとても痛くて今度は私が泣き叫んでしまいました。
ごめんなさいごめんなさいと言いながら泣き叫んでしまいました。
そして、ラハートフと同じように泣き疲れ眠ってしまいました。
ーーーーー
あとがき
エアルリーザ様視点が一旦終わりです。次話から主人公ラハートフ視点に戻ります。
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